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【座右の銘を教えてください】「自分の心に鈍感でありたい」(22歳・大学4年生)

【本企画の趣旨について】
この企画は、私、あじしおが、見ず知らずの人にインタビューをし、その人の人生を根掘り葉掘り聞きながら、「座右の銘」を教えてもらうというものです。


■大学4年生

※以下「あ」=あじしお(インタビュアー)

あ:本日はお時間頂きありがとうございます。

こちらこそ、よろしくお願いいたします。

あ:早速ですが、いま何をされている方でしょうか?

数日前に大学の卒業式がありまして卒業しました。4月から就職なので、就職を待っている状況です。

あ:ご卒業おめでとうございます。早速、いろいろ聞いていくんですけど大学はどちらの方に行かれてたんですか?

石川県の金沢大学に行ってました。

あ:すごい、国立ですよね。そこでは何を勉強されていたんですか?

法学です。

あ:すごい、法学部ですか!六法全書とかそういうことですか?
ミニ六法とか聞いたことあります。

そうそう。そういうのです。笑

あ:何法が得意とかあるんですか?

研究していたのは、会社法ですね。

あ:会社法ですか。あまりイメージが沸かないんですけど、会社の犯罪とかですか?

それもありますし、会社の株式とか、株主総会とか、会社全般に関する法律です。

あ:社外取締役が何人いないとダメとかそういうこと?

そうです、そうです。

あ:なるほど。やっぱ大学生活最後の1年はコロナの影響とかありました?

ありましたね。まず駅がすごいガラガラでしたね。金沢駅って観光地なので、いつもすごい人だったんですけど、それが誰もいなくなってました。大学の授業も全部オンラインですし、サークルも、飲み会も活動しちゃ駄目になって、家にずっといました。

■会社設立


あ:現在の活動について掘り下げていきたいんですが、事前のプロフィールを拝見して興味深い情報が書かれてました。まずはそれについてお話ししたいです。「バーチャル観光のサービスを提供する会社を設立しました」と書いてあります。あってますか?

その通りです。

あ:具体的に教えてもらっていいですか。

まず、就職とはまた別で会社を設立したっていう形でなんです。いわゆる副業なんですよね。合同会社っていう形態なんですけど。

あ:すごいな……。何をする会社なんですか?

まず、きっかけとして、コロナ渦で観光ができなくなって、旅行関連の施設が潰れていくとか、そこで働いている人が苦しい生活を強いられているのを見たときに、金沢のためになんかできないかなって考えていたんです。それで、バーチャルで金沢とか石川県を観光できるサービスをやってみたらどうかなと思ってスタートしました。

あ:なるほど。

最初は「金沢をバーチャルで観光できるサービスをやりますよ」っていう一回きりのイベントで集客をする予定だったんですけど、それだと採算が取れないっていうのと、今バーチャル観光っていろんなところがやってるなって思ったんです。それこそ金沢の中小でやっているところもあるし、このタイミングで私たちが思いつきでやっても独自性がないよねと。

どうせなら、観光に関するあらゆるサービスを提供する会社として、継続的にやっていこうと皆で話し合って立ち上げたっていう感じですね。

あ:その合同会社の代表をやられていると?

3人でやってる会社なんですが、3人とも代表社員っていう肩書きです。

あ:実は、今日のインタビューの前に、バーチャル観光について Googleで調べてたんです。で、そのイメージでいうと、オンラインで離れてるところの風景であったりとか、その観光地を体験できるみたいな。あってますか?

あってます。

あ:ここ最近のサービス?というか、体験なんですか?

特に盛んになったのは、基本2020年以降ですね。例えば、VRで金沢の町を再現しちゃって、VRのゴーグルで仮想空間を歩いて、そこでオンラインでショッピングも出来ます。私たちのサービスの基本イメージは、zoomを通して金沢の景色を写して、まるで自分もそこを歩いてる感覚を味わえるっていうものですね。

あ:面白いですね。それはどれくらいの範囲を見れたりするんですか?

