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【3章】 理由②“着飾る意味”と社会構造の変化

ファッションシステムが、“究極の消費”をするフェーズにまで来ただけでは、きっと「NORMCORE」は流行らなかった。物事が流行る背景には、社会状況が深く絡み合っている。つまり、人々の身なりを分析することで社会構造が明らかになるのだ。

富の象徴、社会性の証拠ではなくなりつつある

従来は「着飾らない=貧しい」と認識される社会だったが、現在は「着飾らない≠貧しい」という風潮になった。
着飾ることは豊かさの象徴であり、下流階級と差別化をする行為だった。しかし、社会において威厳を保ち、護身のためにも必要だった行為も、時が変われば不要となったのだ。

例えば、今もっとも羨望の眼差しを受けていると思われるIT業界。
どこにでもいる普通の若者が創立した企業が、瞬く間に大企業に化け、人々の生活に多大な影響を与える。そんな業界の住人は総じて合理主義であり、“おしゃれをする”こと自体に興味を抱かない人が多い傾向にある。

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画像キャプション:コラムで例に挙げられていた、故Steve Jobs。毎日同じシンプルな服装だった。Mark Zuckerbergも毎日同じグレーのTシャツにジーンズを着用している。

社会的影響力もある上に、経済的にも圧倒的に優位にいる著名人が、公式の場でもこのような服装で現れるようになった。そうすることで、これに追随する者が現れるのは当然のことだ。

身なりの変化=新たな社会性の誕生

彼らが上記のように振る舞えて、それが社会に受け入れられたこと。
これはつまり

画一化を迫られる(スーツを着るなど)社会ではなく、
個性がより尊重され、主張することを“迫られる”社会になりつつある

ということを証明するのではないだろうか。
なぜか。それはスーツにヒントが隠されている。
歴史を振り返ると、スーツは社会生活の中で長きにわたり重要な役割を担ってきた。
スーツを着用する理由は主に下記の通りだ。

・出身階級の掲示
・社会性のある人物である、という信頼を得るため
・集団に溶け込み、帰属意識を示すため
・帰属組織に対する忠誠心を示すため

しかし、前述の彼らは“スーツを着用すべき公の場”で、
スーツを着用していない。また、着用せずとも非難されることもなければ、本人の存在を無視されることもない。ごくごく当然のことように扱われるのだ。
これらのことから、現在上記の4つを重要視する必要がない風潮があるとも言える。このようにして、人々の身なりの変化を分析すると、社会状況が見て取れるのだ。

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画像キャプション:社会認識と服装は共に変化を続ける。まるで運命共同体のように。

まとめ:「NORMCORE」というファッションスタイルが流行した理由

①社会構造の変化により「着飾る」という行為に対する認識が変化したこと。
②消費を促し続けた結果、自ら消費されるようになったファッションシステム。
③究極の消費でネタ切れし、疲れ切った末に「奥の手」として「究極の普通」を“選択せざるをえなかった”産業と消費者。

これらが絡み合ったことで、「NORMCORE」が流行した。そしてそれは、階級社会に取って代わる形で誕生したファッションシステムが、抜本的に変わらざるを得ない状況であることを示唆している。
「NORMCORE」というファッションスタイルの流行は、既存の社会システムの終焉と変革を、静かに、そしてゆっくりと告げるものだったと私は言えると思う。

そんな訳で、気になるのは未来の姿。今までのことを踏まえて、具体的な未来予測をしよう。そのために今一度話を整理しようと思う。

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