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3.5冊目『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』/永田カビ

※本記事は、二〇一九年五月十五日に投稿した【3冊目『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』/永田カビ】の加筆修正を行おうとした吾妻が、「どうせだったら改めて記事書いた方が面倒くさくないんじゃね? HNも変わってるし」と思い立った為に作成されたものです。前記事と重複する内容を含んでいます。ご了承下さい。


 本書の存在を初めて知ったのは、Twitterで回ってきたリツイート記事である。
 イラストコミュニケーションサービス『pixiv』にて公開され、話題となっていた実録マンガの書籍化。pixivで連載が開始された頃に偶々目にして読んだことがあったので、書籍化の一報には純粋に驚いたものです。
 そして、非常に興味が湧いた。

 ファーストキスの相手は、女の子。そして、発刊当時も同性と交際していた私は【レズ】のワードに敏感だった。
 ついでに言うと【百合】にも敏感だし【ホモ】や【薔薇】にも反応してしまう。同性だけしか愛せない訳ではないし根っからの腐女子でもないけれど、「冒険心でソッチに行ってみたら意外とイケた」タイプのヤツだと思って頂きたい。因みに現在進行形である。

 そんな人間の眼前に踊る『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』の十八文字──惹かれない訳がない。

【レズ】に【風俗】なんてワードがくっついてるだけでもビンビンに反応してしまうのに、更に【行ってみた】となっては、読みたい欲求は抑えるどころか膨らむばかり。けれど、そのタイトル故に、書店で買う勇気が無かった。エッセイマンガを読む習慣が皆無だったことも、本書を持ってレジに向かう足を止めさせた。
 結局、Amazonの欲しいものリストに登録するだけで、その時は終わった。「誰かが贈ってくれたらラッキー」という飽食根性半分、「いつかきっと絶対読むから忘れないように」という気持ち半分での登録だった。

 登録から約一年後、幸運にも優しい誰かが贈って下さった。マジで有り難かったし、「来た!?!?!?」と心底仰天もした。欲しいものリストから物が届くと毎度仰天する人間は私です。

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 さて。タイトルからして何も知らない人(特に親)の前で、表紙丸見え状態のまま開くのは少々憚られる本書。
 単純に「レズビアン風俗を利用した、チョットえっちなレポタージュ」かと思われるかもしれない。実際、pixivでチラッと見た程度だった私の本書に対する第一印象は、正にこれでした。
 が、実際は違う。

 何故、著者・永田カビさんはレズ風俗に行ったのか。
 著者は高校卒業後、大学を中退。鬱と摂食障害を患ってしまう。病気の影響もあって中々長続きしないアルバイト。どんなに頑張っても「正規雇用じゃないから」と親には認めてもらえず、漫画家としてデビューを果たしても息苦しさを感じていた。
 そんな彼女が、長年抑え込んできた“自分”を解放するために選んだ行動が「『レズビアン風俗』に行って抱きしめてもらう」だったのである。
 本書はエロいだけのレポではない。寧ろ、エロくない。
 可愛らしい絵で表現された著者・永田カビの十年間に亘る人生レポなのです。

 私はこれまで、鬱や摂食障害になった事がない。なので、その部分に関しては読んでいても共感出来なかった。
 しかし、

『不可視の心の痛みより、目に見えて因果関係のはっきりしているダミーの痛み(自傷行為)の方が落ち着けて手早くすっきり出来る』(P.13)

 の行は、とても共感出来た。また、正社員ではない事への否定、家にお金を入れても受け取って貰えない辛さも、滅茶苦茶よく分かった。

 それら以上に「わかる!!」と思ったのが、

『大きくなっても母親にべたべたする(小六になっても抱っこしてもらい、椅子の背凭れと母親の背中の間に挟まれたがる)』
『性的接触をする(おっぱいを触る)』(P.44)

 である。
 実のところ、私も結構母親にべたべたしがちだった。流石に現在は抱っこも、背凭れと背中の間に挟まれたがることも無い。おっぱいを触ったり揉んだりすることも無い。けれど、そこそこの年齢──具体的に言うと十九歳あたり──まではやってた。
 なので、本書にて著者が「わかる!!」と叫んでいるシーンは、同じく「わかる!!」と内心で叫んでしまった。わかる〜〜〜〜わかりみが深い〜〜〜〜〜〜〜〜。私も女の子の柔らかくて、いい匂いのする身体で抱きしめられたい。抱きしめて欲しい。ぎゅってして首元でくんかくんかしたい。ふわふわな肌と肉体を堪能したい。そして、スケベなこともしたい。
『親のごきげんとりたい私』も、めっちゃわかる。
 中盤以降、「わかる!!」の連続でした。こんなに「わかる!!」を連発したエッセイ初めて。

 わかりみが深いだけじゃない。
 落ちるところまで落ちた(『死』まで考えた)からなのか、貯金が尽きてもなお漫画を描くのを辞めなかった事。バイトの面接で掛けられた「がんばれよ!」の一言で、苦しみながらも新人賞に送り続けていた事は、凄いと思った。同時に、羨ましいとも思った。
 私も、行き場のないエネルギーを仕事に向けてみたい。創作活動に注いでみたい。まあ、言うだけじゃなく、実行に移さねば意味がないんですけど! 私の場合は“描く”ではなく“書く”だけれども。noteに只管書き、小説の新人賞に応募してみたり。やれることは何でもやってみなければ。

 半分下心むんむんで頂いたのに、まさか共感の渦に飲み込まれ、少しでも自分を見直すキッカケになるとは……。色々な意味で予想外な一冊でした。

(了)


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