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コーヒーの味について知る。

しっぽにちは。BBです。
今日は、コーヒーの味について書いてみます。コーヒーは、結局「苦いか・酸っぱいか」、とおっしゃるバリスタさんもいらっしゃるように、苦味と酸味が重要な要素です。それをベースに、自身の味覚体験がどのように生まれるのかを少し調べてみました。一枚の絵にすると以下の感じです。

コーヒーの味

以下に内容について書いてみます。

コーヒーにおける味覚体験
コーヒーの味は、基本的には、香り(前回の香りに関する記事をご参照)と同様に、生成過程における様々な側面・要素が相互に影響し、最終的に1杯に含まれる成分のバランスによって決まる。カフェインなどは苦味に影響し、酢酸やクエン酸、リンゴ酸などは酸味に影響。クロロゲン酸は、焙煎による化学反応により様々な化合物に分解され、苦味、酸味の両方へ影響する。
口に含まれた後は、味覚細胞により味として知覚される。苦味に関して、様々な苦味受容体が存在するが、最近の研究において、コーヒーに対しては2つ(TAS2R43, TAS2R46)が重要だと示唆されている。飲む際のコップの質感による味覚への影響も報告されており、滑らかな場合は酸味や乾燥感が増し、荒い場合は甘味が増すと言われている。
味覚だけではなく、視覚や聴覚によるクロスモーダルな影響も示唆されている。聴覚に関しては、騒音下(~85dBA)でコーヒーを飲んだ場合、静かな場合(~20dBA)よりも、味への感度が低下し、お金をはらいたくなくなるという傾向を持つことが報告されている。視覚に関しては、ラテアートなどの視覚刺激がある場合、甘味や酸味の知覚が増すと言われている。
最終的に、味や香りの総体として、感情反応が想起される。一般的な消費者においては、柑橘系や酸味はネガティブな感情を、ココアの香り、苦味、ロースト感、焦げ感、はポジティブな感情を生み出すという実験結果も報告されている。

前回に続き、勉強したことを書いてみました。香りと味は、コーヒーに限らず多くの研究があり、歴史も長いので、理解するのがとても難しいです。まだまだ完全には理解できていませんが、出来るだけ自分が理解したものを咀嚼して絵にしてまとめていきたいと思います。引き続き、最初に立てた目標項目(以下の記事)に沿って、成長しながら書き進めようと思います。

以下に参考文献を載せておきます。

[References]

学術研究
[1] Comparison of nine common coffee extraction methods: instrumental and sensory analysis
9種の抽出方法(エスプレッソ4種:半自動/全自動/ネスプレッソ/ビアレッティ、ルンゴ5種:半自動/全自動/フレンチプレス/カールスバーダー/フィルター)における成分の分析と感覚検査を実施。被引用数200超。
ポイント:結果として、エスプレッソはルンゴよりも各成分の含有量が高い。化合物の抽出効率は水への溶解度に左右、水の量が多いほど抽出効率は高い。また、抽出時間を長くしたり、抽出温度を高くしたりすると、さらに抽出効率が高まる。成分の分析と感覚検査を比較すると、全固形物とコク(テクスチャー/ボディ)ヘッドスペースの強度と香りの強度カフェイン/クロロゲン酸類の濃度と苦味・渋味、の間で正の相関が見られた。また、pH値/滴定酸度と酸味の間には相関関係は見られなかった。

[2] Chemometric models for the quantitative descriptive sensory analysis of Arabica coffee beverages using near infrared spectroscopy
近赤外分析(NIR)によりコーヒーの品質を評価する数学モデルを構築、感覚検査との関係を調査。被引用数200超
ポイント:結果として、①脂質とタンパク質は属性本体と密接に関係。②カフェインとクロロゲン酸は苦味と関係。③クロロゲン酸は酸味と風味と関係。④清潔感と総合的な品質は、カフェイン、トリゴネリン、クロロゲン酸、多糖類、スクロース、タンパク質と関係。

