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コロさん日記(2)〜コロさんは人が好き〜

コロさんは人が好きだ。

私にも会うなり警戒心のケの字もなく、しがない初老のすねに頭と頬をこすりつけてきた。数分後にはもう、しがない初老の膝に飛び乗ってくつろいでいた。今ではすっかり長年我が家で暮らしてきたような顔で、部屋をうろついている。

コロさんはずっと、とあるお婆さんの家で飼われていたそうだ。ところがそのお婆さんが入院してしまい、別の方にもらわれていったが、今度はその家が火事になるという悲運に見舞われ、再び住処を失ってしまった。

そこをラブコに引き取られたわけである。

ずっとお婆さんとふたりきりで暮らしてきた、お婆さん猫。そこは穏やかな時間が流れる、平和で温かい世界だったに違いない。だからこそ、こんなに人懐こく、愛嬌のある、優しい猫になったのだろう。

と、思いきや。

そうやって穏やかな老猫の顔を見せるのは、あくまでも相手が人間の時だけであって、これが相手が猫となるとコロさんは、

唸る。唸る。唸る。

新顔の様子をちょいと覗きに来ただけの、我が家のボス猫たるけろ号にも、近づいてくるや修羅のような顔になって牙を剥き、“近づいたらてめえ殺るからな”オーラを濃密に発しながらシャアシャア吠えた。けろ号は目が点になっていた。

アシュラマン──私はそう思った。

当初はご飯に口をつけなかったコロさんだけれど、多少は食べるようになった。今朝は頻尿ぎみで、何度もトイレに入っては用が足せず戸惑っていたが、そのうちしっかりおしっこをしていた。獣医さんによれば、なんらかの炎症が起きているらしく、薬を飲めば良くなりそうな気配もある。

やっぱりこれは死なないのではないか。

そこのところどうなんだい、コロさん。

そうやって尋ねても、コロさんは上目遣いにこちらをじっと見つめるだけで、何も答えてはくれないのであった。(第三話へ

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これもう猫めっちゃ喜びます!