マガジンのカバー画像

ショートショート集

45
ショートショートをまとめました( ´ ▽ ` )ノ
運営しているクリエイター

#ショートストーリー

ショートショート『噛み癖』

ショートショート『噛み癖』

「幼稚園の頃、ついついブランケット噛んじゃってたんだよね……」
わたしは学校の帰り道、友達に苦笑しながら告げる。特に何の意味も無い雑談のつもりだった。
「めっちゃわかる! わたしなんてまだ噛んじゃってるもん! なんか美味しい味がするよね、あれ」
友達も恥ずかしそうに打ち明ける。自分だけじゃなかったという安心感と、なんなら友達に至ってはまだ嚙み癖がまだ直っていないみたいだ。わたしが仲間意識を共有出来

もっとみる
ショートショート『中間管理職になりました』

ショートショート『中間管理職になりました』

「こないだ俺さ、中間管理職になったんだよね」
休みの日に居酒屋に行くと学生時代の友人が話し出した。
「ええ、中間管理職って大変なんじゃないのか?」
「まあそうだな。広範囲まで見ないといけないから大変だよ」
「へぇ」
と相槌を打っていた時に大事なことに気が付いた。

「なあ、お前中間管理職って言ってもお前の職業って……」
「社会人野球の選手だけど、どうしたんだ?」
「現役の野球選手に中間管理職なんて

もっとみる
ショートショート『母の日の花』

ショートショート『母の日の花』

「姉ちゃんは母の日に何かあげるの?」
「ちゃんとカーネーション用意してるよ」
そう言ってカーネーションの花束を弟に見せてあげる。

「姉ちゃん毎年黄色のカーネーション渡してるけど母の日のカーネーションって普通赤色じゃねぇの?」

私は毎年黄色のカーネーションを用意する。

「こっちの方がオシャレじゃないかなと思って」
「そんなもんかな」
「あんたにもついでに1本あげる」

そう言って花束から1本黄

もっとみる
ショートコメディ『どういう話の流れ?』

ショートコメディ『どういう話の流れ?』

「あのねえ、俺の言いたいことわかる? わかってないよね? 今から言いたいことわかってないよね?」
「え、ええ……」

僕は困惑する。目の前で語気を荒げて怒るおじさんの扱いに困っていた。

例えばこのおじさんが僕の親戚であったり、恩師であったり、上司であったりするのならば状況はなんとなく推察できるであろう。

また、例えば僕がお店の店員でこのおじさんがお客さんとかなら、なんらかのクレームを入れに来た

もっとみる
ショートショート『そういう仕事』

ショートショート『そういう仕事』

「うわ、雨か……」

突然降ってきた雨に青年は空を見上げる。悲しいことに彼は傘を持ってきていない。

どうしたものかと悩んでいると初老くらいの男性が「傘持っていないのかね?」と尋ねてくる。

初老の男性は身なりはあまり良くないのになぜか気品を感じる見た目をしていた。まるで意図的に汚れた衣服を着ているかのようにも青年は感じた。

しかし青年はその違和感よりもなぜか彼が背中にカゴを背負ってその中に傘を

もっとみる