これからの中小企業の経営課題を考える
コロナ禍の環境が続く中、改めて今後も含めた中小企業(経営者)の課題を整理し、どのような解決策があるのかを、様々な有識者や主要機関からのレポートを元に考えてみました。
|前置き
まず、ご存知のように我が国の企業の99%以上が「中小企業」で、8割以上が「小規模事業者」で、雇用者数でも全体の70%、付加価値額でも全体の53%と半分以上のインパクトがあります。
そのため、中小企業の課題解決を考えることは、今更当たり前感はあるもののやはり非常に重要なことだと感じています。
これは、近年の国の政策を見ても感じられるのではないでしょうか。
|本題
それでは、その中小企業の経営課題と今後の解決策について整理していきます。
中小企業委員会の「中小企業の経営課題に関するアンケート」の 調査結果によると、以下のような回答結果になっています。
▶︎経営で重視する点(アンケート結果)
3割以上の中で、コロナによる近々の資金需要を除いては、「人材開発・人材育成」、「新サービス開発・新たな販売チャネルの開拓」、「既存事業の改良、販売促進」、「デジタル化、業務プロセス改善」が上位を占めています。
以下、それぞれについて考えていきます。
▶︎人材領域
日本はそもそも人口減少が進んでいますが、みずほ総合研究所の資料では、2065年には労働人口は3,946万人となり、2016年の比較して4割ほど減少するとの見通しがあります。
特に中小企業、地方の企業に関しては、大手企業、首都圏の企業に比べても人手不足の状態は常にあります。
2020年版中小企業白書・小規模企業白書によると、中小企業・小規模事業者の人手不足感は、コロナにより足元では改善が見られるものの、依然として強いとしており、大卒予定者の求人倍率は、大企業では0.9倍、中小企業では8.6倍。
この辺り、普段の新聞やメディアでは大手企業を含めたすべての企業の平均的な数値が出されていると思いますが、資本力、事業内容、地域、職種によっても数値は全く異なる者になるはずです。
首都圏の便利な生活環境や給料などの賃金格差、昨今ではリモートワークなどの働き方改革に関しても、やはり大手を中心に整備がされている現状もあり、従業者規模30人未満の事業所の雇用者数は減少傾向で推移する一方で、従業者規模100人以上の事業所の雇用者数は増加傾向で推移するという形でその差は開く一方の流れが起きています。
長年、終身雇用が当たり前とされてきた日本においても、いよいよその雇用形態が変化しつつあり、トヨタ自動車豊田章男社長や経団連の中西宏明会長らは、いわゆる「日本型雇用システム」を見直しを議論すべきという考えを強調しています。
リーマンショックや今回のコロナ大恐慌などの経済危機が8~10年スパンで今後も起きる可能性や、
昨今の働き方や価値観の多様化からフリーランスなど個人で独立する方や転職に関してもキャリアSNSなどのサービスなどで転職も気軽にできる環境で人材流動性が高まっているなか、多くの企業では人を固定して抱えるという「雇用」に対するリスクを多少なりとも感じているのではないでしょうか。
それに対する代替手法としては、これまでは同県内(エリア)での派遣やパートアルバイトくらいだったと思いますが、デジタル化の進展、働き方の多様化(副業時代、フリーランス人材増など)により、人材(労働力)や知恵(知的生産力)などの人的資本を日本全国、世界中から調達できる環境が整いつつあります。
▶︎販売(営業)領域
BtoB、BtoCなどによっても課題は異なると思いますが、BtoBの場合においても販売先が主に大手企業か中小企業なのかによっても課題、解決手法が変わってくるでしょう。
販売先で整理した場合に、販売先が大手企業の場合、これまでの経験からその課題のほとんどがターゲット企業のキーマンに接触できていないことが原因です。
販売先が中小企業の場合であれば、基本的に意思決定権者は社長であり、社長に接触をすることは数万人規模の大手企業の中から数名のキーマンを探して接触するよりは難易度は低いです。
最近はそれらの課題を解決する手法として、顧問人材の人脈を活用したり、世の中全ての営業パーソンを自社の代理店のような形で活用してアポ取得できるようなサービスも展開されています。
BtoC企業の場合には、魅力的な商品作りやサービス提供も重要だとは思いますが、個人的には「売り方や伝え方」「売る手段の選択」がそれ以上に重要なのではないかと感じています。