それがまだサービスとして具体的に固まってないんです。当初オーソドックスに、兼六園をバーチャル観光しましょうとか考えていたんですけど、競合がたくさんいるんですよね。で、視点を変えて、介護施設・老人ホームに目を向けました。そこのおじいちゃん、おばあちゃんはお年寄りなので、なかなか外に出れない。そしたらおじいちゃん、おばあちゃん向けに何かオンラインで出来ないかなって。

今検討しているのは、お墓参り代行とか、おじいちゃん、おばあちゃんが行きたい場所にピンポイントでzoomで行ってあげるとか、案内したりとか。そんなのを考えてます。

あ:そっか、そんな時代になったんですね。映像を届けるってことか。じゃあ、今は会社を設立しているものの、サービス自体はまだ走ってないみたいな状況であってますか?

そうですね。3月に登記して、3人の内、私ともう1人が卒業しちゃうんですよ。単純に人手が足りなくて、金沢に残ってやれるのがもう1人しかいないっていう状況なので、今とにかくどういう風にサービスを提供していくかっていうのも、関係各社にヒアリングしたり、模索している状況です。

あ:需要がどの層にあるのか。アプローチが難しそうですね。

まず前提として、コロナ渦が終わったら、バーチャル観光はほぼ需要がないだろうなっていうのは見込んでます。その上でニーズはどこにあるかなって考えた時に、外に行きたい、旅行に行きたい、でも体力的な問題とか、経済的な問題で、なかなか外に行けない人に対して需要があると今は見込んでます。

あ:面白いです。コロナが終わったら、もう需要がなくなるっていうところまで予測しているところが、ドライに計算が行き届いてるなと思いました。ところでどのような経緯で、会社設立をしていったんでしょうか。

起業したい学生を応援する学生団体に入っていたのですが、そこで出会った3人で作りました。

あ:ほー、学生団体での出会いだったんですね。起業を応援する学生団体なんですか?

必ずしも起業しろっていうわけではないんですけど、そういう風にアクティブにイベント開催したりとか、会社を興したりとかを支援するって感じですね。

あ:ところで、合同会社っていう形態で会社を設立したとおっしゃってましたが、合同会社ってどんな形態なんですか?株式会社とか有限会社とかは馴染みがあるんですけど。

実は何年か前に会社法が改正されて、有限会社が実質、合同会社に変わったんですよね。株式会社との圧倒的な違いは何かというと諸費用が安いってことかな?会社を設立するにしても、株式会社は起業の段階で15万円くらいかかるんですけど、合同会社は7万ぐらいですかね。あと合同会社は「株式出資」っていう形態じゃないので、平等にみんな意見を言えるっていうのが合同会社の特徴ですかね。

あ:だから代表社員っていう呼称があるんだ。なんだろうなニュースとかでしか、学生企業する人って見たことなかったので実際にやってる人の話はすごい興味深い。

いやぁ、実際は結構大変ですけどね。

あ:何が大変でした?

会社を設立して、お金が発生する以上は適当には出来ないっていうのがあって、学生団体とかとは訳が違って、対価をもらう代わりにお仕事としてやる必要があるので、そこの緊張感はずっとありますね。

あ:今話を聞いていて、僕、頭抱えてますよ。僕の学生時代は、授業終了後に居酒屋行って酒を飲むっていうことしかしてなかったので。笑

それも素敵な思い出です。笑

■司法試験への道

あ:ところで、よく就職活動の傍ら学生団体で活動して起業まで形にしましたね。

そうですね。実は、1年生から3年生まで机の上の勉強以外してこなかったので、何でもよかったんですけど、なにか団体で活動してみたいなと思って入ってみました。

あ:ほう。1年生から3年生はわりと勉強ばかりしていた?

そうですね。元々公務員を目指してて、その勉強をずっとしてました。

あ:法学系で公務員ってことは、法曹になられるとか?

そうですね。ずっと目指してました。なれなかったんですけどね。結果として別の機関で内定を頂いてそこに就職します。

あ:つまり、弁護士なのか検察官なのか裁判官なのかを目指していたと?

そうです。

あ:なぜ法曹になりたかったんですか?

単純に法律界のトップといえば法曹という考えがあったし、ミーハーなんですけど木村拓哉のドラマでHEROっていうのがすごい好きで、それを見て裁判官とか検事とかっていいなって思って目指しました。

あ:なるほど。大学受験のタイミングで法学で絞ってたんですか。

はい、そうです。

あ:どうでした?法曹への道はやはり険しいですか?

