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負けなかった敗者

4連休最終日。U‐10大会。
カテゴリー内の最上級生で、U‐12カテゴリーでも主力の息子がキャプテン。
あまりキャプテンシーのあるタイプじゃないが、弟がいるせいか下の子の面倒見がいいから、まあ大丈夫か。

息子のチームは現5年生がおらず、来年のU‐12の新チームは今日のU‐10のチームがそのまま戦うことになる。
我慢の年になると思うけど考えようによっては6年生を2回するようなもので経験値的には悪くないのかも知れない。
そのチームの船出のような大会。

自チームのU-10メンバーでトップチームの主力は息子と、あと3年生の天才くん。
あとは4年生が1人と3年生が3人、の4人が試合経験はすくないもののトップカテゴリーの登録選手だ。
残りは始めたばかりの子と1,2年生。

息子と天才くんはこのカテゴリーなら問題ない。個人の力だけで言えば、まあ負けないだろう。
息子はディフェンダーで、天才くんは中盤。あとはトップの選手がどう戦うか。
下級生たちはともかく、トップチームにエントリーしている残りの4人が同年代同士でどれくらい戦えるかにかかっている。

1試合目、案の定息子は緊張している。というか朝会場に向かう車ですでにもう緊張していた。
「そりゃ緊張するよな。でも緊張するのは悪いことじゃないよ。」
と、いつも息子には言っているが解れてくるまでは見ていて不安だ。

結果は0-0。
息子のプレイもチーム全体も悪くなかった。
緊張のせいかセーフティなプレイが多かったがしょうがいないか。

2試合目。
予選リーグ内で一番強敵だと思っていたこのチームが、大会規定のU-10よりさらに下のU-9で出場して来ていて3-0の勝利。危なげなし。

得失点差で2位予選通過。

息子のプレイは安定している。攻撃の芽を摘み、裏パスをカバーし、声を出して指示している。
カバーの意識が強いせいか最終ラインから出れず、もう少しオーバーラップがあれば攻撃に厚みが出るが。。。と思うが、まあまあ十分だろう。

決勝トーナメント1回戦。
対戦相手は息子が通う小学校のチーム。
相手には、クラスメイトで一緒にトレセンにも合格した友達もいる。
チーム内では6年生を含めても1番か2番目に足が速い息子が、この友達にはかけっこで一度も勝てたことがない。
そいつがFWにいる。

このカテゴリーだと全員が上手いことはほとんどなく、しっかりできる子が何人いるか、その子らがいかに決定的な仕事をするか、で勝負が決まる印象だが、前線にそういう選手がいる相手は脅威だ。

そういう相手にチームはしっかりと守った。技術や経験はなくても懸命にボールを追いかけ相手を追いかけていた。

息子もしっかり味方のカバーをしながら、この試合ではオーバーラップも果敢に仕掛けあわやというミドルシュートも何本かあった。

チーム一丸という言葉を体現するかのような戦いだった。間違いなく彼らの今日のベストゲーム。
息子もミスなく完璧なプレイをしていた。

傍から見たら見れば小学生のちびっ子たちのサッカーゲーム。
だけどおれら保護者からすれば我が子の大勝負。
懸命に応援するあまり保護者スペースを飛び出し、タッチライン際で我が子とチームに声援を送るお母さんがいるくらいだった。

結局スコアは0-0。
延長なしのPK戦。キッカーは3人。

先攻は自チーム。
一人目、息子。

落ち着いているように見える。

キーパーの大きさや年を考えると正面に打ちさえしなければ入る。
あとはその勇気があるか。

この試合落ち着いてパスを捌き、惜しいロングシュートも放った息子なら、まあ大丈夫か。

そしてホイッスルが鳴り、息子が助走をとり、そして蹴ったボールはバーにあたり外れてしまった。

最高のプレイをした試合のPKを外す。ありがちだが、ありがちなのだが、何もここで!という気持ちは否めない。

保護者席から落胆の息が漏れ、相手の方から歓声が上がる。

うちの子がスミマセン。やっちまいました。
保護者席での立ち回りとして、そう他の保護者さんに言ってしまえば少しは居たたまれない気持ちは和らぐ。
他の保護者さんもおれに気を遣うだろうから、こっちからそう言った方が会話的にも楽だろう。
でもそれは言いたくなかった。

