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2020年のアートTOP5とベスト展覧会

遠藤が選ぶ2020年のアートTOP5


1、円山応挙「雪松図屏風」三井記念美術館

今年は「その季節にしか見れない作品を見る」という日本の美しい芸術を嗜むことの楽しさに初めて気付けた年でした。特に年始一発目に見た冬にしか見れない応挙の「雪松図屏風」は老松と若松の対比が人生の縮図をも感じさせるようでその壮大なドラマに感激したのと、ベースの紙の色をそのまま雪の白として表現する応挙の目から鱗の表現方法や、金砂子による雪に太陽が反射している表現などあまりにも圧倒的な美しさ麗しさにうっとり。今年1年の始まりとして最も相応しい屏風絵だったなと思いました。
そしてそんな日本の季節の美を求めて今年はトーハクに5回行ったのですが、これがほんとに至高の体験でした。お正月に見た長谷川等伯の「松林図屏風」。夏に見た花火が打ち上がる歌川広重の「名所江戸百景・高輪うしまち」。お月見の時期に見た葛飾応為の「月下砧打美人図」。紅葉の時期に見た酒井抱一の「夏秋草図屏風」。などなど、容易に旅行に出掛けられなかった今年ですが、日本の美が集まるトーハクで美しい四季を感じることができました。
春に尾形光琳の「紅白梅図屏風」、「燕子花図屏風」がコロナで見れなかったので、2021年は見れたらいいなぁ。大観の「紅葉」も見れなかったので来年リベンジ!
応挙「雪松図屏風」の感想はこちら

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2、レオナルド・ダ・ヴィンチ「腰掛けた人物の衣壁」

今年、心から良かったと思えた出来事は、コロナ直前にパリ・ロンドンにギリギリ行けたことです。何をしに行ったかというと、レオナルド・ダ・ヴィンチ没後500年を記念した過去最大級の回顧展がルーヴル美術館で開催されるとのことで、それを観に行きました。人生でもう一生ないだろうこの機会。これに行けなかったら後悔の嵐だったと思うので、本当に、本当に行けて良かったです!!!!!!!!!!!「モナ・リザ」、「洗礼者ヨハネ」、「岩窟の聖母」、「ラ・ベル・フェロニエール」「聖アンナと聖母子」ともともとルーヴルにある作品はもちろん、エルミタージュ美術館の「ブノワの聖母」、ヴァチカン美術館の「聖ヒエロニムス」という国の至宝が来ていたのも驚きだったし、大量の素描と手稿を目の前にして、レオナルドが本当に実在したんだと感極まりまくり、感情の居場所がとっ散らかりまくり、大変なことになりました。
たくさんの素晴らしい作品の中でもわたしが忘れられない作品は「衣璧の素描」です。ウフィッツィ美術館にある「受胎告知」のマリアの服のスカートの部分の素描なのですが、これがもうとんでもなくドラマチック。展覧会の最初の部屋に展示されていたのですが、一目見て心奪われてしまいしばらくそこから動けませんでした。布のひだの垂れ方を研究するために粘度を溶いた水に布を浸して固めたものも展示されていたのですが、布一つとってもそこに重さや厚み、垂れ方など正しさと美しさを見出そうと素描を繰り返したレオナルドの絵に対する真摯さよ。ただ絵がうまいとかそういうことではなくて、物事をじっくりと観察すること、そこにある美を引き出すことに対する彼の瞳の輝きを感じました。
感激しすぎて心と頭が沸騰してしまい感想文を書いてないというまさかの失態をおかしているのですが、もうすぐこの時の展覧会を撮影したドキュメンタリー映画が公開されるので、それを観て思い出しながら感想を絶対に絶対に書こうと思います。

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3、ムンカーチ・ミハーイ「パリの室内(本を読む女性)」

ブダペスト展で出逢ったムンカーチ・ミハーイ。ムンカーチ・ミハーイと言いたいだけな気もするけど、ムンカーチ・ミハーイの描く室内がむちゃくちゃ好きでした。重厚な色といい、タッチのぬめぬめさといい、正面からの構図といい、すごく良い。「ムンカーチ・ミハーイ」で検索すると、わたしがインスタで荒ぶってた投稿が出てくる。恥ずかしい。みんなもっとムンカーチ・ミハーイで投稿して私のこの品の無い投稿をかき消しておくれ…。同じブダペスト展で最高だったチョント・ヴァーリ・コストカ・ティヴァダルもシニェイ・メルシェ・パールも夢によく出てくるので名前を覚えました。よしっ。
室内画で言うと、今年はムンカーチ・ミハーイとナビ派のヴュイヤールの描いてる絵が大変美しく好きだということに気付きました。色使いの多い装飾過多がたまりません。
「ブダペスト展」の感想はこちら

