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『初恋』ほど現実は綺麗じゃないけれど。


家からテレビを撤去してプロジェクター生活を選び、もともと苦手だったドラマをもっと見なくなってしまった私に、オススメのドラマを毎週1個のペースで紹介してくれる会社の後輩ちゃんが居る。(チューナーは残してあるのでプロジェクターで民放は見れる、一応)

そもそもなぜドラマが苦手かって、シンプルに1週間に1回の放送を待ちきれないから。映画は大好きなのだけどものによってはあらすじネタバレをスマホに表示させながら見てしまうくらいなので、原作のあるドラマなんて1話は見れてもその瞬間にGoogle大先生に全てを教えてもらい満足し、気づけば私の脳みそからは消え去っていく。原作の無いものは「待てない」が勝ってしまいそのうち興味を失っていく。(最低)

ただ私の集中力はすさまじく、ハリーポッターがNetflixで配信されたときには一日でシリーズ5作目~最終作までをぶっ通しで見返した。約12時間弱。1日で映画を3本見ることも稀ではない。ドラマも最近はNetflixで全話配信されることが多くなってきて嬉しい。ウェンズデーも一日で完走した。

(松下洸平を知らない私に)「とりあえず最愛見てください!」
「Silentやばいんで見てください、終わりが好みか分からないですけど」
「初恋見てください」
「これは〇話だけなのできっと見れます!」


そんな私の性格も熟知して色々おすすめしてくれるので手始めに《最愛》を、そしてこの週末で《初恋》を見終えることができた。


前置きが長くなったけど、主人公達と遠くはない年代でバツイチ、今の恋愛で感情を揺さぶられ続けている私が《初恋》を見て感じた気持ちをここに残しておきたいな~と。できるだけ話の核心は突かないようにするけど、全くあらすじに触れないのは難しいのでネタバレが嫌な方はリターンをおすすめ。



とても良かった、
でも現実はこんな綺麗じゃない



その一言で終わらせられる程、これに尽きる。
でもそれだけではせっかくの記事にならないので…


このドラマは初恋相手との未来を疑うことなく信じて愛し合っていた高校時代の2人と、人生の波に流されながら現実を生きている大人になってからの2人が重なり合いながら物語が進んでいく。実際、その質感や人生の波はかなりリアルに描かれていると思う。



高校時代の恋人との未来を疑わないのも。
成長するにつれ別れを迎えるのも。
他の人との人生を選び愛や幸せを感じるのも。
それでも心のどこかにはあの人が居るという感覚も。


「心のどこかにはあの人が居る」って感覚は、正直女子にはあまり無いものかもしれない。失恋直後は、カラオケで何時間も泣きながら歌ったり、ふと目に入った思い出のアイテムに胸が締め付けられたり、一緒に見ようねなんて言っていた映画の予告に腹が立ったりするものの、1か月・・・2か月・・・と時間が経てば彼に対する様々な感情は薄れていき、いつしか《記憶》として残されているだけだったりする。思い出しても感情が動かされることは無い。


でも男性は、自分が守れなかったこと、幸せにできなかったこと、そんな不甲斐なさと共に過去の恋愛を割とリアルに感じ続けている生き物なのかなって。こちらからしてみればそんな風に思うなら隣にいる間に全力をかけて私に向き合えよと言いたいところだけど、男と女では恋愛を消化していく時間にズレが生じてしまうことは避けられない、あるある?




実際に私も、高校時代の彼氏と別れた直後にポエムのような感情を書き綴って思い出として形作ったことがある、mixiで。同じ時期に失恋した友達とお互いの思い出ソングを聞きながら、3時間近く無言で涙を流したこともある。これは大人になってから。というかめちゃくちゃ最近。

反対に、別れて10年経った元彼と再会して何となく交流していたら再告白されたこともあるし、離婚して数年経った元夫から直接謝りたいと連絡が来たこともある。

でも私は、そのどちらも応じなかった。
10年振りの元彼には全く心が動いてなかったし、元夫からの連絡には、この感情に行き着くまでこんな時間がかかっちゃったの…?と少し見下すような感覚さえ抱いてしまった。




私がこのドラマを見て思い出したのは、そんな高校時代の彼でも元夫でもない、今の彼だった。


実は前回の記事をあげる少し前、私はバズーカを打ち放って別れを告げられていた。あの記事は、去年末に書き溜めていた気持ちをきちんと残しておこうと公開したもので、別れてから彼の事を考えてはやめてを繰り返していた。彼はいつも戻ってきていたし、戻ってきた時には拒否できない自分がいることを嫌というほど分かっていたから。別れたのにずっと考えていた。



彼との関係はお世辞にも心地良いものでは無かった。どちらかといえばモヤモヤしたり苦しいなと感じることの方が多かったかもしれない。それでもとても好きだと感じていた。その現実と感情の矛盾が苦しくて、私に強く当たる彼の弱さを解りながらも受け入れきる自信もなくて。




自由で嬉しいと心が軽くなる日もあれば、どうしようもないほど地獄みたいな気持ちになる朝もあった。物凄く寒い日にはちゃんと暖かくしてるかなと心配してしまうし、夜遅くにふと、まだ仕事してるのかなと思い浮かべたり。


そうやって考え続けてる中で、このドラマを見た。
もちろんこれだけリアルタイムで考えてるからどうしたって彼を浮かばせながら見てしまうのかもしれないけど、でも私は情けなくも、彼が初恋だったんだと感じてしまった。


今までの恋愛だって、結婚だって、決して自分の心がなかったわけじゃない。辛くなって泣いたこともあるし、本気で一生添い遂げようと思っていた事も嘘ではない。


でも
好きなのにどうしようもできないもどかしさ
全てを捧げたくも自分を打ち砕けない境界線
全部許してしまいたくなる程の強い感情
穏やかな気持ちで思いを馳せられる余裕
会いたくて苦しくて狂いそうな夜
離れていても繋がっている感覚


文字にすれば馬鹿馬鹿しく見えるけれど、そのどれもが私に沸きあがる、初めて感じる心だった。


私も也英のように突き進めたら。
彼が晴道のように愚直なら。
お互いが2人のように貫けたら。


きっと私たちはまたやり直せるし、愛を感じられると思った。


だけど現実はそうではない。



人間は自分の弱さと本気で戦える程強くなれないし、慌ただしい日常の中にそんな余裕を持つのは容易くない。

彼らの周りにいた詩や恒美や旺太郎のように、あるべきタイミングであるべき言葉を伝えてくれる人間が居るわけでもない。そして2人が意識的に距離を置く瞬間はリアリティに溢れていて、意図せず会う瞬間はあまりにもファンタジー。そのどちらもが折り重なった結果、初恋はあのラストを迎えられるんじゃないかな。それなら現実世界を生きる私達に起こりうるのは、意識的に距離を置くというリアリティの方だけなのかもしれない。切ないけれど。


見過ごせない傷
選ばざるを得なかった別れ
捨ててしまった感情
過去に仕立てあげた思い出
身を委ねる日常
向かっていくべき将来


それが目の前にある現実。
そんな私達にとって、このドラマは慰めのようなものなのかもしれない。


こんな風になれたら
あの時こうすることができていれば


心のどこかでそうやって微かに残っていた燻りを優しく包んでくれるのかもしれないなあと。


優しいような、切ないような、甘酸っぱい
そんな気持ちになるドラマ。



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