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東京俳句紀行 その4 夏近づく

さて、初夏から盛夏へ向かう途中の日々、街歩きをしていて詠んだ句です。

「ドンツキに 艶な紫陽花 脚止まり」
(どんつきに あでなあじさい あしとまり」

季語:「紫陽花」(夏)
街歩きをしていて個人宅の路地の奥に咲く紫陽花に目がいきました。2本の木がくっつているのか、1本でこうなっているのか、青色と薄紫色の花が盛り上がるようになっていてあでやかさを感じました。

「スリバチだ ヤッホーヤッホー 玉の汗」
(すりばちだ やっほーやっほー たまのあせ)

季語:「玉の汗」(夏)
東京都新宿区荒木町にある階段の上からの一枚。
下に弁天様が祀られた祠のある弁天池(地元のかたはカッパ池とも)があり、ここを谷底として大きなスリバチ地形の街が広がっている荒木町。そのヘリからの眺めです。
長い階段を上ると夏の陽射しに照らされて一汗。振り返ると目の前に谷戸地形がひろがり、思わずヤッホーー\(^o^)/

「出番待つ ピカピカキラリ 夏祭り」
(でばんまつ ぴかぴかきらり なつまつり)

季語:「夏祭り」
ここは赤坂の氷川神社。神輿庫に収められている神輿が公開されていました。実際にはこの神輿が担ぎだされることはないと思いますが、夏の午後の陽射しをうけてピカピカキラリ。祭りの始まりをいまかと待っているかのようでした。

「オセロかな 街は赤坂 黒日傘」
(おせろかな まちはあかさか くろひがさ)

季語:「日傘」(夏)
赤坂といえば、繁華街。夜は通りの両側が横道の路地がネオンでカラフルにギラギラしていそう。そんなネオンをかがやせている店の扉から出てくるのも派手な色をまとった女性たち、ホストたち。という印象を勝手にもっていたりしますが、昼間ので赤坂では写真のように意外とモノトーンで構成されていたりします。でもただの白黒ではなく、計算された均整というか美しさがありますね。これを言葉にしたいと、色をもった地名と黒、白を組み合わせて表現してみました。

「夏空に 電ボースイスイ 薬研坂」
(なつそらに でんぼーすいすい やげんざか)

季語:夏空
赤坂の薬研坂はその名の通り、薬研の形をしているところから名づけられた古い坂道。写真の構図は青山通り側に立って、赤坂、六本木の方角を見ていますが、途中に高い建物がないので、奥まで坂の姿がはっきりと見えます。早くもやってきた夏空のもと、電動キックボードに乗った男性が坂を上ってきます。結構な急坂ですが、電動アシストがあれば、スイスイですね。そんな気持ちを言葉にしてみました。

※どうでもいい豆知識:東京の坂道は谷をはさんで向き合った一連の坂でも別名が付けられることが多いのですが、この薬研坂は両側をあわせて一対の坂名にしています。薬研にみえるから一対の坂名にしようぜ、という江戸っ子の粋なはからいが感じられます。

「鴎外忌 むかし観潮 いま観塔」
(おうがいき むかしかんちょう いまかんとう)

季語:「鷗外忌」(夏)
現文京区千駄木の薮下通りに面した観潮楼と呼ばれる建物は、作家森鴎外が過ごした家。その名の通り、ここから薮下通りの崖を通り越して江戸の海が見えたらしい。しかしいまでは埋め立てで海岸線は遠くになり、ビルが建ち並んでその海岸線も見えなくなってしまった。代わりに見えるのがビルとビルの隙間の塔、東京スカイツリー。もし森鴎外がこの様子を見たならば、さしずめ「観塔楼」とよんだかもしれない。

夏の始まりの6句でした。

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