見出し画像

新イノベーション論「自分ダイバーシティのすゝめ」

1. ダイバーシティとは?

企業経営におけるダイバーシティの重要性が指摘されて久しいです。
「ダイバーシティ(Diversity)」とは、日本語では「多様性」という意味です。
ビジネスシーンで使われるダイバーシティという言葉には「多様な属性の人々が持つ多様な価値観や考え方を受け入れる」という、いわゆるインクルージョン(Inclusion)的な意味も含まれているようです。

2. ダイバーシティの目的

ところで、ダイバーシティは目的でしょうか?
いいえ、違います。ダイバーシティは目的ではなく、あくまで手段です。
それでは、ダイバーシティを進めることで、どのような目的が達成されるのでしょうか。

<目的1>イノベーションにより新たなビジネスを開発したい

イノベーションに不可欠なのが、課題の発見です。同じような属性の人々が集まって議論しても、社会課題は見つかりません。そこで必要なのがダイバーシティです。様々な属性の人々が集まれば、日々実感している様々な課題を発見することが出来るでしょう。
一方、建設現場・製造現場やコールセンターなど、一定水準のサービス提供を行う必要のある現場にダイバーシティを持ち込んではなりません。品質のバラツキにより、競争力の低下を招くこととなります。つまり、品質管理とダイバーシティは水と油です。品質管理が必要な現場では、画一性が優先されます。

<目的2>専門スキルを持った社員を採用したい

昨今、あらゆる企業がIT投資を加速しており、ITエンジニアの採用が極めて困難です。ITだけでなく、日本国内における人手不足は構造的問題で、一次的なものではありません。
他の企業と採用競争をするのも一つの方法ですが、もう一つ別の方法があります。それが、ダイバーシティです。
例えば、経験豊富な主婦を採用する、専門技術をもった外国人を採用する、といったものです。その場合、それぞれの属性に適した職場環境を用意する必要があります。主婦の方であれば、勤務時間や勤務場所に柔軟性が必要でしょう。外国人の方であれば、言語や宗教上の対応が必要になるかもしれません。
ダイバーシティの実装には、単なるマインドセットではなく、オフィスまたは制度といったハード・ソフト両面での対応が必要になるのです。

<目的3>企業の社会的責任

様々な分類によって生まれるマイノリティという存在があります。
日本国内における外国人、国会議事堂や建設現場における女性、LGBTQやハンディキャップのある人といった方々です。
このようなマイノリティを生み出す分類アルゴリズムにも議論の余地が多分にありますが、本記事ではマイノリティが存在していることを前提として議論を進めます。
昨今、ダイバーシティ&インクルージョンの旗の下、マイノリティを含め、多様な人材を受け入れるよう社会が要請しています。特に上場企業においては、企業の信頼向上のため、あるいは当然の責任として、ESGやSDGsと並び、CSR活動の一環として取り組んでいます。

3. 自分ダイバーシティとは

さて、ようやく本論に入ります。
2までで整理した通り、イノベーションには主に3つの目的があります。
これより、目的1のイノベーションの推進に関して、新たな考え方を提案します。
イノベーション促進におけるダイバーシティとは、人材の多様性を指しています。様々な属性の人材を採用し、様々な属性を尊重しながらイノベーションを目指します。また、それぞれの属性に対して、働く環境や制度を整備する必要があります。
イノベーションを目的としたダイバーシティとは、意図的に品質にばらつきを発生させ、イノベーション(成功)と駄作(失敗)を産む活動です。また、イノベーションが産まれる保証はどこにもありませんが、駄作が産まれる可能性は100%保証されます。
このように、敢えて品質にばらつきを発生させるダイバーシティへの投資を余力のない中小企業が進めることが出来るのでしょうか。
このような背景を踏まえ、新たなイノベーション論として「自分ダイバーシティ」を提案します。
自分ダイバーシティとは、自分の中に複数の専門的経験を構築するという活動を指しています。
例えば、ソフトウェア開発者が建設業の現場監督になれば、ソフトウェアで現場の課題を解決できるでしょう。例えば、医療従事者が警察官になれば、医療で現場の課題を解決できるでしょう。
ここで指摘している専門的経験とは、単なる専門性ではありません。○○学や○○術を学ぶことは大切ですが、本当の専門性には経験が伴います。
自分ダイバーシティによるイノベーションには、事前の課題発見は不要です。異なる専門的経験が、新たな課題を浮き彫りにするでしょう。

image:https://pixabay.com/ja/illustrations/%e5%a4%9a%e6%a7%98%e6%80%a7-%e4%ba%ba-%e9%a0%ad-%e4%ba%ba%e9%96%93-5582454/

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?