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ITメガベンチャーでロジカルゴリラに囲まれて、絶望した話

はじめまして!わたなべあやかと申します。

私は日々、仕事の中でコーチングスキルを役立てたい方に向けて、
コーチングを教えたり、コーチングセッションを行ったりしています。

普段はITメガベンチャーでグローバル人事をやっていて、それが本業なのですが、
社内副業や、フリーランサーとして、コーチング関連の取り組みもしています。

そんな私が全身全霊を注いで取り組んでいるのが、

「自分のことも仲間のことも諦めない」文化づくりです。


皆さんはどうでしょうか?自分の限界を定義したことはありますか?
もしくは、仕事で周囲にいる人の限界を勝手に想像したことはありますか?

私は若かりし頃そういうことを何気なく思う人間で、
一緒に仕事しているメンバーに対して、

「あ、この人はマネージャーになれそうな人」

「この人は私よりもすごい人」

「この人アシスタントから中々抜け出せないんじゃないかな」

とか、失礼なことも含めて(もちろん口には出していませんけれども)勝手に定義しているちょっと嫌なヤツでした。

そしてこの考え方のクセは、
次第に自分自身を苦しめるものになり、ある時自分の存在価値を見失い、
結果、絶望するに至りました。

それはひとえに私がITメガベンチャーで超絶仕事ができる人たちに囲まれたゆえの苦悩だったわけなのですが、

このnoteではその過程を少しつづっていきたいと思います。

▶︎ このnoteはこんな人の役のお役に立てるかも
・自分の限界を感じて、しんどい方
・周囲のメンバーに物怖じしてしまう方
・自信を失ってしまいそうな方

ITメガベンチャーで”仕事が出来るやつ”になりたかった

20代前半の頃、現職である株式会社ディー・エヌ・エーに転職しました。

当時、モバゲータウンのCMがゴールデンタイムに全国区で流れていたりした頃のことです。

小さなアパレル企業でキャリアをスタートさせていた自分は「こんな大きな会社で働けるなんて!」と、期待に胸を膨らませていました。

若気の至りあるある「自分は仕事が出来るやつだ」病に当時しっかりおかされていた私は
「この大きい会社でも仕事バリバリやって注目される存在になるんだ!」と鼻息荒く入社しました。

いざ扉を開けてみると、驚くほどロジカルな人がいっぱいいたりとか、驚くほど事業のスピードが速いとか、仕事の難しさに手こずることが度々ありました。

入社から1ヶ月が経った頃のことです。

会社からの帰り道、夜空に輝く月を眺めながら「私はついていけないかもしれない…。」とため息をついたことを今でも良く覚えています。

しかし全体的にはそこそこ順調で、「サバイバル」の5文字を脳裏に刻み必死に食らいついていたある日、マネージャーにならないかと勧めて頂き、それを受けることになりました。

当時5名しかいなかったその部署を最終的に80名を超える大所帯に成長させていく中で、
私は当初胸にいただいていた「仕事が出来るやつ」へのステップを順調に踏み出しているように感じて、内心ひそかに「しめしめ」とほくそ笑んでいました。

周囲についていけない自分を感じるようになる

ディー・エヌ・エーという会社はその頃の私にとって、とても心地よい環境でした。

周囲の人たちはみんな真面目で熱心で、時にめんどくさい程にロジカルだったり、会社や組織の成果や成長にスペシャルマッチョだったり、
ロジカルゴリラすぎて困ることもあったけれど、そんなゴリラ仲間達と一緒に仕事をすることはめちゃくちゃ楽しいものでした。

しんどいなと思った時も、隣で前を向いて頑張っている同僚ゴリラを見ては、私も胸のドラムをドカドカと叩いて自身を奮い立たせていました。

そうして数年経っていく中で、いつしか自分の限界を見るようになったのです。
私が見た限界は、事業リーダーになれそうもない自分でした。

こんな構造のゲームがヒットするんじゃないか。
今業界の最前線ではこうで、他の国ではこんなものがあって、これとこれをこう掛けあわせればインパクトのある事業になるんじゃないか。

