野菜とフルーツを多用し、中東で美食の国として知られるシリア料理(アラブ料理/レバント料理/レバノン料理)
日本で知名度が高い中東の料理はレバノン料理ですが、レバノン料理と同じ位美食の国として知られているシリア料理のご紹介です。
歴史のロマンあふれるシリア
シリア内戦で有名となってしまったシリアですが、長い歴史があり、世界遺産のパルミラ遺跡など見所がたくさんの国です。
世界上で最も古くから人が住んでいたと言われ、最も早く農耕文明が成立した「肥沃な三日月地帯」(現在のエジプト〜イラク辺り)に位置しています。
イスラーム史上初の、世襲王朝であるウマイヤ朝(661年~750年)の首都もダマスカスでしたね☆
アラブ世界では、シリアの歴史映画や歴史ドラマは有名で、近年では「バーバルハーラ」と言う歴史ドラマが大流行しました。スタンダップコメディも有名です。
また、トルコの映画がアラビア語に訳される際にシリア方言に訳されるので、シリア方言を理解するアラブ人は多いです。
シリアを含むレバント地方の方言は、発音も湾岸諸国に比べて軽く、特にダマスカス方言は美しいです。(でもヨルダン方言や、シリアの中でもアレッポは発音が重い傾向があります)
レバント(レヴァント)とは、現在のシリア、レバノン、ヨルダン、イスラエル、パレスチナ辺りのエリアを指す言葉です。
また、カタールの大学は基本、英語(一部はアラビア語)で教鞭が取られますが、シリアの大学はアラビア語が使われていて、街中でも他のアラブの地域よりフスハー(標準アラビア語)を上手に話す人が多く、教育レベルが高いです。
そう言えば、去年の確か11月位に偶然SNSで目にしたのですが、アラブの子供が参加するフスハーのコンテストがあり、優勝したのはシリアの女の子でした。
大人もびっくりの綺麗なフスハーを話していて、内容も「私は3冊の本を読むのなら、同じ本を3回読みます」と言ったような、話していることも見た目も賢そうな女の子でした。
逆に、シリアの医学(特に歯科)は有名らしいのですが、シリア人はアラビア語で教育を受けているため、例えばヨーロッパなどで職を探したい際に不利になっていると聞きました。一長一短ですね…。
シリア料理は、アラブ料理の中ではレバント料理に属します。レバント料理については別の記事でまとめる予定です。
レバント地方は国を跨いでも似たような料理が食べられているのですが、今回はシリアで特に食べられている料理(&個人的に好みの食べ物笑)を中心にご紹介します。
(したがってこの記事に書かれている料理はレバノン料理にもよく出て来る料理です)
他のレバント地方の料理の記事はこちらをどうぞ☆
シリアでよく食べられている三大料理
①マハシー
シリア料理といえば、何と言ってもマハシーです。シリア三大料理(私が勝手に名付けました)の中でも最も食べられています。
マハシー(アラビア語)とは、野菜や葡萄の葉っぱ等の中にお米やお肉を詰めた料理の総称のことで、ロールキャベルのようなものをイメージしてもらうとわかりやすいかと思います。
野菜はズッキーニ、トマト、カボチャ、パプリカ、ナス、玉ねぎ、キャベツ等です。
野菜の中に詰め物をされていることが多いですが、詰め物であれば、マハシーと呼んで大丈夫です。
マハシーはドルマ(トルコ語)とも呼ばれ、オスマン帝国時代にその領土内に広がりましたが、それ以前からも長らく食べられている伝統的な料理です。
日本ではドルマと言う名前の方がメジャーですかね☆
中央アジアから北アフリカまで広く見られる料理ですが、日本人から人気な観光地であるエジプトでもよく食べられているので、そちらで「マハシー」と言う単語を聞いたことがある人もいるかと思います。
日本好きなシリアの友達は、マハシーは「シリアのお鮨」だと豪語していて、コメントに困りましたが、それだけ国民食としての地位を築いているのかなと解釈しました(適当)
上の写真にも載っていますが、日本であまり見かけない食材と言えば葡萄の葉っぱを使ったマハシーでしょうか。アラビア語では葡萄の葉っぱのことをワラクエナップ(ورق عنب)と言います。