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4、葛飾応為「吉原格子先之図」

人生の中でいつか絶対に見たい作品としてずっと私の中にあった大切な大切な作品なので、これが見れたのは今年最高の出来事だったと言っても過言ではないです。この時初めて太田記念美術館に行ったので、畳のエリアがあってそこに正座しながら観れるということを知らなかったので、行ってこの絵をじっくり畳の上に座ってみれた時間の尊さよ。作品を見る環境ってすごく大事だと思っていて、太田記念美術館の内装についても感激した機会でした。
応為に興味をもちはじめたきっかけは朝井まかてさんの「眩」、アニメ「百日紅」だったので応為という人物について無駄に感情移入してしまっているところがあり、なんだか彼女の作品を見ると同じ女として共感できる部分があるからなのか感情が溢れ出してしまいます。改めて応為が好きだなと永遠に推していくことを誓いました。ロマンチックな美しい絵。
今年は「吉原格子先之図」も「月下砧打美人図」と数少ない応為の作品をこの目で見ることができて本当に嬉しかったです。
「肉筆浮世絵名品展」の感想はこちら

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5、ルーベンス「パリスの審判」、「サムソンとデリラ」

今年、インスタのストーリーで「荒ぶる芸術愛」が炸裂していましたが、その中でもこの2作品はとても思い入れのある作品です。
東大の三浦篤先生のご著書「まなざしのレッスン」にルーベンスの「パリスの審判」を例にギリシャ神話の登場人物やストーリーを知っていると絵の見え方が全然変わるということが書かれており、それを知って大興奮したのですが、同じく聖書についても話を知っていると宗教画の見え方が格段におもしろくなるということで金沢百枝先生の中世のロマネスク美術から旧約聖書を学ぶ講義にも参加するようになるぐらいギリシャ神話とキリスト教(歴史画)にどハマりしました。「絵っておもしろい!!!!!」と爆裂感じるようになったのはこの歴史画を学ぶということが結構大きな変化だったと思います。そんな中でルーベンスってやっぱり最強なんだなということがわかりました。彼の描く歴史画はとってもわかりやすい!しかも感情に訴えかけてくる。クライアントの望むものをしっかり形にできるメジャーさがあり、それに技術が伴ってるもんだからめちゃくちゃうまい。ピアノがめちゃくちゃうまい人っていとも簡単に弾いてるように見えるけど、その背景には血の滲むような努力や才能があるからこそ“簡単そうに弾いてるように見える”のであって、ルーベンスの絵もそんなものを感じます。だれでも真似できそうなんだけど、あれはもうだれも真似できない。いろんな画家のことを今年勉強しましたが、後世の画家たちがこぞってルーベンスに憧れるのがめちゃくちゃわかりました。
そしてこの2作品をロンドンのナショナルギャラリーで今年の3月に見ることができたのですが、両方とも同じ部屋にあるので、もう生で見た瞬間、大!興!奮!してしまいました。アテナ!ヴィーナス!ヘラ!みんな綺麗!!!(涙)デリラ〜〜〜〜〜!!!!(涙)と話を知っているからこその感情移入ができたのが本当に楽しくて仕方なくて、本当に本当に三浦先生のご著書に出逢えてよかったと思った瞬間でした。
「サムソンとデリラ」についてはこちら

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というわけでどれが1位というわけでもないのですが、2020年見た作品の中で心に残ったものを選んでみました。5つに絞ってしまったけど、めちゃくちゃいい作品を今年たくさん観れたのでどれも1つ1つ心に残っています。
ゴッホのひまわりも圧倒的に素晴らしかった。

◇◇◇◇◇

遠藤が選ぶベスト展覧会

次に、今年行った美術館や博物館をまとめてみたのですが、コロナだったよな?と不安になるほどたくさん展示を観に行っていました。コロナだったからこそ、生で芸術を見るということの力にすがっていたのかもしれません。というわけで以下、今年行ったやつまとめ。

