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【レポート】場の発酵研究所:第1期#06 [ゲスト]福野博昭さん

こんにちは、事務局の渡辺(わったん)です。

8月24日(火)は、場の発酵研究所・第6回でした。
会がスタートする10分ほど前にzoomに入ると、今回のゲストの福野さんと、発起人の坂本が談笑していました。飲み会に早くついた人たちが先に始めっちゃっているような雰囲気。

そして参加者が続々と入ってくると、福野さんが「おお!◯◯さん!こんばんは!」と声をかけていきます。

もうこの時点で、福野さんの人柄が伝わってくる気がしました。
坂本がオフィスキャンプ東吉野を運営するきっかけにもなった人物ということもあり、またいつもと違った雰囲気で第6回が始まりました。

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第6回ゲスト:福野博昭さん

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奈良市出身。 元・奈良県職員「ならの魅力創造課」「南部東部振興課」などを経て、奈良県総務部知事公室次長として、奈良県の南部と東部に広がる自然環境の豊かなエリアである「奥大和」地域の振興に10数年取り組む。 他に類を見ない活動をする公務員とし、常にあちこち動き回りながら人と人をつないでいるまる面白い!と思ったことは、すぐに実現させるスピードとプロデュース力を発揮。現在は、公民それぞれの組織の相談役や顧問として関わる。

18歳で奈良県庁職員となり、県税事務所から始まった42年間のキャリアで12の部門を渡り歩いた福野さん。51歳の時に「南部振興課」に配属されてからは、ずっと「奥大和」と呼ばれる奈良県南部東武地域をフィールドとされてきました。坂本が住む東吉野村も、この奥大和に含まれます。

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奥大和の魅力をリノベーションで表現する

奈良県の南部地域・東部地域の山間部を中心とした19市町村を含む奥大和は、奈良県全体に対して人口は10%、面積は80%を占めるという、福野さんいわく「少子高齢化の進む課題先進地」。そんな奥大和の魅力を発掘していくことが、福野さんの仕事でした。

古来の町並みも残る奥大和には、空き家となった伝統家屋や商家もあります。そんな空き家をどう再活用するか、そんな相談が福野さんには舞い込んできます。

たくさんの事例を紹介してくださったので、いくつかピックアップしてご紹介。

和食レストラン「五條 源兵衛」(五條市)

ここは元々、築250年の商家でしたが、空き家となっていました。ここの改装を福野さんに相談された方は最初、「お年寄りが集まる場所になれば」と仰っていたそうですが、それではもったいない。

福野さんは、周辺に飲食店なども少なかったことから、地元野菜を使ったレストランをつくることを提案されました。

レストランへの改装にあたって福野さんは、東洋文化研究者であり古民家再生のアドバイスも行うアレックス・カー氏を紹介し、また少量多品種に取り組む地元農家さんたちもつなげていきました。

その動きはもはやプロデューサーであり、一般的な「公務員」のイメージからは想像しがたいかもしれません。

移住交流体験施設「むらんち」(下北山村)

福野さんが下北山村の「biyori」というコワーキングスペースの開設に関わった時に、biyoriの前に立っている空き家も気になったそう。

役場はなかなか貸してくれなかったそうですが、たまたま役場の若い職員と話していると、この空き家は職員の同級生の持ち物であることがわかりました。

福野さん:

今すぐ電話してくれ、と頼みました。
その場で電話してもらい、電話を代わってもらって、借りることができました。

福野さんのスピード感を象徴するような話だな、と思いました。

その後、大学生などの若い人たちが改修プランを作り、村に移住してきたドイツ人が大工仕事をやりたいと手を挙げるなど、チームができていったそうです。

「ライク・ア・ローリング公務員」

そんな福野さん、なんと、自著を出版されました。その名も、「ライク・ア・ローリング公務員」。9月16日発売です。

ここまでの話を聞いていると、すっと腹に落ちるタイトルでした。

公務員に限らず、福野さんのように、いろんな人たちや場所との関係性を活かしながら仕事をするには、どんな考えや行動をするといいのか?気になるところだと思います。

そんなローリング公務員を、坂本・藤本が掘り下げていきます。

「奥大和はいい空き家が多くてラッキー」

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かつてはホテルを誘致する業務にも携わったことがあるという福野さん、しかしあまり魅力を感じなかったそうです。

それよりも、出張や旅行で訪れた地域にあった農家民宿に魅力を感じていたそうです。そんな視点で奥大和を見ていると、「いい空き家が多くてラッキーだ」と思ったそう。坂本ともいろんな地域を見に行ったそうです。

持続する場と、そうでない場

そんな福野さんが見てきた、「これは長く続くだろう」と思った場とは。

福野さん:

運営している人がおもしろそうな場ですね。
運営している人がおもしろそうじゃないと、その場に惹きつけることはできないと思う。

単に見た目が綺麗なだけでは興味がわかない。
「なに言うてるの?」という感じで、わからん感じのほうが、「解き明かしてやろうじゃないか」という気になります。
その方がおもしろそうだから。

「発酵する」という観点でいくと、場は少しずつ変わっていくものだと思います。オフィスキャンプ東吉野も、いずれは坂本さんが中心ではなくなっていくはず。

「なにもない」から実験へ

「発酵」と聞いて、空き家のリノベーションは「腐りかけているものを飲めるようにする感じ」だと話す福野さん。地域の人が「魅力なんて何もない」と言う場所から、視点を変えて魅力を発掘されてきました。

福野さん:

奈良県の十津川村で、農家民宿をやりたいというおばちゃんたちと一緒に、地元説明会を開いたんです。

その時は、「金儲けしただけやろ」などと言われて、非難されたんです。
おばちゃんたちも泣いてしまいました。

それで、非難していたおじいちゃんと話してみたんです。
すると、「こんな何もないところで民宿を開いてどうするんや」と言う。

でも「都会にはこんな綺麗な川はないし、都会ではこんなにたくさんの星は見えへんで」と話していくと、そんなことは思ってもみなかったそうです。

そして最後に、「1回だけ実験させて」とお願いしたら、認めてもらえました。

この「1回だけ実験させて」もすごく重要だそうで、公務員はもっと実験すべきだと福野さんは言います。

福野さん:

世界のイチローでも打率は4割に満たないのに、0か100しかない発想の人が多いと思います。

10回やって4回成功したら充分ではないか。
それくらいの気持ちで、どんどん実験すればいいと思っています。

「なぜかうまくいく」コミュニケーション術とは

少なくともこのzoomに集まったみんなは、なんとなく共通の感覚を抱いていました。

それは、福野さんになら何でも話せそうな気がするということ。

福野さんを兄貴分のように慕っている様子の坂本は、福野さんからオフィスキャンプ東吉野のデザインを頼まれた時に、運営にまで関わる気はなかったそうですが、気づいたら運営に関わることになっていたそうです。

これもまた、福野さんの人柄が関係しているのでしょうか。

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福野さんの著書のデザインにも関わったという坂本

坂本:

正直、自分が住んでいる村で施設を運営するのは、気が引けていました。

でも福野さんから、「だいちゃん、やるやろ?」「失敗しても、おまえの責任にはならんから」と言ってもらえたんです。

これは大きかったです。

福野さんは、村長から「(オフィスキャンプ東吉野ができたら)本当に移住者が増えるのか?」と問われて、「やってみないとわかりません」「うまくいくかどうかも含めて、みんなで心中しましょうよ」と話したそうです。

坂本も村長も包み込んでしまう懐の深さ。
これは小手先のコミュニケーションスキルではない何かがありそうです。
研究員からも、そんな質問が挙がりました。

自分のことを話す、うまくいっていないことを聞く

坂本いわく、「相手との共通点を探しながら話していると感じます」「一方通行ではなく、ラリーのようになるように話されている」とのこと。

福野さん:

プライベートなことを話すようにしています。
他の誰かの話をするんじゃなくて、自分の生い立ちとか興味関心とか、そんな話を自分からするようにしています。
そうすると、なにかしらの共通点が見つかることがあります。

また、うまくいっていない話を聞き出したいと思っています。
そうすると、自分にできそうなことを考えることができて、楽しくなるんです。

そんな福野さんの話を聞いて、研究員からは「保健室の先生みたい」という声も。
たしかに保健室の先生は、生徒の話をうんうんと聴きながら、その人のことをよく見ています。

一方で、福野さんの「自分のことをなんでも話す」という話から、有名人にもそんな人がいたなあ・・と思っていました。すると・・

実は、あの人の弟子だった

会も終盤に差し掛かったところで、もう一つ、おもしろい話が出てきました。

福野さん、なんと、お笑い芸人の笑福亭鶴瓶さんの弟子だったことがあるそうです。

福野さん:

世の中とかみあっていないと思っていた時があって、お笑いの道に行こうとしていました。

鶴瓶さんから教わったことがたくさんあります。

仕事の条件よりも前に、「この人のこの気持が大事じゃないか」というところで判断していると思います。

人の一番深いところから始まる、ということ。

鶴瓶さんから学んだ人としての掟のようなものが、今も影響していると思います。

そんな福野さんの半生は、「ライク・ア・ローリング公務員」にも収録されているとのこと。これはもう、必見ですね〜。

しきりに「みんなと会いたい!キャンプとか一緒にいこうよ」と言っていた福野さん。

奥大和に行くときはぜひ、福野さんと坂本に声をかけてみましょう。

さて、場の発酵研究所はいよいよ後半へ。後半のゲスト講師は、みんなで相談して決めていきます。また研究員たちによる「取り組みたいプロジェクト」の検討も始まります。乞うご期待!

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