お肉が入ったマハシー(その場合はヤブラクと呼びます)は暖かい状態でメインとして食べられますが、野菜とお米のマハシー(ヤランジー)は前菜として冷やした状態でも食べられ、酸味が結構強いので夏にはさっぱりとしていて最高です。
➁キッバビッサニーイェ
キッバ(クッバ、キッベ)は色々な種類がありますが、シリアで一番食べられているのはキッバビッサニーイェです。
そもそもキッベとはひき割り小麦(ブルグル)に挽肉を詰めた料理のことです。
ブルグルは地中海からインドまで広く使われる食材ですが、例えば湾岸諸国では、とろみのあるお粥のようなジャリーッシュと言う食べ物に使われます。
下の写真のラグビーボールのような形の揚げたキッベが定番ですが、グリルされたキッベ、ヨーグルトスープに入ったキッベ、生肉のキッベなど種類がたくさんあります。
コロッケのように見えますが、ブルグルの部分の食感が特徴的で、結構硬さがあり、ザクザク、ガリガリしていてクセになります。フォークよりナイフで切った方がスムーズです☆
デリバリーの場合、熱でザクザクとしたブルグルが多少柔らかくなってしまうことが多いので、出来るならキッベはお店で食べたい料理です。
また、お店ごとに使われるスパイスのブレンドが異なり、スパイスのブレンドが絶妙なお店は上品な味がしてとても美味しく、キッバ(やマハシーも!)が有名なのは美食の町として有名なアレッポと言う都市です。
アレッポは「マハシーとキッベの母(حلب أم المحاشي والكبب)」とも言われます。シリア料理が語られる際に、アレッポの名前は聞く機会が多いと思います。
③フール
シリア人の朝ご飯と言えば、フールです。
フールとは、煮たそら豆に、クミンで味付けをし、オリーブオイルやタヒーニ(ゴマの練りペースト)、さらに人によってはヨーグルトをふりかけて作られる料理で、アラブのピタパンと一緒に食べられます。
シリアでは、サラダのように生のトマトや玉ねぎ、パセリにレモンを加えて出されることが多いです。
私はシリアでよく見かけるサラダタイプより、寒い日の朝に出来立ての熱々のフールを食べると言うシチュエーションが好きです(笑)
ドーハでお勧めのシリア料理レストランKol Wa Tahana
カタールのドーハにある、とても美味しいシリア料理のお店Kol Wa Tahanaをご紹介します。
以前ご紹介した豪華なカタール料理(湾岸料理)のレストランと同じオーナーですが、こちらはお店の内装などは至ってシンプルで、味で勝負している感じが好きです。
ファミリーレストランなので(?)、コンセプトが謎の恐竜のオブジェとかもあり、週末は家族連れが目立ちます。
シリア人の友達に教えてもらったお店なのですが、余程アラブ人以外来ないと見え、初めて行った時は店員さんたちが驚いてフリーズしていました。
最近はもしかしたらアラブ人以外のお客さんも増えているかも知れません。
1階にも席はありますが、このお店はデリバリーでも人気なので、1階より2階の方が落ち着いて食べることが出来ます。なので、2階に上がってみて下さい♪
まず一番初めに出て来たのが、私の好物のウーズィ(Ouzi,أوزي)/ウーズィライスです。(一応ですが、これはメイン料理です)
どのシリア料理レストランにも必ずあると言う訳では無いのですが、とても美味しいのであったらぜひ試してみて下さい☆
レバント地方で広く食べられている料理で、ラマダーンや結婚式などお祝いの時に出されることが多いです。
薄いパイ生地の中に、マイルドな味のスパイスで味付けされたライスと小さくカットされたお肉、グリーンピースと松の実が入っています。
私はグリーンピースが苦手なのですが、シリア料理に出て来るグリーンピースはあまりグリーンピース感がなく、美味しく食べられます。
所謂パイのような厚みのある生地のウーズィもありますが、このパイ生地はとても薄くて柔らかく、部分的には少しキツネ色にこんがりとしていて、しっとりふわふわ&サクサクしています。
