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ショートショート集

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ショートショートをまとめました( ´ ▽ ` )ノ
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#ショートショート

ショートショート『緊張をほぐすための薬』

ショートショート『緊張をほぐすための薬』

「なんですか、これ?」
「緊張をほぐすための飲み薬だってさ。君結構緊張してセリフとか飛んじゃうことあるから、飲んだ方が良いよ」
これから舞台に向かおうという時に、控室で先輩に錠剤を渡された。

「いやいや、どうせこんなの効かないですよね。思い込みで効いたような気がするあれなんじゃないですか? プラセボ効果、でしたっけ?」
「いや、それがプラセボ効果とかじゃなくて、ほんとに科学的に効果があるらしいよ

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ショートショート『ゴーストレストラン?』

ショートショート『ゴーストレストラン?』

ポストの中に近所にできた新しい飲食店の広告が入っていた。広告にはなにやら気になる注意書きがしてあり、興味を惹かれた。
『※店舗での飲食はできません。電話注文だけできます』
なるほど、このところ電話やネットで注文を受けて調理だけして配達してくれる実店舗を持たないゴーストレストランが流行っているから、きっとその類なのだろう。そういうサービスはまだ使ったことがないし、是非使ってみようと思い、早速電話をか

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ショートショート『噛み癖』

ショートショート『噛み癖』

「幼稚園の頃、ついついブランケット噛んじゃってたんだよね……」
わたしは学校の帰り道、友達に苦笑しながら告げる。特に何の意味も無い雑談のつもりだった。
「めっちゃわかる! わたしなんてまだ噛んじゃってるもん! なんか美味しい味がするよね、あれ」
友達も恥ずかしそうに打ち明ける。自分だけじゃなかったという安心感と、なんなら友達に至ってはまだ嚙み癖がまだ直っていないみたいだ。わたしが仲間意識を共有出来

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ショートショート『一人旅?』

ショートショート『一人旅?』

見渡せば辺り一面綺麗な桜が咲いている。耳を澄ませば鶯の美しい声も聞こえてきているし、まさに花鳥風月という美しい光景である。今日は桜の名所として名高い場所へと一人でやって来ていた。どこを見ても桜の木しかなく、周りには人は誰一人いない。俺一人だけだ。……え?一人だけ?……

桜の名所にやってきたんだぞ。毎年たくさんの人でごった返しているような場所なのに、どうして俺一人しかいないんだ!何か盛大なドッキリ

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ショートショート『忙しすぎてもう天手古舞!!』

ショートショート『忙しすぎてもう天手古舞!!』

「いらっしゃいませー」
扉を開けると店員の大きな声が聞こえてきた。お昼を食べようと適当な飲食店に入ったのだ。お客さんもいないし、すぐに食べられそうだと思ったのだが、なぜだか店員が店中を走り回っている。
「ああ、忙しい! 忙しいよ!」
厨房と客席を行ったり来たりしている。お客は僕しかいないが、何か忙しい事情があるのかもしない。

「あの、すいません」
「はい、なんですか!! 注文ですか?」
忙しいか

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ショートショート『優しく育てる』

ショートショート『優しく育てる』

植物に優しい言葉をかけるとすくすくと成長して綺麗な花を咲かせると聞いた。植物にも心はあるということを知り、私は観葉植物に優しい言葉をかけて育てることにしたのだ。

「おはよう!」
「今日も綺麗に咲いてるね!」
「いつも癒してくれてありがとう!」
そうやって声をかけ続けていると、やはり観葉植物はすくすくと成長してくれていた。

そんなある日のことだった。急いでいるときに思わず観葉植物の鉢に足の小指を

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ショートショート『負けず嫌い』

ショートショート『負けず嫌い』

「今から俺が何を言っても『パイナップル』って返すんだぞ。他の言葉喋ったらお前の負けだからな!」

シンプルな引っ掛けクイズである。

簡単な質問をして『パイナップル』と答えてもらう。

そしてきちんと『パイナップル』と返した相手に
「あ、今間違えたこと言ったからお前の負け!」
と言ってやると、
「今ちゃんと、パイナップルって言ったじゃ無いか!」
等自分が間違えていないことをアピールする返答が来る。

