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「私」の謎を解明しよう【「スピリチュアルズ」橘玲】

「自分とはなんぞや?」

多くの人が、抱く疑問ではないだろうか。今回読んだ本は、橘玲作『スピリチュアルズ「わたし」の謎』

「スピリチュアル」って最近耳にするけれど、一体なんのこと?

「スピリチュアル」というのは、心理学でいう「無意識」に「魂」を重ね合わせた言葉だ。…「わたし」のほとんどすべてが無意識で、意識はその一部でしかない…「わたし」というのは、突き詰めれば「無意識/魂」の傾向のことなのだ
わたしたちは一人ひとり異なる複雑で陰影に富む性格(パーソナリティ)をもっているが、それはいくつかの基本的な要素に還元できることもわかってきた。

パーソナリティ心理学では、性格の基本的な5つの要素をまとめて、「ビッグファイブ」というそう。本書ではそれに3つ加え、8要素の「ビッグエイト」としている。

ふむふむ、8要素に自分を分解していくと複雑に感じた自分の性格も、実は8つの無意識に操られていたということがわかるのか……。

初対面で注目する「ビッグエイト」

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①外向的/内向的
②楽観的/悲観的
③同調性
④共感力
⑤堅実性
⑥経験への解放性
⑦知能
⑧外見

人間は初対面で、これら以外のことを気にすることはないそう。う〜ん、確かに、どれも気にしている。そして、自分とどのくらい合うだろうと、総合的に判断している。

激辛ラーメンか図書館か

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外向的/内向的の章の中に、このような見出しがあった。

「激辛ラーメンか図書館か」

お昼に辛ラーメンを食べた後、家でゆっくりとこの本を楽しんでいた私は、ギョッとなった。「え、私のこと?!」

どうやらそうではなく(当たり前)、激辛ラーメンが外向的、図書館が内向的のモデルとしてあげられていた。

こういうことだ。生き物は「快/不快」「覚醒/鎮静」という、「感じ」を持つように進化。その結果、快適に感じるところ(最適覚醒度)に対し、個体が生まれつきもつ初期値で、外向的か内向的かが決まるという。

刺激に鈍感→覚醒度をあげるたい→強い刺激を求める→外向的
刺激に敏感→覚醒度を下げたい→強い刺激を避ける→内向的

つまり、強刺激が激辛ラーメンで、弱刺激が図書館。

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他に強刺激の例として、バンジージャンプやクラブがあげられていた。私は、絶叫系のアトラクションも、クラブみたいに音が大きいところも苦手。

でも、激辛ラーメンはしょっちゅう食べる。

図書館は静かで落ち着くから大好きだし、ひとりの時間がないと生きていけない。でも、みんなと楽しく過ごすのも大好き。そんな私の動物占いは、「孤独を愛するのに群れなきゃ生きられない」ヒツジです。

この章は「平均より少し外向的だったり、少し内向的だったりするくらいがちょうどいいのかもしれない」と締めくくられていた。

私は、味覚は平均より外向的みたいだけど、基本は内向的よりかな?

「自己家畜化」した日本人?

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私は、東アジアの稲作型ムラ社会では人口が稠密(ちょうみつ)になり、複雑な人間関係が強い淘汰圧になって、それに適したパーソナリティが「進化(遺伝と文化の共進化)」したと考えている。

※稠密…一つのところに多く集まっていること。こみあっていること。また、そのさま。(goo国語辞書より引用)

日本列島は、狭い平地に多くの人間が暮らすようになってことで、ムラ社会が極端なまでに進み、共同体の「和」を乱す者が嫌われ排除されるようになった。日本人は世界で最も「自己家畜化」された民族なのだ。

確かに、「和を以って貴しとなす」が美徳な我ら。まさか「自己家畜化」という言葉が、あるなんて!!

日本人の特性と考えられる3つのパーソナリティ、すなわち「内向性」「高い神経症傾向」「低い経験への開放性」から日本社会を説明できるのではないか。残酷なムラ社会を生き延びるために、日本人は他者のささいな表情や言動に敏感に反応し、楽観よりも悲観的に考え、冒険をせずにリスクを避けるように「進化」して、それが保守的で権威主義的な社会を生み出した。

内向性をはじめとする、3つのパーソナリティは歴史的に進化し、今の私たちの無意識に根付いてしまったらしい。

人間にとって、土地がいかに大切なものかはわかる。いまだに国土をめぐって、あらゆるところで争っているのだし。

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確かに、日本は山地がかなりの面積を占めているから、貴重な平地をみんなで分けないといけない。だから「村八分」的なものが、生まれたんだろうなぁ。(きっと橘さんが言っているのは、もっと昔の時代の話だとは思いますが)

「他者のささいな表情や言動に敏感に反応」するのがご先祖様たちの進化の結果と考えると、少し私はほっとした。

よく外国の方が、「日本人の愛想笑いが理解できない」と言う。狭い土地で生き抜くためには、不気味とも見える愛想笑いもご先祖様たちに必要だったのだろう。互いにさりげなく伺い合いながら。

遺伝なら、仕方がない。むしろ、それらパーソナリティを日本の良さとしてもいいかもしれない。

それにしても、自己家畜化ってすごい言葉。インパクトが、強すぎる。

でも要素を理解できると、自分を素直に受け入れやすくなると思う。単に自己理解をしよう、と言われても、なかなか自分のことってわからない。だから、本を読みながら自分をじっくりと見つめ直すのが、大切なんだろうと思った。

*  *  *

本書には、あらゆる研究や実験結果が、たっぷり紹介されています。

今回紹介したのは、ほんとーーーに一部ですので、ぜひ読んでみてください。

私はこれからも外向的な舌と、すこし内向的な面を合わせもって、過ごしていこうと思います。


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