いやぁ。険しいですね。

あ:どんなに険しい道か聞きたいです。

我ながら、法律の条文とか読むのは苦痛じゃなくて、面白いなあとは思ってたんですけど、とにかく覚えること、考えることがすごい多いっていう感じでした。特に民法で出てくる抵当権とか、なんとか請求権とか、学生でそんなの分からないのに、与えられた事案の中で抵当権はこういう風に行使するとか、この場合はこういう風にすべきっていうのを解いていかないといけないのが難しかったですね。

あ:基本はどんな勉強をするんですか?六法全書を覚えるんですか?

よく聞かれるんですけど、基本暗記はなくて、そもそもテストのときに六法全書は置いてOKなんで、覚える必要はないんですよね。

あ:へー、意外です。

じゃあ、何を勉強するかっていうと、なぜその条文がここに入ってるのかっていう「趣旨」とそれはどういう風に使うかっていう「行使条件」っていうのを覚える、頭に叩き込む。

で、司法試験は、穴埋めとかではなくて、自由記述で実際の事件を参考にした事例問題が与えられて、それに当てはまる条文は何かなっていうの六法で探して、それの趣旨を書いて、実際の問題の事案に当てはめていく。で最終的に A さんはなんとか上違反で違法であるとか、これは違法ではないとかっていう風に書いてくって感じですね。

あ:今の話聞いただけで難しそうです……。それは1日どのくらい勉強するんですか?

1日8時間とかですかね。

あ:大学とは別にですよね?

別にですね。

あ:結構辛くないですか?というか、すごくないですか。

はい、我ながら……。笑

あ:スケジュールはどのような流れで?

朝大学行く前にやって、通学バスの間、授業の合間の図書館、家に帰ってからも勉強してって感じで。空いている時間はずっと勉強してましたね。

あ:それを1年から3年まで続けられたと。

はい。

あ:一生モノの経験ですね。なぜそんなにモチベーションを保てたんですか。

なりたい一心でした。それと、今だから言えるんですけど、当時はサークルとか、遊ぶことに興味がなくて、なんでみんなそんな遊びたいんだろうって思ってました。単純に他にやりたいこともないし、誘惑もなかったので、とりあえず勉強をずっとしてました。

あ:1年から3年まで司法試験の勉強されてたわけじゃないんですか。それを最後やめた時の気持ちというか、簡単に諦めはついたんですか?

私は簡単についたかな。自分で1回勉強してみて、無理って分かったし、しょうがないかって感じで。後悔とかはあんまりないですね。

あ:なるほど。得られたものはありますか?この3年間の勉強で。

上を見ればきりがないなってのは思いましたね。勉強してるともっとレベルの高い人が、例えば東大にもいるし京大にもいるし。その人達に負けたくないって、上を見て頑張り続けても、なんか心が壊れちゃうなって私は思ったので。

あ:そこで4年生になり、さっきの話につながりますけど、何か外の活動にも目を向けようかなという話で、学生団体に入ったと?

はい、そうです。

あ:就活も4月前後のタイミングで始まるわけじゃないですか。普通であれば、就活に切り替える人が多いと思うんですけど、なぜ学生団体に?

きっかけは、やっぱコロナの騒ぎですね。それまでは1人でいるのがわりと好きだったんですよ。それが、3月4月に緊急事態宣言が各地で出されて、歩いても誰もいない、部屋にいるしかないっていう状況になって、学内には、あまり友達がいない。すごい寂しいことだなって思って。それで学生団体に入ってみました。

あ:なるほど。もうこのままいくと、ただ単にしっかりしたスーパー学生で終わっちゃうんで、もっと個人的な部分を知りたいんですけど、大学時代になんか趣味とかってあったんですか?

ドライブですね。11月に免許取ったばっかです。

あ:おお!ドライブですか。どこに行くことが多いですか?

いろんなところに行きましたね。私、そもそも自動車自体が好きなので、自動車博物館っていうのが石川県にありまして、そこに行ったりとか、あと砂浜を車で走れるところがあるので、そこに行ったりとか。

あ:いいですね。アルバイトとかはしていたんですか?

あんましてなくて、試験監督とか、大学内で先生の雑用をするバイトとかはたまにやってました。

あ:そりゃそうですよね、大学の他に、8時間も司法試験の勉強していたら、他に時間割けないですよね。ちなみに、恋愛とかそっち系はどうだったんですか?

