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江國香織 著「川のある街」
私の思い込みもあると思うのですが、なぜかヨーロッパの香りのする作家というイメージのある江國香織さんの作品を読みました。
読み終えた作品
雑誌「小説トリッパー」季刊号に掲載され、2024年2月7日に朝日新聞出版より、232ページの単行本として発売されています。
あらすじ
ひとが暮らすところには、いつも川が流れている。両親の離婚によって母親の実家近くに暮らしはじめた望子。そのマンションの部屋からは郊外を流れる大きな川が見える。父親との面会、新しくできた友達。望子の目に映る景色と彼女の成長を活写した「川のある街」。
河口近くの市街地を根城とするカラスたち、結婚相手の家族に会うため北陸の地方都市にやってきた麻美、出産を控える三人の妊婦…。閑散とした街に住まうひとびとの地縁と鳥たちの生態を同じ地平で描く「川のある街 Ⅱ」。
四十年以上も前に運河の張りめぐらされたヨーロッパの街に移住した芙美子。認知症が進行するなか鮮やかに思い出されるのは、今は亡き愛する希子との生活だ。水の都を舞台に、薄れ、霞み、消えゆく記憶のありようをとらえた「川のある街 Ⅲ」。
〈場所〉と〈時間〉と〈生〉を描いた三編を収録。
この作品を選んだ理由
「はかなく移りゆく濃密な生の営み。人生の三つの<時間>を川の流れる三つの<場所>から描く、生きとし生けるものを温かく包みこむ慈愛の物語」
が気になって手に取りました。
感想
本作に流れる川は、3篇それぞれに出てくる主人公に寄せた、時の流れと共にある川です。
主人公たちは、第1話では両親の離婚で母の実家に暮らす小学生、第2話では烏たちの目とその土地に縁のある人々、そして第3話では認知症が進むレズの女性です。
どの短編も淡々とした語り口で、日常を丁寧に描き、彼らを見つめる著者の目は温かいです。
物語の設定も、非日常のようでもあり、今はこれこそが日常なのかもなど、シニアの私には感じる場面が多々あります。
特に認知症が進行する女性の話は身近であり、心に沁みました。
お陰で、江國香織さんの作品を久しぶりにじっくりと味わい、楽しむことができました。
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カバーはいかにも江國作品にピッタリ
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