そんなことを、周りのメンバーは日々熱心に話し合っていました。

そんなメンバー達との温度差を感じていたのです。

私は残念ながら、そういった事業関連のことに一切興味をもてませんでした。

「このままじゃ周りに追いていかれる…!」と焦った私は、必死で情報収集するようになりました。

当時使っていたスマホには様々な国の話題のアプリが大量にインストールされていて、いついかなる時もスマホをいじっていました。

お風呂の中でも、トイレへいく時も、どんな時もスマホと一緒でした。
しかし、どんなに時を重ねてもスマホと私の間に恋は生まれませんでした。

単純につまらなかったんです。

話題のサービスを使ったり、情報サイトで最新情報を仕入れたり、そんなことをするよりも、
漫画やゲームが好きなオタクだった私には、ゲームの世界観やキャラクターを考える方が何倍も面白かったんです。

でもそれだと、自分がなりたかった
「仕事ができるやつ」にはなれそうもありませんでした。

新規サービス企画での挫折

そんな感じで若干しょぼくれ気味になっていたある日「新しいスマホアプリの企画をやってみないか」と声をかけて頂きました。

サービスアプリの企画でしたが、そのアプリにオリジナルキャラクターを作って登場させてやろうと考えた私は、食い気味でその提案を受けました。

しかし、最初に提出した企画の評価はひどいものでした。

既存のサービスを真似てちょっと変えただけの代物を提出した私に「何の為のサービスなのか」、「ターゲットユーザーにとって本当に必要なサービスがこれなのか」と他のメンバーから厳しく問われ何も答えることができませんでした。

これじゃダメだ!と心機一転腹をくくって、それこそ胸のドラムを叩いて企画に取り組みました。

社内の偉人達がこれまでに作ってきた素晴らしい企画書達を読み漁り、可能な限りそのフォーマットを踏襲し、メンバーに説明する為に必要であれば、その根拠となるデータを探しに遠くの図書館へ通ったり、街頭に何日も立ってターゲットインタビューしたりもしました。

当初企画の期限だった日を
1ヶ月すぎ、2ヶ月すぎ、3ヶ月すぎ。

しかし、一向に企画が通ることはありませんでした。

企画会議では私の作った企画に様々な質問が浴びせられました。
メンバー達の指摘は鋭く、満足に答えられないことはしょっちゅうでした
私がそんな様子だったからでしょう。
当時のプロデューサーが首を縦に振ってくれることなどありませんでした。

家に帰っては泣いて、企画を修正するためまた考えて調べてアップデートして。

その内に私は、企画を実現させる為ではなく、ただプロデューサーに許可をもらうためだけに仕事をするようになっていました。

「これを作りたい!」という熱い思いはもうどこにもありませんでした。

というか、その頃には薄々気づいていました。

あぁ、自分には作りたいサービスがないんだ、と。

絶望的にビジネスに興味がありませんでした。作りたいサービスなんてありませんでした。

自分の中をどれだけ探しても、そこに湧き出てくるものなどありません。

最初から作りたいのはサービスではなくキャラクターだったんです。
サービスの種なんてどこにも見当たりませんでした。

それでも企画を降りたいと自分から言うことは出来ず、誰かに「やめよう」と言ってもらうのを待っていました。

承認を得るための企画を必死で考えながら、心の底では「通らないでくれ、実現しないでくれ…!」と天に願っていました。

完全な矛盾です。

それでも「あいつは逃げ出したやつだ」とだけは言われたくなかった。

死ぬほど薄っぺらいプライドでした。

そうして数ヶ月が経って、何十回目かの企画会議で当時の部長がついに言ってくれました。

「やめよう」と。

長い長い暗闇から解放された気分でした。

しかし、その解放された先にあったのは、未来への絶望だけだったのです。

限界を受け入れることへの葛藤

この件があってから、私は会社にいることを心苦しく感じるようになりました。
事業リーダーがたくさんいる会社で、アプリの企画すら満足にできない自分。
何の価値もない存在だと感じていました。

所詮、自分は誰かが引いてくれたレールの上で、大きな成果なく与えられた役割をこなすだけの存在なんだろう。

ロジカルゴリラがごろごろといる中で、自分はさしずめ名も無い鹿のような気分でした。

鹿を目当てに動物園に来る人はそんなに多くはないでしょう。

そこにいるけど、目立たない。印象にない。

同じような個体がいっぱいいるから、一匹一匹の見分けもつかない。

そんな鹿のような存在が私という人間だと思いました。
(鹿好きの方にはゴメンなさい…。)

