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なぜ言語聴覚士につながろうと思った?保護者への調査結果を公開【その1】

小児分野の言語聴覚士は全国で約4,000名程度と、なかなかにレアな存在です。そんな言語聴覚士が「たまたま病院や療育施設などにいた」というケースもあれば、「自分で探してやっと見つかった」というケースもあるでしょう。

そもそも保護者はなぜ「言語聴覚士の支援を受けたい!」と思ったのでしょうか。今回は調査結果の第一弾として、言語聴覚士につながろうと思った理由についてお伝えします。

【前提】調査対象の子どもに関する基礎データ

はじめに、今回の調査に協力してくださった保護者・お子さんのデータについて紹介します。

<調査の概要>
実施期間:2022年11月19日〜30日
実施方法:SNS経由でのアンケート回答
調査の対象者:言語聴覚士もしくはそれ以外の療育を受けている子どもの保護者
回答者数:78名(子どもの数:80名)

回答いただいた方の中には、自身が子どもの頃から当事者だったという大人も含まれています。また、調査の回答数は80件と、統計的な調査結果としてはサンプル数が不足しています。そのため、あくまでも複数の個人の意見として捉えていただけたら幸いです。

Q1.支援を受けていたお子さんの現在の年齢を教えてください。


※グラフ内の数字は「人数」(以下同)
※「2歳〜2歳11カ月:1.3%(1名)」の記載が抜けております。失礼致しました

今回の調査対象のお子さんの年齢分布はかなり幅広いですが、調査時点で「6歳〜6歳11カ月(14名)」「5歳〜5歳11カ月(13名)」「4歳〜4歳11カ月(13名)」がボリュームゾーンでした。すでに小学生や中学生、高校生になっているお子さんに関する回答もいただいております。

Q2.そのお子さんが初めて療育を受けたのは、何歳のときですか?

対象となるお子さんが初めて療育を受けた年齢は、「2歳〜2歳11カ月(24名)」「3歳〜3歳11カ月(17名)」「4歳〜4歳11カ月(9名)」の順に多かったです。

Q3.その療育をどれくらい受けていますか?もしくは受けていましたか?

回答の対象者のボリュームゾーンが就学前ということもあり、療育を受けている(受けていた)期間は「1年〜1年11カ月(18名)」「3年〜3年11カ月(15名)」「0年〜0年11カ月(14名)」の順に多いという結果でした。また、10年以上療育を受けている(受けていた)方も3名いました。

Q4.言語聴覚士の支援を受けていますか?もしくは受けていたことがありますか?

回答した保護者のうち、お子さんが言語聴覚士の支援を受けている方(受けていた方)は75名、受けていない方(受けてなかった方)は3名でした。

Q5.言語聴覚士の支援を受けたいと思いましたか?

回答した保護者のうち、言語聴覚士の支援を受けたいと思っていた方は74名、思わなかった方は4名でした。

言語聴覚士の支援を受けたいと思った理由、思わなかった理由

調査について回答した方々のデータがわかったところで、本題である「言語聴覚士の支援を受けたいと思った理由」を見ていきましょう。

いただいた回答はそのまま掲載するか、読みやすい表現に少し修正して掲載しております。

Q6.言語聴覚士の支援を受けたいと思った理由を教えてください。

言語聴覚士につながって支援を受けたかった理由は、以下のとおりでした。明らかに内容が重複するものは省いていますが、なるべく多く、いただいた言葉で掲載しています。

圧倒的に多かった理由は、発語の遅れがあること、発語がないこと、そして発音に関する悩みがあることです。また、専門家である言語聴覚士を頼りたかったという回答も多く見られました。

就学後のお子さんではLD(学習障害)に関する悩みが増え、年齢によって悩みが変わっていく様子も感じました。

●発語が出ない、遅れている(多数)

「発語が遅れていたのと、発語が始まってから現在も幼児語が抜けていない行があるから」
「保育園に入っても1語文から延びなかったから」
「言葉を理解してなさそうだから」
「3歳の時点で発語がなかったから」
「とにかく言葉が出なかったので、早急に支援を受けるべきと思った」
「言葉が遅かったから。受けたいというわけではなかったけれど、受けた方がいいと言われて」
「3歳8ヶ月までほぼ発語がなく、言語面が特に心配だったため」
「言語の発達が折れ線型だったから。なぜ消失してしまったのか知りたかったし、言葉の遅れの理由も分からなかった」

●発音が不明瞭、構音障害がある(多数)

「発音が不明瞭だったから」
「発音が不得意な物があって聞きづらかったから」
「言葉の組み立てがうまくできなかったから」
「声門破裂音など構音が正しくないから」
「発音の誤りがあったため」
「幼稚園の年少の頃に、滑舌を揶揄されたため」
「カ行の発音ができず、翌年の就学に向けて受け始めたかった」
「語彙が少なく、発音不明瞭なのにこちらが聞き取れないと癇癪を起こすから」