[3] Numerous Compounds Orchestrate Coffee’s Bitterness
コーヒーの苦味について詳細に分析。特に、カフェイン以外のコーヒー苦味成分の寄与を調査。2020年発行。
ポイント:コーヒーの苦味は,複数の苦味物質(mozambioside, bengalensol, cafestol, and kahweol)と複数のヒト苦味受容体(TAS2R43, TAS2R46)との複雑な相互作用によって決定と結論。

[4] Influence of genotype and environment on coffee quality
コーヒー豆の重要な生化学的成分(カフェイン、トリゴネリン、クロロゲン酸、ショ糖、脂質)の代謝についてレビュー。被引用数100超

[5] Quantification of Taste of Coffee Using Sensor with Global Selectivity
味覚センサーを使ってコーヒーの味を測定。日本の研究。
ポイント:産地の異なる11種類のコーヒー(サルバドル:CS、ブラジル:サントスNo.2、グアテマラ:SHB、ジャマイカ:ブルーマウンテンNo.2、ハワイコナ:エクストラファンシー、ケニア:AA、タンザニア:AA、コロンビア:エクセルサ、インドネシアマンデリン:グラデル、インドネシア:WIB 1、インドネシア:AP1)を数値化。味覚センサーの応答電位パターンの主成分分析の結果、2つの成分でコーヒーの種類や酸味と苦味について定量化できることを示唆(感覚検査の結果との間に高い相関関係)。市販の缶コーヒーの味を定量化し2次元の味覚マップを作成。

[6] Why Do We Love Coffee Even Though It Is Bitter?
味覚センサーを使った研究。日本の研究。2021年発行。
ポイント:味覚センサーで測定したデータと満足度の高いコーヒーの特徴(一般のコーヒー愛飲者を対象としたアンケート調査結果)との比較分析。味覚センサーでは、酸味、初期苦味、初期渋味、うま味、後渋味などの味を識別して測定。結果として、一般消費者は、コーヒーの苦味よりも香りやまろやかさなどのフルーティーな特徴を好むことがわかった。

[7] Cup texture influences taste and tactile judgments in the evaluation of T specialty coffee
コーヒーの味覚に対するカップのテクスチャ(質感)の影響を調査。2020年発行。
ポイント:Q-gradersは、滑らかなカップよりも荒いカップで飲んだ方が酸味が強いと評価、アマチュアは、荒いカップよりも滑らかなカップで飲んだ方が甘みが強いと評価。Q-graderもアマチュアも、滑らかなカップよりも荒いカップで味わった方が、後味が有意に乾燥していると判断。いずれの実験においても、ボディの知覚には大きな影響はなし。

[8] The effects of noise control in coffee tasting experiences
コーヒーの飲用体験における周囲の騒音の影響を調査。2020年発行。
ポイント:結果として、大きな音の下では、小さな音の下に比べて、コーヒーの特定の感覚的・快楽的属性(甘味、苦味、酸味、味・香りの強さ、味好き、音好き、味と音の一致)に対する感度が低下し、お金を払ってでもコーヒーを購入したいと思わなくなる傾向があることが示唆。これはコーヒーの苦味と香りの強さの認識でより顕著。

[9] Does coffee taste better with latte art? A neuroscientific perspective
コーヒーの味覚に対するラテアート(視覚)の影響を調査。2021年発行。
ポイント:結果として、ラテアート付きのコーヒーを飲んだ場合、脳波に変化(α波帯は有意に低くβ波帯は高い)、甘味と酸味の味覚が有意に増加、苦味の味覚には差が見られなかった。

[10] Coffee Drinking and Emotions: Are There Key Sensory Drivers for Emotions?
コーヒー飲用体験(coffee drinking experience:CDE)中に誘発される感情反応の感覚的ドライバーについて調査。
ポイント:結果として、一般的に、コーヒーの香り、柑橘系、酸味はネガティブな感情を引き起こし、ココアの香り、タバコ、苦味、ロースト、焦げ、ボディはポジティブな感情を生み出した。

