マガジンのカバー画像

10
自分が書いた詩をまとめていきます。
運営しているクリエイター

2021年6月の記事一覧

海岸線の先に

海岸線の先に

言葉の切れ端を集めながら、海岸線を歩く
貝殻の裏に
テトラポッドの先端に
波打ち際の湿った土の上に
見つけては つまみ取る

手のひらに一つ一つ重ねながら
そして
次第に両手で抱えるほどのそれは
可笑しいくらいに不揃いだった

アスファルトの上に広げてみると
なんだ、阿保らしい
それらは全て私の口癖だった

けれど西陽のせいだろうか
色がやわらかに、形がかろやかに見えるのは

なんだ、阿呆らしい

もっとみる
アーケードから

アーケードから

目を細め、天を仰ぎながらアーケードを歩く
そこに広がるは破れたビニール屋根と
いつから切れたかもわからないガラスの照明の連なり
千切れた屋根にぶら下がるは
哀愁と懐古と祖母に手を引かれて連れられた日の温もりであった

肩を窄め、俯きながらアーケードを歩く
そこに広がるは幾何学にも見えうる割れたタイルの連なり
連綿と続くその溝の果てには
遥か彼方
記憶の端にコツリと落ちた駄菓子のクズが顔を覗く

もっとみる
山椒散開

山椒散開

山椒ピリリ、麻痺させて

痺れて不感にさせてみて
酸いも甘いも忘れた先に
真の快をもたらすの

山椒ピリリ、汗吹かせ
毛穴を広げ、したたらせ
頬を伝う一筋は
畜生のタトゥーと化すの

山椒ピリリ、香らせて
腐卵の街をかき消して
鼻腔の奥に突き刺す香は
都会の迷彩脱がせるの

山椒ピリリ、呼び醒ませ
虚な目の奥、火を灯せ
片目を瞑って構えたキューで
眠った何糞、散らかすの