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『Overnight』 第3話 “Melting into the crowd, I look for your answer”
第3話 Melting into the crowd, I look for your answer 今年の秋は暑いな、なんて思っていたら、11月半ばを過ぎて唐突に寒くなり、早めの冬がやってきた。 昼に、母からLINEが来た。 「今年の正月は有くんと帰ってくるの?」 私はまだ、有くんと別れたことを両親に伝えていない。別れてから3年以上経っているのに、だ。 有くんがとっくに会社を辞めていることも、私が派遣社員として働いていることも、世間体を気にする両親はきっと受け入れないだ
『Overnight』 第2話 “Passing by many words, I can't find the truth one”
第2話 Passing by many words, I can't find the truth one 小さい頃から「まじめだね」「頭がいいね」と言われてきた人生だった。 完璧な家庭環境、完璧な両親。でもどこか居心地が悪くて、塾で勉強をしながら時間を潰すのが好きだった。 そうした学習習慣が功を奏し、現役で名の知れた大学に受かった。よかった、私はきっと両親のように「完璧な道」を歩んでいけるーー。 ** 「石井ちゃん、なんだかボーッとしてる」 という篠田ちゃんの声が聞
『Overnight』 第1話 “Hang out, why don't we? Let me know something”
第一話 Hang out, why don't we? Let me know something 「石井ちゃん、お昼行かない?」 11時半を過ぎて、同僚の篠田ちゃんが私の席にやってきた。 「行く行く。ちょっと待ってね」 私は手早く「お昼休憩いただきます」とチャットを打ってから、席を立つ。 7月、季節は夏。オフィスを出ると、ムッとした熱気に包まれた。 私の勤務先である渋谷のITベンチャーは、数年前まで猛威を振るった感染症対策の名残で、週3回は出社、週2回はリモートワーク
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