苦味と酸味の説明(国内)
[11] コーヒーの味はどう表す? バリスタ秘伝の「味わい判定表」がすご
味についてわかりやすい図で説明
[12] コーヒーの「酸味」をざっくりと理解する|コーヒーは“すっぱく”ない
[13] コーヒーの「苦味」をざっくりと理解する|焦げと成分、2種類の苦味
酸味と苦味についてそれぞれ説明
[14] コーヒーの酸味とは?苦味や風味の違いからおすすめの豆&粉まで解説
酸味についての説明とおすすめのコーヒーを紹介
[15] コーヒーの酸味とは?その原因と苦味との関係
酸味について詳しく説明
[16] 「苦味と酸味の法則」を使って自分好みのコーヒーを淹れよう
工程と味の関係「苦味と酸味の法則」について解説
[17] バリスタが解説するコーヒーの4大要素。好みのタイプを探してみよう!
コーヒーの要素(香り、酸味、苦味、コク)やタイプ別おすすめについて説明
[18] コーヒーの抽出で苦味と酸味をコントロールしよう
工程の味の関係。絵がわかりやすい
[19] ただの「酸っぱさ」とは違う。コーヒーの良質な酸味を楽しもう
酸味について詳しく説明
[20] 苦味と酸味別おすすめコーヒー銘柄
タイプと銘柄の関係を説明
[21] 珈琲の酸味と苦味どちらが好まれる?【443人に聞きました】
酸味好きは少ないらしい

苦味と酸味の説明(海外)
[22] Coffee Chemistry: Cause of Bitter Coffee
苦味について研究を引用して説明。良いまとめ
[23] Coffee Chemistry: Coffee Acidity
酸味について研究を引用して説明。
[24] Acidity & Bitterness
酸味と苦味それぞれについて説明。コーヒに含まれる主要な酸(化合物)など紹介
[25] Acidic Vs Bitter Coffee: What’s The Difference? 
酸味と苦味の違いについて説明
[26] Making good coffee requires balancing bitterness, acidity and body
苦味、酸味、ボディのバランスが大事
[27] WHAT MAKES YOUR COFFEE TASTE BITTER?
苦味について詳しく説明
[28] Acidity and Bitterness in Coffee
酸味と苦味について工程(化学反応、温度、水など)との関係を説明
[29] (1) Bitterness and Acidity in Coffee
良い酸味/苦味、悪い酸味/苦味、など説明
[30] What is acidity in coffee? | Difference Coffee Co.
酸味について説明
[31] What is Coffee Acidity?
酸味について説明
コーヒーの主要な成分と風味との関係
以下、Reference[4] より抜粋、翻訳

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苦味と酸味に関係する主な化合物
以下、Reference [22][23] より抜粋、翻訳

苦味:
キニック
5-ヒドロキシメチルフルフラール
2-メチルフラン
フルフリルアルコール
トリゴネリン
クロロゲン酸
カフェ酸
クエン酸
リンゴ酸
乳酸
ピルビン酸
酢酸
ピラジン
チアゾール
キノリン
フェニルピリジン
カフェイン
ペプチド
蛋白質
脂環式ケトン類
芳香族ケトン

酸味:
蟻酸
酢酸
プロパノイック
ブタン酸
メチルプロパン酸
ペンタン酸
2-メチルブタン酸
3-メチルブタン酸
ヘキサノイック
ヘプタノイック
オクタン酸
ノナン酸
デカン酸
乳酸
ピルビン酸
シスおよびトランス-ブト-エン酸
シスおよびトランス-2-メチルブト-2-エン酸
3-メチルブト-2-エン酸
メチルプロペノイック
シュウ酸
マロン酸
コハク
3-メチレンブタン二酸
グルタル酸
リンゴ酸
酒石酸
シス-およびトランス-ブテンダイオイック
シス-およびトランス-メチルブテンダイオイック
メチレンブタン二酸
クエン酸
プロペン-1,2,3-トリカルボキシリック
2-フロイン酸
3-モノカフェオイルキナ酸
4-モノカッフェオイルキナ酸
5-モノカフェオイルキナ酸
3,4-ジカフェオイルキナ酸
3,5-ジカフェオイルキナ酸
4,5-ジカフェオイルキナ酸
3-フェルロイルキナ酸
4-フェルロイルキナ酸
5-フェルロイルキナ酸
3,4-p-クマロイルキナ酸
3,5-p-クマロイルキナ酸
4,5-p-コウマロイルキナ酸
クイン酸
フェルラ酸
カフェ酸
リン酸


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