見出し画像

おかしい、類人猿での実験では成功したんだ。なぜいつまでたっても取り出せない。


「博士、今回は本当に助かったよ。」
「まあ大したことじゃないさ。ちょっとばかり掘削機のデザインをいじっただけだからな。」
「また謙遜を笑。博士のおかげで、これまでは手を付けられなかった鉱山からも、ケイ石を取り出せるようになるんだ。」

はっきり言って、私にはこいつらの言う事が全く理解できない。なぜ、鉱物の採集効率を上げることを、そんなにも難しいことと考えるのだろうか。
幼い頃は、私より賢い子などいくらでもいたはずだが。


「博士、今回は本当に助かりました!」
「まあ大したことじゃないさ。既に先人たちが研究していたクラウドの仕組みを、ちょっとばかりいじっただけだからな。」
「博士って、見た目だけじゃなくて性格も良いんですね。すっごく謙虚でいらして笑。今回のクラウド実装のおかげで、多くのユーザーが、無くしたスマホを取ってこれるようになるんですよ。」

やっぱり私には、こいつらの言う事は分からない。なぜ、基礎研究を活用して社会に浸透させることを、そんなに難しいことだと考えるのだろうか。
それに、私の雌としての魅力は、謙虚さと並べて語られても良いのだろうか。

「博士、今回はもうすこし時間がかかりそですか?」
「ああ、もう少しだけ待ってくれ。」

おかしい、類人猿での実験では成功したんだ。なぜいつまでたっても取り出せない。

「僕なんかじゃどうせ分からないので機械について質問はしませんが、博士の発明をもってしても取り出せないものなんてあるんですね。」
「悔しいが、現実はそうみたいだ。」

別室にいる治験の協力者が合図を出さないということは、取り出せていないということだ。食事を提供する際に様子を見たが、機械はずっと稼働している。
やはり、私もまだまだ未熟だな。だが、もう数日は結果を待つか。


協力者と機械がいる別室では、冴えない小太りの男が、美少女アンドロイドの膝枕で耳かきをされていた。とても幸せそうな顔をしている。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?