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コロさん日記(10)〜猫のコミュニケーション術〜

同居人のヒト亜族(女)から衝撃的な報告を受け、朝のさわやかな気分が吹き飛んだ。

いわく、コロさんが我が家の白猫のパピコ姫と鼻をくんくんやり合っていたと。友だちになろうと、コミュニケーションを取っていたと。

コ、コ、コミュニケーション!
嗚呼、コミュニケーションよ!

同居人のヒト亜族(男)である私はこの一報に、控えめに言ってもショックを受けた。コロさんは前にも書いたように猫が嫌いで、我が家の先住猫たちに対しても一方的にシャアシャア唸って、コミュニケーションを拒絶していた。

そういった姿を見ていたから、コロさんは人間で言ったらヒト嫌いな猫──ちょうどそう、私みたいに──言ってみれば一匹狼的な、周囲と馴れ合うことを許さない孤高の存在っていうかさ──いやいや、あんたの場合はただの内弁慶の引きこもりで、孤高とはまったく違うだろ──禿げ同。勝手にてめえのダメなとこ美化してんじゃねえよ、おっさんふぜいが──ああもう、うるさいなあ。図らずも心の声が入り乱れてしまった、申し訳ない。

とにかくまあ、私はコロさんのことを似たもの同士のように思っていたのである。

だが、それはただの勘違いだった。人の集まる場所から逃げ続けて生きてきた私なんかとは違い、実のところコロさんはしっかりコミュニケーションが取れる猫だった。無差別に周囲に噛みついていたように見えて、自分が話すべき相手を冷静に選んでいたのである。

確かにパピコ姫もまた、若いオス猫に絡まれるのが嫌いで、気がつけば我が家の洗面台の下で一人暮らしを始めていた。自身も単身ホスピスに入居しているコロさんも、そういったパピコ姫の境遇に親近感を覚え、自分から積極的に歩み寄ったのかもしれない。

ふたりともそこそこ歳がいってるし、腎臓が悪くて毎日点滴を打ってるし、ちょうど病院の点滴仲間のような絆を感じたのではなかろうか。

コロさんはコミュニケーションを解っていた。キレ散らかすのは主張であり、必要な時にはちゃんと社会人らしく振る舞える猫だったのだ。なんだよ、大人のひとですか。

コロさんが少し、遠くへ行ってしまった気がした。

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寄稿ライターさんの他メディアでのお仕事も。“ヤケド注意のライター”ことチカゼさんが、パラちゃんねるカフェに寄稿された、こちらのコラムをどうぞ。人ってなぜ比べちゃうんだろう…

最後に編集長の翻訳ジョブも。プレイ人口一億人の大人気ゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』初のNetflixアニメ作品『アーケイン』が話題ですが、不肖私が翻訳しました同ゲーム初のノベル作品『ガレン:一番盾』も熱いのでぜひ!

これもう猫めっちゃ喜びます!