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ほしいのはドリルじゃねぇ!穴だ、穴!"コア・ベネフィット"

 これからお話する「コア・ベネフィット」の説明にピッタリの本があります。こちらはマーケティング初心者用の本ですが、タイトルが秀逸過ぎて大好きです。

 ドリルのセールスマンがいたとします。誰に売るのが一番売れるか、それはもちろん穴がほしい人です。
 でも穴が欲しい人はドリルがほしいのでしょうか?そうとも限りません。穴によってはドリルじゃなくてもいい場合もありますし、そもそも自分がほしい形状の穴が空けばドリルじゃなくてもなんでもいいのです。

 「コア・ベネフィット」とはその商品やサービスから得られる、本当の嬉しさやプラスに転ずる変化です。
 車を例にとりましょう。田舎のお母さんが軽自動車に求めるコアベネフィットはなんでしょう?
 これは簡単ですね。移動手段です。もっと言えば小回りが効く、買い物の荷物の積み下ろしがしやすい、燃費が安いなどの、どれかが「コア・ベネフィット」になると思います。
 ここからはちょっとだけ難しくなります、それではベンツを買う人の「コア・ベネフィット」はなんでしょう?
 ちょっと考えるとすぐに分かりますね。ただ、あなたには思いつかなかったベネフィットもあるかもしれません。
 近所や親戚の人に金持ちと思われたい、女の人にモテたい、ドイツ車ファンでベンツのオーナーの仲間入りをしたい、安全を手に入れたい、限定車を買って値上がりを狙う投資目的、会社の経費を節約したい・・・など沢山のコア・ベネフィットが考えられます。
 つまり物やサービスを売り込むためには商品自体を売り込んでも売れないのです。買い手の「コア・ベネフィット」を探してそれを揺さぶる必要があります。

 あなたが売りたい物やサービスがどんなコア・ベネフィットにふれるかを知るには「その商品の使い方を考える」という方法があります。
 例えば洗濯機ならアパートで使うのか一軒家の大家族で使うのかで大きく求められる性能が違います。アパートならコンパクトと静音、大家族なら一回に選択できる容量が求められるでしょう。
 パッケージ旅行などは家族の誰が買うかでコア・ベネフィットが異なる事があります。お父さんが買うなら子供の喜ぶ顔がベネフィットかもしれません、もしくはお父さんの威厳を保つため、嫁と姑の仲の修復目的かも。セールスする人はセールストークの中でコアベネフィットを探りつつ、トークを変える必要があるでしょう。
 「コア・ベネフィットは買い手の使い方に現れます。」

 この考え方を日常に持ち込むと意外な発見があります。
 表題に書いた「ほしいのはドリルじゃねぇ!穴だ、穴!」の逆で「穴がほしいからドリルをなんとか手に入れないと!」とドリルばかりに意識が行ってしまい、穴が空けばなんでもいいということを忘れてしまうということがあります。
 私も先日、日曜大工をしていて三角定規を探していました。直角に線を引きたかったのです。10分ほど散々探して気が付きました。これ直角なら別に三角定規じゃなくてもよくね?
 つまり、日曜大工の常識に囚われていて直角のものならなんでも直角に線を引けるということをほんの10分程度ですが思いつかなかったのです。
 私はそんなにバカじゃないという方も、よく思い出すとケースは違えど似たような経験はありませんでしょうか?つまり、常識が邪魔をしてコア・ベネフィトの解決策が見つからないって事もよくあるのです。

 また、クレーム処理にもコア・ベネフィットの考えが非常に役に立ちます。
 クレームを入れてくる人の中にはなんらかの理由で本当の苦情の原因を言いたがらない人がいます。
 特にサービス業では多いです。飲食店で「サービスが悪い!ご飯がまずかった!」と騒いでいる男性、実は気に入った女性店員にさりげなくちょっかいを出したところ、にべもなく断られた腹いせに「ごはんが不味かった!」などと騒ぎ立てる輩は多いものです。
 国立公園でタバコポイ捨てした男性がいました。それを注意したツアーガイドがアンケートにメチャクチャ悪口を書かれるケースもありました。もちろんそのアンケートを書いたのはタバコのポイ捨てを注意された男性です
 クレーム処理においてコアな原因を突き止めない限り解決はありません。また、どうしても分からない場合サービス提供者が想像力を働かせてコアな怒りポイントを予想して対処しなければならないかもしれません。クレーム処理は本当に難しい仕事なのです。これはAIでは無理でしょう。

 マーケティングにおける「コア・ベネフィット」のお話からだいぶズレてしまいましたが、要点は外していないと思います。
 要は相手の本当のニーズを察しないと問題は解決しないということです。若いカップルの喧嘩にもよくありそうですね。
 


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