遠距離介護は突然に シーズン2⑧
次の日は、午後の面会までだいぶ時間があった。午前中は、往診してもらい救急車で入院できるように手配してくれたクリニックに、無事転院出来たことの報告と、往診の支払いに行った。看護師さんに、家に帰れると言われたんですがと相談すると、病院にいた方が安心だからその方がいいと思うよ。無理矢理返すような事は絶対しないから、家族がみんな遠方だから病院に居させてもらった方がいいよとアドバイスもらう。確かに、今回の様に急に具合が悪くなる可能性を考えると病院にいたほうが安心だ。この間入院していた病院のコーディネーターさんも、ひとり暮らしは無理だから病院にいる事を薦められた。いろんな方法があり、状況によって何が良いかは人それぞれで変わってくる。要するに、うちの場合はどうするかという事を決めなければいけない。また弟達と話しあってみよう。
そんな事を思いつつ、午後の面会時間に父を訪ねた。
昨日はバタバタと違う病院に転院し、私もそんなに長く付き添えないまま帰ってきたので、どんな様子だろうか。
父は、楽そうにベッドに横になっていた。熱は下がったままの様で、先週よりはだいぶ楽そうだ。そうなると、家に帰りたくなったかも知れない。
「調子はどう?」と聞くと、「どこも痛くないし、調子はいいよ。」
「この病院はどう?」すると父は、「看護師さんが、みんなすごい親切で、こんなに気い使ってもろうて大丈夫なんじゃろうかいうほどじゃ。もう、わしは、家に帰らずにここがええ。」というではないか!なんと!
「あ、そうなん?そりゃ、良かった。なら、ここが安心でええよね。」
私は父が家に帰りたいに違いないと思い込んでいた。でも、父はいつも誰かいて、トイレに行くのもままならない自分をすぐに助けに来てくれるスタッフがいる病院が本当に安心の様だった。2ヶ月前までは自分でなんでも出来ていた父。食欲も落ちて、どんどん体力筋力が落ちている父にとっては、家での気楽さより、病院の安心感の方が大事らしい。そりゃ、そうだ。私は、こんなに弱っているのにまだ父に頑張らせようとしていたかも知れない。父は、もう頑張りたくないのだ。今まで十分ひとりで頑張ったのだ。父が家に帰りたいと言ったら、その時にまた考えよう。
そう思うとスッキリした。
父に何か欲しいものとかリクエストがあるか聞くと、別にないとの事。テレビも見ないというので、ラジオ持ってこようか?と聞くと、いや、もう面倒くさいから聞かないで静かに寝とくという。うんうん、それがいいね。明日、また来るね。
父は、「あんたも、いつまでもこっちにおらんと、早う帰れ。」という。
「うん、向こうは大丈夫だから、明後日くらいに帰るね。」と病室を後にした。
父が言う通り、看護師さん達はキビキビと働き、他の患者さんにも皆感じ良く対応されている。ここなら安心できる。
私は家に戻り、ベッド脇に老眼鏡やスマホを置きやすいように、S字フックとカゴを買いにダイソーに行った。もう日が暮れはじめており、西の空が綺麗な茜色に染まっている。
エモい、エモすぎる。😭
子供時代を過ごした故郷で、また父の世話をしながら何日も過ごしている。なんだか不思議な感覚だ。おまけに夕焼けがとっても綺麗。
そして、スーパーでお寿司と餃子とビールと酎ハイを買った。風呂入って、ご飯食べてお酒飲呑んで、韓国ドラマを観た。毎日のこのパターンが良すぎて、もうここに住みつきたくなる。
続く