「仕事が出来るやつ」になりたい自分にとっては、それを受け入れるのはとても苦しいことでした。

ただ、その頃ちょうど現在の旦那さんと結婚の話がでていた時で「人生そんなものなのかな」と考えるようにしてました。
これから結婚して、子供が生まれて。
そうすればバリバリ働けなくなるし「出来るやつになるんだ!」とか言ってる場合じゃないんだろう。

仕事を最優先にできないのであれば、簡単に替えの利く鹿みたいな存在くらいがちょうどいいんだ。

そう言い聞かせるようにしていました。
(再び鹿好きの方には本当にゴメンなさい…。)

しかしそれと同時に、それを嫌がるように心臓がミシミシ音を立てている気もしていました。

コーチングとの出会い

そんなモヤモヤを抱えていた当時、誰かにキャリアについて相談したくて、ネットで見つけたキャリアカウンセリングサービスを利用しました。

どこに向かって良いかわからずモヤモヤしている。という相談をしたところ、担当してくださったキャリアコンサルタントの方にこんな質問をされました。

「あなたの興味を教えてください」と。

どんな些細なことでも良い。今までのキャリアと関わりがなくてもいい。
とにかくやりたいなと思うことを何でもいいから教えて欲しいとのことでした。

その質問に、おそるおそる口にしたのは「マネジメントがしたい」という言葉でした。

その答えを口に出しづらかったのは、当時会社のマネージャーの多くは事業推進型で、人材育成よりも事業リードに長けた人がほとんどだと思っていたからです。
事業リードの能力が絶望的にない自分には、絶対にマネージャーになることは無理だと思っていました。

しかし、人のマネジメントに関わりたかったのです。

以前マネージャーをしていた時、
メンバーそれぞれの個性や、得意・不得意を考えて、どんなことを任せようかと思案し、それを一人一人と実現していくのが本当に好きでした。

当時から「人にはその人に合った活躍の場があって、育成アプローチも人によって異なる」と信じていたんです。

しかし、周囲を見回すとそうでないマネージャーも多くいたように思いました。
自分がたどり着いた正解を、メンバーにそのままやらせようとする。
その姿を見ては、なぜその人の個性に配慮しようとしないのかと首を傾げていました。

そして、自分の抱えていたモヤモヤがここから生まれていることに気づいたんです。
人のマネジメントに関わりたい一方で「自分はマネージャーになれる人間ではない」と定義することが、とにかく苦しかったんだろうと思います。

そして、そんな私にキャリアコンサルタントの方が教えてくれたのが「コーチング」でした。

「あなたがやりたいことにすごく合っていると思う」と勧めてくださったんです。

コーチングとは何ぞや?という方は以下ご参照いただけると嬉しいです。

カウンセリングが終わって、まずコーチングについての本を読むことにしました。

その本はただひたすら「面白い」という感想に尽きました。
私がカウンセリングの中で話していた理想が、How toとなって落とし込まれていました。

そしてその後も、コーチングに関連した本を何冊も何冊も読み続けました。コーチングだけでなく、チームビルディングやファシリテーション、組織についての本もかたっぱしから読み漁りました。

そのどれもが刺激的で面白かったんです。

ロジカルゴリラに囲まれて育った私ですから、人を説得したり、動かしたりするには論理や現実的なプラン、そして実績が必須だと思っていました。

しかし、様々な本に書かれていたのはそれとは違うアプローチで、心理的に人に作用することで、その人のアイデアを広げたり、大胆なアプローチを促したり、そうして人やチームの可能性を広げていく方法でした。

強烈にこの分野に惹かれている自分自身を感じていました。

この道のプロになろう。

そう思いました。

側にいる人が当たり前に手を差し伸べられる環境を

そこからは資格を取ったり、様々なコミュニティに顔を出してこの分野で活躍する人たちと関わったりと学びを深めていきました。
そしてついには副業としてコーチングセッションを行うようにもなったのです。

