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また、春が来る。

「新型コロナウイルス感染拡大を防止するため、前期活動をオンライン形式で行うことに決めました。」

テレビから流れてくる音声に耳を傾けながらふと思う。「これで本当によかったのかな。」

高校3年間、夢のために奮闘してきた。受験期を迎え、一次試験を無事通過。その後、二次試験であと一歩のところで不合格になった。浪人も考えたがあと1年自分に投資しても1年後、本当に100%の力を出し切れるかどうか正直不安だった。理由は、2次試験でプレッシャーに押しつぶされた自分がいたこと、また、共通テストの傾向が変わるということだった。不安を抱えたまま1年間浪人したくはない。学部は違えど、大学生になって前に進みたい。そう思い、国立大学医学部から他の理系学部に進路を変更した。試験は無事通過することが出来た。

さあ、これから大学生活頑張ろうと気合を入れる3月末。大学が対面講義を行わない決定を下したことを知った。

実家暮らしであったため、生活面では両親と弟のおかげで充実していた。しかし、入学式を筆頭に、数々の活動が中止になり、友人関係もままならないまま、前期が終わっていった。  

来年以降入学してくる後輩には自分と同じような思いをして欲しくない。そう思い、新入生や在学生向けの企画を行う学生団体に入った。

そこで出来た仲間と共に来年度入学してくる新入生向けのイベントを行ってきた。感染拡大を防ぐため、遠隔での企画ばかりであったが、楽しんで貰えるよう、なんとか工夫を凝らしてやり切った。

後期に入って、専門性の高い講義が増えた。やるべき事に対して妥協しないこと、これがモットーであったため、勉強とサークルどちらもベストを尽くして、試験も無事全て満点(これは自慢ではなく、人一倍不器用であると感じるため、丁寧にクリアしていくことを目標にした結果に過ぎない)で終えることが出来た。

2021年、共通一次試験が行われ、その後、今年の受験生にも、形は人それぞれではあるが、春が来た。

この1年間、自分が何をしようとしてきたのか、これから何がしたいのか、何をすべきか考えてきた。夜、色んなことを考えていると不安ばかりが生じる。そんな時は、友人に電話をかける。通話後、自分が信頼し、尊敬する仲間は常に前に進み続けていることに気付かされる。

朝になり、今日も1日頑張ろうと気合を入れる。これから何ができるかわからないが、前に進もうともがくしかない。止まっている暇はない、と自身を鼓舞しつつ、庭の木々に目を向ける。

まだ暗くて寒い早朝の景色の中に、少しではあるが、ピンク色に染っているものを見つける。

-桜の木の蕾が春を迎える準備をしている。-

さっきまで暗かった景色が少しだけ明るくなった気がした。

また、春が来る。当たり前のことなのに、なぜかうれしくなった。

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