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ショートショート『常識』

ショートショート『常識』

「なあ、目玉焼きには何かけてる?」
先日同棲を始めた彼氏が目玉焼きを箸で突きながら聞いてくる。
「目玉焼きにかけるものに選択肢なんてあるの?」
私が質問し返すとその質問を聞いた彼がびっくりして目を大きくさせる。

「目玉焼きに醤油かソースのどっちをかけるかって定番の質問だろ。日本の定番の二択質問ランキングみたいなのがあったらベスト10くらいに入りそうなくらいメジャーな質問だぞ?」

そう言って彼は

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ショートショート『時そばのように』

ショートショート『時そばのように』

「先輩、そろそろお金返して貰えませんかね……?」

後輩は恐る恐る先輩に聞く。

どうしてもお金がないから、このままだと俺はもうダメだと言われ数年前に貸したお金は30万円程。

「わかったよ。返すよ。で、俺が金借りたのは何年前だったっけ?」

後輩はチラリとカレンダーを見る。

今は2020年11月か……。

「一応金銭貸借契約の内容覚えてますか?」

「わかってるよ。年利10%だろ」

「そうで

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ショートショート『ダイニングメッセージ』

ショートショート『ダイニングメッセージ』

家に帰るとダイニングの机の上に妻からのメモが残されていた。

『たらこスパゲッティと
 ステーキが冷蔵庫にあるので温めてください。
 ケチャップは切らせてますが、あなたの好きな
 にんにくチップがあります。
 きたくするのが遅くなると思うので、
 てきとうに食べておいてください』

なんとも読みにくいメモを読んだ後、冷蔵庫を開けたが、ケチャップどころか何も入っていなかった。

「よくわからないメモ

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ショートショート『届かぬ注意』

ショートショート『届かぬ注意』

とある高校で全校集会があった。

もうすぐ夏休みを迎えるというその高校の体育館には全校生徒が集まっていた。先生方が順番に体育館の壇上に立って夏休み前にいろいろな話をしていくのだが、浮かれている生徒たちは当然そんな言葉に聞く耳なんて持たない。

どの先生が話してもお構いなしにざわざわと私語が続いていた。それは生徒指導の先生が壇上に上がっても変わらず、依然として好き勝手話続けていた。

そんな中、私は

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ショートショート『役職名』

ショートショート『役職名』

昼休みに社内でとある部署の先輩社員の大先と後輩社員の後谷が談笑していた。

「俺ももうこの会社で7年も働いてるしそろそろ昇進したいんだよな」
「そうですよね。こんなに会社に貢献してる先輩がまだ平社員だなんておかしいですよ」
後谷のその言葉は嘘でもなんでもない。本心から大先が全然昇進できないことを不思議に思っていた。

「名刺交換のときに役職のついた名刺を交換するのが夢なんだよ」
「役職付きの名刺っ

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ショートショート『手品師の転機』

ショートショート『手品師の転機』

とある手品師の男が銀行に来ていた。

彼は腕はいいのだが商売に不向きなのか、お金が一向に貯まらない。いよいよ貯金が尽き、これからどうやって生活をしていこうか悩んでいるところだった。

そんなとき突然銀行内に大きな声が響く。

「おい、強盗だ。金を出せ」

強盗は偶然近くにいた手品師の彼を捕まえた。

「いいかお前ら、騒いだらこいつの命はないと思え」

まさか自分が人質に選ばれるなんて思っていなかっ

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ショートコメディ『雪まつりの影響?』

ショートコメディ『雪まつりの影響?』

家に帰ると北海道にいる遠距離恋愛中の彼女から余寒見舞いのハガキとともに小包が送られてきていた。

「余寒見舞いか、随分風流だな」
余寒見舞いをもらったことは人生で初めてだった。雪まつりの大きな雪像の写真と共に余寒見舞いの文面が書いてある。

『余寒見舞い申し上げます。
 まだまだ寒い日が続くけど元気にしてる?
 もうすぐバレンタインだからチョコレート送るね(*´▽`*)
 それでは体調に気を付けて

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