実は、私特殊な事情がありまして・・・・。

あ:え!なんですか。

ごめんなさい。そういう風にいうと大げさかもしれないですけど。3年生くらいまでは、すごい年上の人が好きだったんですね。

あ:そういうのが聞きたかったんです。でも、そういうイメージあります。しっかりしてるから、精神年齢とか高そうなので、同世代の子とかは相手にならないんじゃないかなと。

そんな年上の男性と接したりとか、女子大生と年上のおじさんが付き合うっていうのは現実的にはできないから、例えば大学でちょっとかっこいい40代の先生がいると、かっこいいなって思いながら講義を受けたりしてました。

あ:最高じゃないですか。それは具体的なアクションとか起こしたんですか?

あー、メールはしましたね。とはいっても、そんな接点がなかったので、授業に関する質問をメールしてっていうぐらいでしたけど。

あ:でも、それは恋愛に繋げることができればみたいな思惑もあってですもんね?

まあ、若干有りながらでしたけど、そもそも、ご結婚されてお子さんもいらっしゃったんで。

あ:それは法で裁かれますよ。笑 他に恋愛話はないんですか?

3年生の秋ぐらいにちょっと大きな転機があって……。

あ:掘ると出てくるもんですね。教えてください。

はい、それは年上とかではなくて、1個下の後輩の子が気になりはじめて。

あ:何でですか?

これが不思議なんですよね。ほんと同世代なんて全然興味なかったので。
ある日急に、好きかもしれないなって思い始めたときがあったんですよ。

その子とは同じサークルだったので、たまに話したり、 LINE はしてたんですけど、気づいたら、今度食事に行きませんかみたいな流れになって……。

あ:結局それは付き合う?

付き合うことになりました。でも、半年くらいで好きな人が別にできたってデートのときに言われて。

あ:付き合いはどっちから付き合いが始まった?

アプローチを始めにかけたのは私ですけど、告白があったのはの向こうからですね。

あ:え、それなのに「好きな子ができてしまいました?」そんなのふざけてませんか!さすがに!

ですよね。笑

あ:でも、その半年間は楽しいものでしたか?

でも楽しかったですね。それから私、おじさんには興味がなくなって、やっぱ同世代いいなって思いましたね。

あ:何でしょう、インタビュー始めてからずっと完璧さに押されてる感じがあったんですけど、急に親近感が湧きました。今はあるんですか、恋愛の種は?

今は全然ないです。

あ:じゃあ、就職したら仕留めるしかないんですね

そうですね。

■座右の銘を教えて下さい。

あ:それではいろいろお話を伺ってきましたが、最後に座右の銘を教えて貰えますか。

私の座右の銘は、「自分の心に鈍感でありたい。」です。

あ:ほー。敏感ではなく「鈍感」ですか。どういった意味が込められているんでしょうか。

2つ思いがあって、1つは、コロナの影響で2020年の3月とか4月に、孤独感と共に鬱気味になったんですが、そのときに感じたことです。孤立した状態が辛すぎて、それでいて就活もうまくいくのかどうかも分かんない。3日間ぐらいずっと食べる体力もないし、ずっとベットで寝ていたいなっていう風に無気力の状態になったんです。

それまでの自分とは全然違うモチベーションになったことがあって。その中で思ったのは、そういう自分の抱えてる寂しさとか悲しさに、あまりにも気づき過ぎるのは、自分を追い詰めるなって思ったんです。

あ:なるほど。

もう1つは、最近の社会に対して思っている考えでもあるんですが、LGBTとか、女性の権利とか、多様性が認められていってるはずなのに、自分の意見はあまり自由に言えず、生きづらくなってる人が増えてるように思ってます。

広告とか何かの発言、先日の森喜朗さんの発言(*1)もそうですけど、なんかの言葉のひとかけらでも誰か傷ついた人がいたら、辞任するまで追い込むとか、死ぬまで追い込むとかっていう考えの人が多いと思うんです。

みんなあまりにも、自分の心の動きとか、他人の言葉とかに、敏感すぎるじゃないかなって感じるんです。いつでも誰にでも完璧に配慮できる人はいないはずなので。

私何事にも考え過ぎちゃうので、自戒も込めて。考え過ぎるんじゃなくて、あえて鈍感でいることも大切だよって思ってます。

(*1)2021年2月、当時、東京五輪・パラリンピック組織委員会会長であった森氏が、日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会で女性蔑視発言をした。


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