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Manhattan Intersection

※このnoteは当店のインスタグラムにアップしたカクテル解説になっています。

KingよりQueenが好きだ。という方は多い。
特に経験豊かな方々に。
なぜかわからないけれど、そういう傾向にある気がする。
BARでいうこれはマティーニよりマンハッタンが好きだ、ということ。

マティーニは「BARと言えば!」というカクテルのひとつだけど、マンハッタンはその立ち位置にはない(と僕は思っている)、多少なりとも飲んでいないとチョイスされないカクテルだからかも知れない。
それとも歴史はほぼ同じ、なんならこっちの方が早かったって話もあるくらいなのに比べるとやや影に隠れがちなところがそうさせるのだろうか。

さておき、僕がどちらを好むかというと、実はどちらもそんなに思い入れがない。だから選べと言われても困るのが本音である。
「強いて言うなら」くらいの僅差でマンハッタン。
これを読んでくれている方にはあまり必要ないと思うけど、いちおうレシピ。

Manhattan
<stir / cocktail glass>
ライウイスキー 3/4
スウィートヴェルモット 1/4
アンゴスチュラビターズ 1dash
ガーニッシュ:マラスキーノチェリー
香りづけ:オレンジ ピール

stirはshakeよりも材料のキャラクターが如実に反映されるので、何を使うか?その特性をどう活かすか?という部分がとても大きい。またshakeのようにエアを含ませて円やかにするという効果も作りづらいシビアな技法。
見た目的にshakeは華やかで映えるけれど、stir にはそれ以上のものがある。
故にバーテンダーによって材料もレシピもかなり変わるし、氷の組み方に一家言ある場合もある。
だから自分好みの一杯を探してBARを彷徨うなんてのも面白いと思います。マンハッタンに限った話ではないけど。
僕はというと以下のレシピで作っている。

<stir / cocktail glass>
ジムビーム ライ 3/4
ノイリー ルージュ 1/4
アンゴスチュラビターズ 2dash
ガーニッシュ:マラスキーノチェリー
香りづけ:オレンジ ピール

ビターズを倍にしただけで他はほぼ手を入れていない。
なぜか。
それは思い入れが大して無いからです。
…と言うのは冗談として(ゼロとは言わないけど)、クラシックはレシピに忠実な方が美味しくできることがままある。特に伝統的な(=昔寄り)の銘柄を使う場合は。
僕のレシピはまさにそれで、変に手を入れるより素直に従った方が美味しくなるというのを実感した結果、上記に落ち着いた。
これでだいぶ長い間、手を入れることもなく作り続けてきた。
しかし。
どれだけこれが自らにとって正解であっても、進化も発展もさせない、疑問も持たず実験もしないというのはあまり健全ではない。
そう思った時、目についたのがバルデスピノ社からリリースされている”Aperitif Quina”というフォーティファイドワイン(ブランデーを添加して長期保存を可能にしたワイン)。
これ、とても美味しいんですよ。軽やかな甘味に奥行きのあるコク。物足りないからあと1杯という時にも、その日の口開けに持ってきても良い仕事をする(まあアペリティフとあるから本来そういう想定なんだろう)。
でも残念ながらオススメしても興味持たれる方が少ない。これはマイナージャンルの悲しさだけど、その反面、バカバカしい争奪戦なんかにならないのはとてもありがたい。

で、コイツをスイートヴェルモットの代わりに使ったら美味しく捻ったマンハッタンが出来るのではないかと思い付いた。
結果は以下のレシピ。

Manhattan Intersection
<stir / cocktail glass>
ジムビーム ライ 1/2
アペリティフキナ 1/2
フェルネットブランカ 2dash
ガーニッシュ:マラスキーノチェリー
香りづけ:オレンジ ピール

ビームライが持つややノイズに近いニュアンスをキナで包むために1:1+フェルネの苦味でアクセントつけつつ輪郭をしっかりと描き、チェリーとオレンジピール。とてもシンプルなtwist。
これは変奏と言った方が適当かもしれないな。
で、ネーミングも含めつつの製作話を少し。
“Intersection”とは「交差点」の意。
現代にあるマンハッタンのレシピと過去のそれをミックスしたような形で出来上がったので、それをそのまま名付けた(相変わらずネーミングは捻れないな…)。
以前、どこかでサイドカーもかつては1:1であったという話を聞いたことがあったので、この比率はショート全般に当てはまるのでは?と思い試してみたら綺麗に嵌まった。
bittersはアンゴスチュラよりもフェルネがより輪郭を描きやすく、馴染みも良かった。
通常のマンハッタンよりやや甘やか。ついでに書くなら度数もやや上がる。
ちなみに1:1+bittersのレシピは“The Modern Bartenders’ Guide by O.H.Byron”(1884)に掲載されている。
昔のカクテルブックは面白いので同業やカクテル好きな方には目を通すことをオススメしたい。

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