頑張った心に毛布をかけて

朝、喉の痛みで目が覚めた。

昨夜、クーラーを付けっぱなしにしていたからだ。何かを喋ろうとするとちくりちくりと喉に痛みが走る。口を半開きにしながらキッチンへ向かい、蛇口をひねると少し生ぬるい水が出た。冷やす時間もないので、有無を言わずに体内へ一気に流し込む。

クーラーの微々たる風が部屋の観葉植物に当たって、気持ちよさそうに揺れている。

植物とは良いものだ。初夏になるとベランダに毎年、キュウリ、トマト、ナス、ピーマン、バジル、ローズマリーを育てる。キュウリは特にある程度の高さと広さが必要なので、賃貸だけれども申し分ない広さと日当たりのおかけで、毎日涼しい朝にたっぷりと水をやればグングン育つ。出勤の準備でバタバタして水をあげ損ねた日には、少しの潤いも感じさせないくらい首を折って下を向いている。人間の「忙しさ」を優先しては、植物の世話は厳しいと思う。「人間たちは忙しいから今日は水やりいらないよ」なんて、植物が察して空気を読むことはないし、子供のように素直で、自我すら感じられる。

少し背丈が伸びた部屋の緑に水やりをした後に、朝日がキッチンを優しく包み込んだ。シン...とした朝の静けさに肩の力がフッと抜ける。植物に触れている時は唯一、自分と対峙することができる唯一の時間だから、できるだけ早起きをして身体にも潤いを補給してあげようと思う。

秋分の日が過ぎたあたりから、遠くで冬の気配がする。毛布の温かさが身に沁みる季節になってきた。



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