●吃音がある

「言葉でのコミュニケーションが難しく、吃りも出てきたから」
「言葉の表出がゆっくりめで、言葉を発する前に吃音気味になることがあったため」
「2語分がなかなか出てこなかったのがきっかけ。言葉が出てからは構音障害と吃音で現在も支援を受けている」

●自閉傾向がある

「以前でいう高機能自閉症のため、言語に遅れがあったから。自閉が重く、コミュニケーションが非常にとりにくかった」
「自閉症疑いにより発語が遅く、発語のきっかけになる言葉がけやトレーニングを知りたかった」
「自閉症スペクトラム障害による言葉の遅れがあり、専門職の支援が必要だったため」
「流暢に話すが、会話がかみ合わないことが多かったから」

●コミュニケーションがうまくいかない

「コミュニケーション、感情面の未熟さが見られたため」
「小学校の先生に『何を話してるのか聞き取れない』と言われたため。家族以外と意思疎通が取れないのはかわいそうだった」

●難聴がある

「難聴についての専門家の支援を受けたかった」
「難聴児の言語発達について何も分からなかったから」
「難聴発覚し、30語しか語彙がなく、発語練習する必要があったから」

●難病などの疾患がある

「生後4ヶ月で脳出血を起こしており、言語について不安があったため」
「脳萎縮などがあり、発達も遅れていて言葉も出ずに過ごしていた。なるべく早くアプローチをしたいと思っていた」
「プラダーウィリー症候群、発達遅滞ありのため、主治医から受けるよう指示があった」

●言葉や摂食嚥下の専門家に見てほしい(多数)

「言葉の発達が特に遅れている印象だったので、言葉の専門家に話を聞きたかった」
「1歳半で発語が無く悩んでおり、言語の専門家であるSTの支援を受けたかった」
「国家資格のある専門家に療育をしてほしいと思ったから」
「素人の自宅療育でどうにかなると思わなかったので、専門家へ任せたかった」
「構音障害についてのプロだから。早い段階で専門的な支援をしてほしかった」
「自分がSTということもあり、STが小児をやるイメージがあったから」
「適切な聴力検査や発達検査などを受け、マッピングしてもらい、言語訓練や親への指導を受けたかったから。また、就学に向けたアドバイスや、教育委員会への書類作成、就学後のアドバイスを依頼したかった」
「飲み込みや離乳食の食べ方、言葉の発達・発音、発達の様子などを見てもらいたかったから」
「摂食や嚥下の評価をしてもらうため」
「民間の児童発達支援に行っていたが、より専門的な療育を受けたいと思ったため」

●幼稚園の先生や保健師に指摘された

「単語数が少なく、会話はおろか意思疎通が難しい状況だった。幼稚園で成長すると思っていたが、幼稚園の担任に指摘された。まずいと感じ、言葉の専門家に相談したいと思った」
「保健師さんに提案され、言語療法を受けられるなら受けたいと思った」

●必要だと言われた

「言語聴覚士がどんな人でどんなことをするのか未知だったが、とっても気になっていた上、評価を受けた際に訓練が必要だと言われたから」

●LD(学習障害)がある

「発達性読み書き障害で、医師からも『言語聴覚士からの指導がよい』と言われたから」
「ディスレクシアがあり、失語症に対応できるSTが一番適任だと思ったから。心理職や学校の先生では基礎知識がかなりちがい、なかなかアプローチがうまくいかなかった」
「学習障害で読み書きが苦手だったため」
「小学1年生で平仮名やカタカナが書けない。WISCの結果、IQは高めだったためLDを疑った。STROW検査で音韻に困難があるとわかり、視覚支援・言語支援を受けたいと主治医に伝え、訓練を受けることになった」
「学習障害(読み書き)の診断が出て、色々と調べるうちに言語聴覚士に相談するといいとの情報を得た。わらをもすがる思いで相談した」

Q7.言語聴覚士の支援を受けたいと思わなかった理由を教えてください。

数としては少ないですが、言語聴覚士の支援を特に望まなかった理由も寄せられました。

「療育に通い出した時に、特に言葉の遅れがなかったから。検査データでも遅れはほぼなかった」

「療育、OT、PTに通っており、これ以上仕事を休めないから」

「言葉に顕著な遅れがなかったから。また、当時通っていた病院には子ども向けの言語聴覚士さんがおらず、言葉の専門家による支援が受けられることを知らなかった。今なら受けたいと思う」

まとめ

今回はアンケート調査結果のうち「なぜ言語聴覚士とつながりたいと思ったのか」に関する回答を紹介しました。

子どもの言葉の遅れや発音などに悩んでいる方は、ぜひ言語聴覚士とつながってほしいと感じます。また支援をする言語聴覚士からみて、利用者側のニーズを確認するヒントになれば幸いです。

次回は、調査結果【その2】として、実際に言語聴覚士とつながった方法や、言語聴覚士の支援を受けた満足度について紹介します。


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