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孤独と芸術

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18さいのわたしが生きた証
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孤独と芸術

孤独と芸術

 本当の前置き
 これはわたしの高校時代の卒業論文を一部改変し、文章にしたものです。

背景・動機・前置き

 美術、音楽、文学...分野に関わらず、歴史に名を残す芸術家たちの生い立ちや生前をみるとき、彼らの描く華やかで麗しい幻想的な世界とは裏腹に、作家自身は凄惨な最期を迎える者が多い。酒・薬漬け、精神疾患、他の人間を信頼できない又は依存する、等。
 現代においても創造的な人間は“闇”を抱えてい

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孤独と芸術 2

孤独と芸術 2

孤独な芸術家

 前述した通り、分野にかかわらず多くの芸術家の人生をみるとき、彼らの多くは、精神的に病んだり、何かに依存したりして、自らの身の破滅を招く最期を辿っている。さらに、その原因を探って彼らの生い立ちや幼少期を見てみると、特殊な家庭環境で育ったり、幼い頃からすでに自分が他の子どもと違うことを強く意識していたり、強い「孤立感」の上で人格が形成されているケースがほとんどである。また、美術館でと

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孤独と芸術 3

孤独と芸術 3

教育実習生との対話

 私が研究に行き詰まっているとき、たまたまお話しする機会のあった教育実習生の方と「なぜ芸術家は病むのか」という議論をしていた。そのときに興味深いお話しが伺えたので、ここに記しておく。ちなみに、彼はピアニストだ。
 「同じ音楽家でも、病むのは作曲家が多くて、演奏家は案外ケロッとしている気がする。演奏家は何よりも表現力、スキルが求められるから、常に他の演奏家と競争していて、プレッ

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孤独と芸術 4

孤独と芸術 4

どのように世界を認識しているかー脳科学

 美を感じるということは、この世界にあるものを介して感じるということである。私たちは、光や音、匂いなどといった波動や粒子を、それぞれの感覚器官を通じて認識している。つまり、外界からの信号を受け取ることによってこの世界を“みている”のである。
 そして、最終的に私たちは全ての感覚を同時に組み合わせて一つの体験を形成する。例えば、インドカレーを手づかみで食べ

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孤独と芸術 5

孤独と芸術 5

脳と意識の関係―量子力学

 この結びつけ問題は、従来型のサイエンスでは解決することはできない。なぜなら、意識は肉体に宿っているのではなく別次元にあるからだ。それを説明するのが量子もつれ(quantum entanglement)の現象である。
 量子もつれとは、何の媒介もなしに関連付けがついた二つの粒子の相関のことで、この二つの粒子は物理的にどんなに引き離しても遠隔作用が存在し、同時に情報を共有

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孤独と芸術 6

孤独と芸術 6

意識の存在―心理学

 ではそもそも意識とは何なのであろうか。

心理学において、意識とは表層にあらわれている部分、「顕在意識」と、奥深くに眠っている部分、「潜在意識」とに分けることができると考えられている。私たちが認知でき、コントロールができるのは「顕在意識」の部分のみで、全体の意識の中のたった一割であるとされている。

 「意識」を図に表すとこのようになるのだが、実は「潜在意識」のさらに奥に、

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孤独と芸術 7

孤独と芸術 7

観察者の“意思”が実験結果を確定する?―物理学

※シュレーディンガーの猫についての説明になります。知っている方は飛ばし読み可。

 人間の意識がダイレクトに物質世界に影響を及ぼしている、というのはここ最近の科学の世界での新常識である。
 その話をわかりやすく説明するのに「シュレーディンガーの猫」という有名な思考実験がある。
 箱の中に50%の確率で毒ガスが噴射される装置とともに猫を入れたとき、ど

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孤独と芸術 8

孤独と芸術 8

原意識の存在―心理学

 さて、ここまで人の意識が物質世界に及ぼす影響についての説明を行なったが、人が認識している意識は氷山の一角…と先ほどにも述べた。おさらいをすると、話しているうちについつい目が動いてしまうなどの無意識的な動作や、睡眠中に見る夢の分析、何かを選択するときの思考パターンなど、実は我々の行動の90%は無意識のうちに行われていて、潜在意識の影響力は凄まじいとされている。つまり、我々が

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孤独と芸術 9

孤独と芸術 9

そもそも芸術とは

 辞書より
―文芸・絵画・彫刻・音楽・演劇など、独得の表現様式によって美を創作・表現する活動。また、その作品。
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孤独と芸術 10

孤独と芸術 10

実験的な中間発表

 ①ビニール袋のガサガサ音
 ②ピアノの不協和音
 これらの二つの音は、私が卒業論文の中間発表にて、プレゼンの合間にいきなり聴衆に聴かせ反応を確かめたものである。
 音を不快に感じるかどうかは場所や状況によっても異なってくる。例えば、①ビニール袋の音を映画の上映中に隣でゴソゴソ鳴らされたらたまったものではないだろう。
 しかし、この音を心地よいと思う人間もいる。それは赤ん坊の頃

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孤独と芸術 11

孤独と芸術 11

何をもって「美」とするかー美学

 美とは何か、人はどのように美を感じるのか…という人類の普遍的かつ最も素朴で難解な問いにまず真正面から向き合ったのは、古代ギリシャの哲学者プラトンである。
 彼はまず、彼の哲学の根幹となる“イデア論”を説いた。イデアとは、存在の「真実の姿」を示す言葉である。どんなものでも–––単純な三角形という形でさえも–––全く同じ大きさ・同じ形のものはない。それなのに私たちが

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孤独と芸術 12

孤独と芸術 12

「美」は絶対的なものか、相対的なものか

 舌を出した科学者はこう言った。
「美とは、時間や空間と同じように人の意識とは無関係に絶対的に存在する。」
 インドの詩人はこう答えた。
「美は、それを見る人間によって初めて実現化する。」
 アインシュタインとラビンドラナート・タゴールの対話である。彼らは同じ時代を生き、美とは何かを科学者と詩人、そして東洋と西洋という全く違う立場から二人は見つめていた。

孤独と芸術 13

孤独と芸術 13

全ての人間に絶賛される作品がない理由―考察

 どんなに優れた小説でも、映画でも、人間でさえも、万人に好かれるということはまずあり得ないだろう。自分にとってはドンピシャの好みの作品を、友人に勧めてみたら良さをさっぱりわかってもらえなかったという経験はないだろうか。また、成長するにつれて昔好きだったものが今は心に響かなくなったという経験を有する方も存ずると思われる。私はこれについて以下のように考察し

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孤独と芸術 14

孤独と芸術 14

原意識まで潜る―考察

 では、どのようにして原意識から“美”を物質世界に落とし込むのか。その為には、芸術家たちは顕在意識よりさらに深い意識へと目を向ける必要がある。
 もうここからは科学的な根拠も私が実際に経験したこともない話になる。しかし、それは太古の昔から今にかけても人類の歴史の中で古今東西問わず、ずっと普遍的に起きていたことなので想像するに容易いのではないかと思う。
 さて、芸術家たちの生

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