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庖丁研ぎアトリエ@TEN BELLES BREAD パリ11区 フランスの週刊フードニュース 2022.05.03

今週のひとこと

先週は弊社の庖丁専門家マリナ・メニニが、11区のブランジュリー「TEN BELLES BREAD」にて、庖丁の研ぎ教室を開催しました。

パリに3軒を展開する「TEN BELLES」のオーナーは、イギリスのローズ・ベーカリー出身。マリナも遠い昔にイギリスの同店で働いていたことがきっかけで、長年の友人関係を築いてきたかけがえのない存在です。庖丁の研ぎは、オーナーからの職人さんたちへのプレゼントでした。手を使う仕事に慣れた職人さんたちだけあって、やはり手を使って庖丁を研ぎ澄ませる仕事に、すぐに魅了されていました。

何度もお伝えしていますが、最近の弊社(庖丁の販売と研ぎのアトリエを事業の中心にしています)にいらっしゃるお客様の面々には驚かされています。20代、30代の若手の料理人さんが多く、すでに石で庖丁を研ぐことを経験されていらっしゃるか、youtubeなどで研究されているか。弊社は40種類ほどの砥石を扱っているので、よりきちんと知りたいというモチベーション溢れる方ばかりです。

フランス人料理人によるフランス料理店のサイトでも、庖丁研ぎの写真を掲載する店をしばしば見かけようになりましたし、仏版ミシュランガイド2022年の発表で、プロモーションビデオのトップ画像の1つに、庖丁研ぎが紹介されていたのには、正直驚きました。

日本の文化やその精神性を、海外の方にどのようにしたら知っていただけるかと昔から考えていましたが、庖丁研ぎは実践していただけるだけで身近に感じていただける。石の上で研いだ庖丁で作業する心地よさ、料理の質の違いを感じてくださったら嬉しく思います。

ところで庖丁研ぎは、胡麻どうふ作りにも似ているような気がします。以前、精進料理を作られている方から、胡麻どうふは最も手間のかかる料理だと教えていただいたことがありました。胡麻が綺麗な光を帯びたペースト状になるまで擦り続けなければならない。30分はかかります。
そうした手間も、精進料理を作る3つの心得である「三心」につながるかと。

「喜心」、「老心」、「大心」。大切なのは小手先の技術ではなくて、食べていただく方、先人たち、自然の恵みに感謝をしながら、料理の準備から調理、食事、片付けまで、食にまつわる全ての行動を省みること。人としての生き方に対峙する大切な時間を過ごすこと。

大きなすり鉢も宝物。胡麻をすりながら、庖丁を研ぎながら、そんなことを振り返る時間がいただけるのではないかと思っています。



今週のトピックスは今週のひとことのあとに掲載しています。食関係のプロの方々のヒントになりそうな話題を毎週ピックアップしてお伝えしています。【A】ホテルグループCitizenMの挑戦。【B】ショコラティエVincent Guerlaisが新店レストラン経営開始。【C】MOFパティシエYann Brys、初の個人店オープン。【D】ゲンズブール生家が美術館に。

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