そんな中で私は改めて、人に心理的に作用するコーチング等の取り組みが、人やチームの助けになることを確信するようになっていました。

いくら事業リーダーがたくさんいて、ロジカルゴリラさんたちがたくさんいる会社でも、私のように鹿の気持ちで苦しんでいる人は他にもいるかもしれない。

というか、そのゴリラ事業リーダーさんたちだって、もしかすると私なんか以上に心理的に苦しくて立ち上がれない時があるのかもしれない。

そんな時、近くにいる人が当たり前に手を差し伸べられる環境になればいいのに。

そんなことを願うようになりました。

つらくて苦しくなって初めて人に相談するんじゃなくて、
つらくなる前に苦しくなる前に

「大丈夫?」

「大丈夫だよ。」

誰かがそう言ってくれる環境を作ろう。

そうすれば多くの人が立ち止まらずに、自分自身に誇りをもってバリバリ活躍することにつながっていく。

そしてそれは必ず組織の成果や成長に繋がる。

そう信じるようになりました。


ゴリラさんたちに向けてのコーチング講義

コーチングの活動を続ける中で、ある日「社内のマネージャーに向けてコーチングについて話をしてくれないか」というお話を頂きました。

その提案はとてつもなく嬉しかったものの、どこまでこの分野の話がロジカルゴリラさんたちに受け入れられるだろうか、必要性を感じてもらえるだろうかと不安でした。

しかし、そこで行った60分のコーチング講義には80名を超える社内のマネージャー達が参加してくださり、結果(手前味噌ですが)大盛況に終わりました。

参加者アンケートではたくさんのお褒めの言葉を頂き、コーチングを受けたい・学びたいと個別に声をかけてくださる人たちもいて「自分が思った以上に社内にはこの分野に興味をもってくれる人がいるんだ!」とワクワクしました。

そして社内での活動は続き、
今では実践スキルを身に付けたい人向けのコーチング連続講座や、自己他己理解を深めるワークショップを実施したり、同じような思想をもったメンバーが集まってコミュニティを作って活動しています。


取り戻した鹿としての自尊心

こうして活動を進める中で、こじらせまくっていた鹿の自尊心は元の姿を取り戻していました。

今でも事業リーダーには全然なれないと思っている。というか、そこはもうすっかり諦めたのですが、それ以上に自分が専門にする分野を心に決めているから、それで頑張ればいいと思えるようになりました。

成果が出ていない時でも、思うように上手くいかない時にも、
前を向いて日々頑張っているだけの小さな小さな自分自身をちゃんと評価できるようになりました。

以前は社内で評価されている人たち全員が怖くて、必要以上に縮こまっていましたが「私にも負けないものがあるんだぞ」と胸を張っていられるようになりました。

さしずめ今はなんでしょうか?

鹿は鹿かもしれないけど「もののけ姫」のシシガミ様くらいのイメージかな。
(あれは鹿っぽいだけで鹿ではないけど)

またコンプレックスをこじらせて、デイダラボッチにならないよう。せいぜい気をつけていきたいと思います。


お互いに助け合う習慣を日常に取り入れて欲しい

こうして私は今「自分のことも仲間のことも諦めない」文化作りに励んでいます。

コーチングとかカウンセリングとか、心理学とか。
こういったものはまだ日本ではあまり当たり前じゃなくて、ちょっと仰々しいものとして扱われているように思います。

起業したいと思った時に。

鬱になった時に。

そういう人生の一大事で使うものだと思われているかもしれません。

けれどこれらはもっと身近に使えるものです。そして必要なものです。

私のような経験をした方はきっと世の中にたくさんいらっしゃるでしょうし「俺のはこんなもんじゃないぞ!」ともっともっとつらい経験をされてきた方もいらっしゃるでしょう。

そんな方達にはぜひ、日々周囲のメンバーに対して、そして自分自身に対してこういったものを取り入れて頂きたいなと思います。

このnoteでは、そうやって身近に取り入れられるコーチングや心理学のエッセンス・情報等を発信していきます。

またよろしければ読みに来てくださるとうれしいです。

それでは、また他の記事でお会いしましょう。
ここまでお読み頂き、ありがとうございました!



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