息子はベストを尽くし、間違いのないプレーでチームを支えていた。
おれはそれを見たんだ。
誇りに思うし、息子にも思ってほしい。
だから絶対に謝らない。

今書いてて思うが、やっぱりおれもショックだったんだろうな苦笑
まあ、そりゃそうか。

結果自チームの3人目も外してゲームオーバー。負け。

落ち込んでなければいいけど。
試合が終わり戻ってきた息子を見るとわりと明るい。
事の意味がわかってないのか、試合そのもののやりきった満足感か。

どちらにしろ落ち込んでないならまあいいか。
勝負にこだわってほしい気持ちがあって、そう言い続けたここ数週間だったが、こだわりすぎて楽しめないのは良くない。
何はともあれ、やりきって楽しかったことが一番だ。

PKの話を聞くと、キッカーは志願して、あれはミスキックだと。
そうか。自分で蹴るって言ったのはチームへの責任感かな。いいことだ。
入らなかったのはしょうがないさ。練習すればいい。

このあとは決勝トーナメント1回戦負け同士でもう1試合ある。
それもPKになったらどうする?と聞くと息子は顔をしかめて勘弁してというような表情をしたあと、蹴る、と。

すばらしい。それでいい。

それにしても一日この年代の子達の試合を見てるとサッカーとはまた別の面白さがある。
試合中は負けん気出して相手とぶつかる子達も、中身は小学生で、それも低学年。

真剣勝負の緊迫した時間帯に保護者席のお母さんにニッコリ手を振ったり、人数がいなくて1年生の子がキーパーしているのをハラハラ見守ったり。
(息子はそんな1年生キーパーをカバーしながらよく守ったと思う。)
普段はかわいいなと思って見てる6年生がだいぶ大人に感じる。

そしてこの日最後の試合。負け同士の試合でも子どもたちのモチベーションは変わらない。
自チームも、相手チームも懸命にプレイしている。

息子はまたしても完璧。
自陣でボールを奪ったあと相手ゴール前までドリブルで相手を抜いていくようなプレイもあった(慣れてないせいか自滅したが)。

しかし結果は0-0。またしてもPK。

借りは早めに返したほうがいい。
おれは息子に蹴ってほしかったが、もちろんおれの希望とは関係なくベンチはキッカーを決めている。

負け同士の交流試合だし、経験のためにもさっき蹴ってない子が蹴るかとも思ったが、1番手でペナルティスポットに向かったのは息子だった。

さっきと一緒。落ち着いている。
いつもと変わらない足取りで落ち着いてゴールの左へ決めた。

成長するもんだ。息子も他の子も。出来なかったことがその日のうちに出来るようになる。

たいしたもんだ。

お互い決め合い3人目。先攻の相手が蹴る前に自チームはキーパーが変わる。息子がキーパーグローブをつけている。

どういうことかわからないがキッカーに比べたら気楽に見れる。

相手チーム3人目のキッカーは息子の正面にシュートし、なんなく息子が止める。
そして自チームの3人目が決め、勝負あり。

自チーム3人目の子も初心者で練習ゲーム以外だと今日が初めての試合だった。動きが分からず、技術もまだないながら必死に食らい付き、予選2試合目ではゴールも決めた。

子どもが成長するのを見ているのは楽しい。そういう意味ではノビシロしかないこのチームは最高に楽しい。

息子はよくアジャストしたと思う。
前回のポストに書いたが数日前まで下級生とのプレイが合わず戸惑っていた。
この連休中に修正して大したもんだと思う。

結果としては5位だったが1試合も負けてないし、失点も0だ。
試合慣れしてないメンバーと試合慣れどころの話じゃない下級生キーパーを率いてほんとによくやったと思う。

ただこのカテゴリーに慣れたかと思ったら今週末はまたU-12のリーグ戦である。
このU-10の感覚でいると大火傷してしまう。

この切り替えもまた経験だな。

大会が終わり、家に帰って最後のPKについて聞いてみた。
「自分から蹴るって言ったの?」
ニヤリと笑って息子「あたりまえじゃん」。

つくづく大したもんだ。


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