- 運営しているクリエイター
#詩
青に眩む(ぬまづ文芸2023入選)
雲ひとつない青空は
誰の目にも同じ色
ではない
名前のある青 名前のない青
打ちのめされて仰向けに倒れた者だけが
真上の空の昏さを知る
インディゴブルー 眩暈がするほど
夜の闇より暗い 太陽は輝いているのに
くさはらに倒れて見上げる者だけが
斜め上の空のくすみを知る
縹色 灰色は
純粋な青の中にこそ潜む
声を消すために海に来て泣く者だけが
水平線上方の明るい哀しみを知る
アクアマリン 海を映
君が助けを求める顔してた
足が勝手に!!何でって…わかんないけど!!!君が助けを求める顔してた
動くことを恐れるな
だけど現実は甘くない
足は震え
身はこわばり
何もできないんだ最悪の瞬間まで
だけど、君の中で物語が叫ぶ
動くんだ、今
悪魔に勝て
君を竦ませる
君の中の悪魔に
6歳の少年が
強盗を締め出したとき
心の中に響いたのは
「戻れ!! 仙道が狙ってくるぞ!!!」
物語はある
勇気のために
本当は動けない
君へ (九歳離れた私の従妹に捧ぐ)
君と出会ったのは
四歳
幼稚園の頃から好きだった
同じ小学校
同じ中学校
同じ高校に通い
大学は別だったね
それでも僕の隣には君がいた
ずっとそうだと思っていた
結婚して
息子が産まれ
息子を育て
楽しい時も苦しい時も
僕の隣に君がいた
四十四歳で君が死んだ
息子の卒業式には車椅子で出席し
息子の入学の前日に力尽きた
息子の受験を気遣って
痛いとも苦しいとも一度も言わずに
君は逝ってし
檸檬の色と香りのように
青空の色は
青一色じゃないよ
わかるようなわからないような顔をした
あなたは
音程が階段じゃないと
知っているでしょう
半音の中にも無限の音を聴くあなた
世界はあなたとわたしに
同じ顔を見せてはくれない
だからわたしは
祈るだけ
この等しくない世界が
美しくありますように