デリバリーして家で食べる時は、何個かオーダーして小腹が空いた時に、手で持っておにぎりのように食べています(笑)
ちなみにお米はバスマティライスなのでパラパラしています。一度バスマティライスでおにぎりを作ろうとしましたが、握るそばからパラパラ崩れ、おにぎりとバスマティの親和性の低さが浮き彫りになりました。
ウーズィは、下の写真の真ん中の、ミントときゅうりが入ったヨーグルトのソースとつけ合わせて食べます。
お次に出て来たのは中東のパイであるファティール(確かメニューではFatayer,فطاير ←ファティールの複数形がファターイル)です。
ファティールを出すお店ではお肉以外に、チーズやほうれん草のファティールもメニューに載っている印象です。
このピクルスと生野菜は付け添えとして出て来たものですが、カラフルでとても可愛いです。
レバント地方、特にシリアは野菜やフルーツを多用するため料理の彩りが豊かで、シリアのジャムやジュースも有名です。
ピンクのカブのピクルスは好きで、家でも食べます。(作りはしません笑)
ルル(オーナーはケララ人)についてはこちらでも触れています⭐︎
こちらはお馴染みのレンティル(レンズ豆)スープです。
シリア(レバント)のレンティルスープは絞る用のレモンと、カリッとトーストされたバーミセリ(ビーフン)や、写真のような同じくトーストされたアラブパン(ピタパン)で作ったクルトンが載っていることが多いです。
そして、私がシリア料理(レバント料理)の中でウーズィと同じ位好きなのが、シシバラック(Shish barak,شيشبرك )と言うワンタンやラビオリのような食べ物です。
名前的にも、見た目的にも、何となく見覚えのある方もいると思いますが、シシバラックは少しずつ名前やレシピを変えて、中東だけでなく、中央アジアや南コーカサスで広く食べられているダンプリングです。
こちらの記事でアゼルバイジャン(Dushbara)と、ウイグル(チュチュレ)のダンプリングについて触れています。
伝統的なシシバラックは中にミンチのお肉(牛か羊、またはそのミックス)が入っていることと、ヨーグルトのスープが特徴です。
シシバラックをそのままスープに入れて調理することが多い気がしますが、オーブンで焼いてからスープに入れている店もあります。
ヨーグルトは結構な量を使っていて、さらにお肉の味がしっかりと染み込んでいるので、スープと言うより美味しいシチューのような濃厚加減です。(つまり良い意味で結構重たい食べ物です)
食べきれなかった時など、カレーのように、翌日にはお肉の味がヨーグルトスープにさらに染み込んで濃厚具合に拍車がかかります(笑)
このシシバラックは特にトッピングがありませんが、最後にかけるソース(ニンニクとパクチーなどをオイルやギーで軽く炒めたソース)+新鮮なパクチー+松の実が載っているとさらに美味しいので、違うレストランの写真ですが載せておきます。見た目的にも華やかになりますね⭐︎
松の実はレバント料理でよくみられるナッツで、そのままポリポリ食べても美味しい(シリア料理に多用されているので、シリア料理を思い出す味)ですが、私のお勧めは松の実のスープです。
また、「ダンプリング×ヨーグルト」の組み合わせだとアフガニスタンのマントゥやトルコのマンティとも仲間ですね。
ちなみにシシバラックはメニューになかった気がしますが、他のシリア料理レストランでも、店員さんがシリア人の場合はちゃんとわかってくれ、作ってくれることが多いです。
問題は、シェフはシリア人なのに店員さんはシリア人じゃない場合で、その場合はそもそもシシバラックがどのような料理かを説明して、それを再度、店員さんからシェフに説明してもらい、作れるかどうかを確認することになります(笑)
そして、こちらのライスもレバント地方やエジプト、トルコでもでよく見かけるバーミセリ(ビーフン)入りのご飯ですが、決まった名前はないのではないかと思います。