1.三井記念美術館 円山応挙『雪松図屏風』
2.東京国立博物館 長谷川等伯『松林図屏風』
3.東京国立博物館 「高御座と御帳台」
4.代官山ヒルサイドフォーラム 「ダ・ヴィンチ没後500年 夢の実現」展
5.国立新美術館 「ブダペスト-ヨーロッパとハンガリーの美術400年」
6.東京都美術館 「ハマスホイとデンマーク絵画」
7.太田記念美術館 「肉筆浮世絵名品展-歌麿、北斎、応為(応為『吉原格子先之図』)」
8.ルーヴル美術館 「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」(パリ)
9.オルセー美術館(パリ)
10.オランジュリー美術館(パリ)
11.テートブリテン(ロンドン)
12.ナショナルギャラリー(ロンドン) 
13.V&A 「Tim Walker Wonderful Things」(ロンドン)
14.Bunkamura Gallery 「金子國義 聖者の作法」
15.Kaikai Kiki Gallery  「ob 螺旋と春」展
16.東京都現代美術館 「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」
17.練馬区立美術館 「ショパン-200年の肖像」展
18.国立西洋美術館 「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」
19.三菱一号館美術館 「画家が見たこども展」
20.東京国立博物館 尾形光琳『風神雷神図屏風』
21.森美術館 「STARS展」
22.国立新美術館 「古典×現代2020」
23.太田記念美術館 「月岡芳年 血と妖艶」展 〈前期〉
24.東京都美術館 「The UKIYO-E 2020」〈 前期/後期〉
25.ポーラ美術館 「モネとマティス-もう一つの楽園-」
26.東京国立近代美術館 「ピーター・ドイグ展」
27.東京国立博物館  葛飾応為『月下砧打美人図』
28.大徳寺真珠庵 『百鬼夜行絵巻』〈前期〉
29.京都市京セラ美術館 「杉本博司 瑠璃の浄土」
30.東京国立博物館 「桃山-天下人の100年」〈前期/後期〉
31.国立西洋美術館 常設展
32.山種美術館 「竹内栖鳳《班猫》とアニマルパラダイス」
33.三菱一号館美術館 「1894 Visions ルドン、ロートレック」
34.東京都庭園美術館 「生命の庭」
35.原美術館 「光―呼吸 時をすくう5人」
36.東京国立博物館 酒井抱一『夏秋草図屏風』
37.アーティゾン美術館 「琳派と印象派 東西都市文化が生んだ美術」
38.東京都現代美術館 「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」
39.国立国際美術館 「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」
40.あべのハルカス美術館 「三沢厚彦 ANIMALS IN ABENO HARUKAS」


この中で遠藤的2020年のベスト展覧会はロンドンのV&Aで開催されたTim Walker先生の「Wonderful Things」です!!!!!

国外かい!!って感じですが、もうほんと長年の夢だったんです。念願だったんです。学生時代から何度もティムウォーカー先生の個展に行くタイミングを逃し続け、ついに今年最高の展示に伺うことができました。もう何度思い出しても泣ける。最高of最高体験でした。

展示の見せ方としても他のどの展示よりも圧倒的だったし、夢と愛とファンタジーに溢れてて、展示を見ている間ずっと魔法にかかったような気持ちになったのもこの展示だけだったと思います。仕事柄、空間まるごとで魅せるということにとても興味がある私としては学びがありすぎるほどの展示空間だったし、V&Aの至宝たちからインスパイアされた写真作品を制作し、その至宝と同じ空間に写真を展示し、また空間ごと異世界に誘わせるという美術館とのコラボレーションから生まれた展示というそのコンセプト自体が、今最も必要な視点なのではないかと、大変感激した展示でした。

行きたいと思っててもいろんな言い訳をして行かなかいという選択肢を取ってしまってた過去の自分を改めて、これからは推しのために海外に飛ぶことも厭わない、むしろガンガン推しに会いにいくぞ!と意気込むきっかけにもなりました。
まだしばらく海外にいくこともままならないような状況ですが、少しずつ海外に行けるようになった暁にはすぐに行けるように今は「この国の美術館に行ってこの作品を見たいリスト」を鋭意作成中です♡いつか見たい作品、まだ見たことのない美しいものが世界中にたくさんあるの、希望でしかないし、いつかそれが見れる日が来るのが本当に楽しみです♡
V&A「Wonderful Things」展の感想はこちら

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というわけで、2020年を振り返ってみましたが、芸術作品から放たれる本物の力というものに救われた1年でした。来年もどんな作品が観れるのか楽しみ!

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