特にBtoCの企業であれば、今の時代、ECは必須の取り組みだと感じています。コロナをきっかけにこれまで以上のスピード感で広がり、今後もその市場は右肩上がりに拡大していくことが予想されています。
コロナのような出来事が再度起きない保証もないなか、今後間違いなく増えていくオンライン上での購買活動に対して何も手を打たないということは考えにくいのではないでしょうか。
国内だけでなく、今や中小企業でもグローバル展開が比較的容易にできる時代になっていると感じます。実際に越境ECであれば大きな設備投資や現地法人などを構えることなく取り組みが可能だと思います。
これまでは商社や小売店、外食企業などに卸売りが中心だったメーカーもより消費者に近い商流で事業を展開することで、反応をダイレクトに、かつスピーディーに受け取ることができ、そこで得られたデータをもとにより消費者に求められている新たな消費や既存商品の改良が進むのではないでしょうか。
中小企業庁の資料によると、以下のような事がわかり、「利益」という観点でもECを活用することがポイントになっています。
●地域を問わず、「コスト削減」を重視した事業者は、過去5年間の利益が「減少傾向」と回答した割合が高い。「販売数量の増加」、「販売単価の上昇」が利益確保の鍵。
●その際、EC(インターネット上での販売取引)の活用している事業者は、地域を問わず、利益が「増加傾向」と回答した割合が高い。
▶︎デジタル化
先程の資料でもありました、「コスト削減」を重視する企業よりも「販売数量」「販売単価」の向上に力をいれた企業が最終的な結果としては利益が増加する傾向にある、というように、
短期的にはコスト削減も重要な施策だと思いますが、絞れることにも限界があるため、単に目につく費用を削減するという形ではなく、生産性を高める事で、コストを削減しつつ売上向上にも繋がる取り組みが重要なのではないでしょうか。
IT活用、デジタル化が叫ばれるようになり、「生産性」というワードが飛び交うことも昨今、非常に多くなってきたと感じます。
この式から考えた場合に、より少ないinputでより多くのoutputを生み出せば生産性は高まることになるかと思います。
outputについては、先程の販売領域での内容で多少は触れられたかと思いますので、ここではinputについて整理してみます。
これまでの日本、特に1985年〜1995年あたりまではいわゆる労働人口(15〜64歳)が右肩上がりで伸びていましたが、以降急激に減少に転じています。
それを補うべく、つい最近までは労働時間でinput量を増やす事でoutput量を増やしていたと思います。「日本人は働きすぎ」という言葉を何度耳にしたことでしょうか。
ただ、近年の過労死の問題や企業コンプライアンス問題なども起きる中で、いわゆる「働き方改革」で、働く時間や仕事の仕方などが見直されてきたのがつい最近のことだと思います。
そこでコロナをきっかけに、いよいよ「IT化」「デジタル化」「DX化」というような言葉が増え、各種メディアでも目にしない日はない程です。
労働人口(労働者)が増えない、かつ働く時間(労働時間)も増やせない(むしろ減らす方向)状況において、生産性を高めるためには、以下2つが重要ではないでしょうか。
①人がより”効率的に”outputに直結する仕事に集中する
②より付加価値の低い仕事は人以外で代替する
そのための「デジタル化」だと個人的には認識しています。
①に関しては、例えばリモートワークや各種便利ツールなどで交通費(コスト)や時間をこれまで以上に効率的に使えるようになったと思います。
②に関しては、「RPA」に代表されるような業務自動化の広がりもあり、いわゆる”作業”の類はソフトウェアなどで代替されつつあります。
コロナをきかっけに、なかば強制的にオンライン環境下での働き方を余儀なくされた感じはありますが、この流れは不可逆的だと思いますので、コロナが終わればまた元の働き方でなんとかするというのではなく、良い機会ととらえ、うまく活用していくことで変化に対応した筋肉質な企業が多くなれば日本もまだまだ活躍できると思います。
少し長くなりましたが、今回は以上です!
次回以降は、どの企業でも汎用的に考えられるような「生産性」や「人材」などを深掘りする形で書いていけたらと思います。
引き続きまたよろしくお願い致します。
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