大抵のレストランのメニューには、「バーミセリライス」、「ライスwithバーミセリ」等と書かれており、また、単にライスとだけ書かれていてもバーミセリ入りの所もあります。
このご飯に入っているバーミセリは、焼きそばよりも気持ち細い位の太さが多いですが、スーパーでは色々な太さのタイプを見かけます。
日本にある春雨のカップ麺に似た商品もあります。
レストランや家庭によって、玉ねぎやニンニク、松の実、アーモンド、レーズンなど、何でもあるものを入れて大丈夫ですが、レストランではシンプルなことが多いです。
こちらは違うお店で出て来たシンプルバージョンです。
調理法も様々だとは思いますが、代表的な作り方はまず鍋でバーミセリを炒めてから、水に漬けておいたお米を足し、水を足すピラフ方式です。
このお店は塩味が濃いめなので、このバーミセリ入りライスもとても美味しく、箸が進みました。
最後に、アラブのピタパンであるホブズ(Khubz, خبز)です。ちなみに、アラビア語のダマスカス(シリアの首都)方言ではヘベズ(Khebez)になります。
下の写真のようにジップロックに入った状態で配布されたので、出来たら焼き立てのフレッシュなホブズが食べたかったです(笑)
他に、つい最近ランチでデリバリーをしたので、その時に頼んだメニュー(かつ、上で出て来ていないメニュー)もご紹介します。
一つ目は、またまたお気に入りのフリーカです。
フリーカは日本でも健康オタクやグルメな方は栄養満点なスーパーフードとして聞いたことがあるかも知れません。
フリーカとは、古代から存在し、パスタなどに使われるデュラム小麦を、まだ青い状態の時に収穫し、ローストして乾燥させた食材です。
シリアではスープやサラダに入れられることもありますが、一番メジャーな食べ方は、ピラフのようにお肉と食べられるものです。
食感はお米よりも硬めで噛み応えがあり、そのためか、カブサなど中東の炊き込みご飯よりも味がしっかりしています(決してしょっぱいと言う意味ではないです)。
お肉は羊、その次に鶏がよく見られるメニューかなと思います。
もう一つは、先程ご紹介していなかった、また別のタイプのキッベで、キッベサージィイェです。
中東で、大きくて薄いパンであるサジパンを焼く時によく使われるドーム型の鉄板(Saj)に形が似ていることから名付けられたキッベです。
レストランで、食後に紅茶を頼んだらレッドラベルと言うブランドのインスタントでした。ワガママなのはわかりますが、もう少しティーも頑張って欲しいです(笑)
今家で飲んでいる紅茶もレッドラベルなので、わざわざ頼まなくて良かったです(笑)
また、デリバリーの時は小さいデザートのおまけもついていました。
マハシーと同じく、オスマン帝国の領土内で広く食べられているケーキで、名前もアラビア語圏だけでもハリーサ、ナッモーラ、バスブーサ等々地域によって変わります。
レバント地方ではセモリナ粉が使われていますが、作り方もとても簡単で、レシピもお好みで、オイルや卵、牛乳も使わなくても作ることが出来るので、ヘルシー思考の人や、ベジタリアンやヴィーガンの人も食べられます☆
アーモンドなどのナッツやピスタチオ、ココナッツが載っていることが多く、オレンジフラワーウォータやローズウォーター、レバント地方ではアレンジでアシュタ(アラブのクロテッドクリーム)がかかっています。
トルコではシャンバリやレヴァーニと言うのですが、イエメン(少なくともサナアでは)でもラワーニーやレワーニーと呼ばれています。
同じくセモリナ粉が使われていて、シリア発祥のスイーツについてはこちらをどうぞ♪
レストランの場所
レストランの場所はこちらになります☆
観光でカタールを訪れる場合、特にメトロの駅から近い訳でもないので、夏ならタクシーは必須(灼熱ですので笑)ですが、涼しい時期なら駅から歩けるロケーションではあるかと思います♪
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