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進化する私(短編小説・詩)

 コスメを変えた。
 お気に入りのブランドで、見た目もおしゃれ。
 毎朝のメイクはもちろん、洗顔後の基礎も大事にしている。
 基礎化粧品を使ったあと、鏡の前で、笑顔の練習をしたり、変顔をしたりする。
自分に向き合う時間ができた。
 正直楽しい。
 自分って、こんな顔もできるんだって思った。
 自分は物心ついたときから、無表情な人間なんだと思っていたから。

 ある日、かかりつけの医院の先生に、昔は強張った笑顔だったけれど、最近はとても良くなってきたと言われた。
 その時は気が付かなかったけれど、以前から鏡の前で作る自分の笑顔に違和感というか、不自然さを感じていたが、今はそんなことはない。

 お付き合いしている彼に言ったことがある。
 「私って表情が無いから、みんな私のことをわかりづらい人だと思ってると思う」と。
 しかし、彼は言った。
 「君はすごくわかりやすいと思うよ」
 彼はその当時から、私よりも私のことを見ていたのだ。

 鏡が嫌いだった私が、自分が嫌いだった私が、化粧品を変えただけで鏡を見るのが楽しくなり、やっと自分自身を見つめるためのスタートラインに立ったのだと思い知らされた。
 それは、実は化粧品を変えたからだけではなく、周囲の人々の言葉にもかなり影響されている。

 これから新しい自分と出会うと思うと、もともと自分の中にいたものを掘り起こす事ができると思うと、なんだか更にわくわくが止まらなくなる。

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