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藝泊レポートVol.4「公開討論会」

2020年12月22日、藝泊の第四弾を開催しました。

<藝泊とは>
新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される昨今、観光業そのものが大きな業態変換を迫られる中、[未知]の作り方を研究し社会実装するAX ULTRA LABが、観光の主軸の体験である宿泊体験にフォーカスし、新たな価値創出を行うプロジェクト。
プロジェクトの舞台は日本の観光の中核都市・京都。
京都芸術大学と、京都のブティックホテルHOTEL SHE, KYOTOと連携し、リサーチや提言に止まらない、「宿泊のアート体験」の社会実装を行います。AX ULTRA LABのコンセプトである産・学・藝の垣根を超え、宿泊のAX(Art Experience ™)を創出していきます。

前回は、各チームで考えたアイデアに客観的な視点を持たせること、実現の場であるHOTEL SHE, KYOTOに根ざしたものにすることの2点を目的とし、演劇形式での発表を実施。

第三者からのフィードバックをよりブラッシュアップしたアイデアは、HOTEL SHE, KYOTOの担当者にお渡しし、実現可能性も踏まえた率直なご意見をいただきました。

今回の第四弾では、ラボメンバーからのフィードバックも含めて学生さんへ共有、今後どのアイデアを元に実装させるべきかを討論し、5つだったアイデアを2~3つまで絞ることを目的としています。

前回の内容はコチラ

新型コロナウイルス感染症の拡大も踏まえ、今回は全員オンラインでの開催となりました。

■まだまだ未熟なプランに、率直なフィードバックが続く

まずは、ラボメンバーおよびHOTEL SHE, KYOTOの担当者からのフィードバックを各チームに共有。

アイデアそれぞれ着眼点の良さや、光るものはあるものの、「未知性のある体験への昇華が不十分」、「実際に誰のための企画かがあやふや」、「そもそもの実現可能性に乏しい」といった厳しい指摘もなされます。

企画を詰める中、あれもいい、これもいい….と盛り込みすぎて、重要なポイントが不明瞭になるトラップに、どのチームも同じく引っかかっていました。

下記に今回時点でのアイデアとフィードバックを、一部抜粋してご紹介します。

【物語チーム】
○プラン概要
- キャプションが付けられるホテル
  - ゲストがHOTEL SHE , KYOTOの場所やものにキャプション(説明書き)を付けて作品を作る。
  - キャプションを付ける意味:普段気にしないような細部のことを考えたり、ホテルに泊まった日の感情を表現するため。
  - キャプションの価値:様々な感情をキャプションに込めて残すことでホテルに泊まったことを思い出しやすくする。
  - 面白さ:他のゲストの作品を読むことで気づかなかったものの見方や感情、表現をなぞり、辿ることができる。

○フィードバック(一部抜粋)
- キャプションが溢れた状態の空間まで持っていければ面白そう。ただそこに来る前に、「行きたい」と思う気持ちを作れるだろうか?来る前に行きたいと思えるようなデザインが必要。
- ホテルに来てからも宿泊者が手を動かしてやることがとても多いので、実際にこれだけのことをやるモチベーションを作れるかどうかの設計が必要
- 美大生ぐらいの書いたり、作ったりを楽しめる人はやってくれそう。でもそうでない一般の人はやりたいと思えるか。誰をターゲットにするかを具体的にイメージして考えると良いと思う。
- 自由にホテル内にある物品や景色に解釈をつけていく=「解釈」を共有するというアイディアはユニーク
- このフレームの上に、ホテルや部屋に何を展示し、置くかというアイディアが重要になる
- お客さんにこの魅力をどう伝えるかも非常に重要な課題(不可能ではないが、難しい)。予約する動機付け、意味や価値の共有にアイディアが必要
- アイテムやプロダクトそのものではなく、そこに付与される二次創作的なストーリーに価値をズラすというアイデアはおもしろいと思う。一見脇役なものを主題にしているところに未知性を感じる。
- 何かしらのテーマ性やキャプションを書く人の「秘密」が書いてある、など、キャプションに価値を持たせ、「泊まりたい」と思わせる方法が必要。最近あまり見かけないが、旅行先のベンチや柱に(非合法に)名前を掘り残す、的な行動・欲求ってあるので、ブラッシュアップしていけるのではと思う。

ただ、学生の皆さんも真剣にメモを取り、フィードバックに対して適宜質問を投げることで、果敢に学びを吸収する姿勢が印象的でした。

■未知性・実現性・ビジネス性を踏まえ、アイデアを絞り込んでいく

一通りのフィードバックを終えた後は、いよいよ討論スタート。

5つのチームのアイデアの良い部分を生かして組み合わせることも踏まえ、最終的には2~3つに絞ることがゴールです。

それぞれのチームメンバーからフィードバックへの質疑応答をしたのち、まず学生さんがどう思ったかの意識を把握するための中間投票。

それぞれの企画についての説明は省きますが、下記のコメントが寄せられました。

<チーム別コメント>
ファッション
- 古着好きなので古着というところに惹かれました。
- もしコラボするなら古着にキャプションをつけたいと思ったから
- 古着は好きな人が周りにも多いし、検索してくれる人が多そう
- 古着が特別好きというわけではないですが、そんな自分でも楽しめるかもという期待を感じたから


- ありふれた京都にある京都らしいホテルとは一線違う、ホテルシーにしかできない和のホテルみたいなのは考えてみたいと思ったから
- 食べ物ならお金が出しやすい
- 京都在住ながらもポップな和に惹かれたから
- 食べることが好きだから

記憶
- 「記憶」「初恋」ってワードにビビッと来た
- "記憶"初恋に着目したのが面白いと思ったから

物語
- どんなホテルにしたいかわかりやすかった
- 1番AXに広げられそうで面白そうと思った
- 他の人のものの見方を知れそうで面白そうだから

身体
- 自分もゴッホのようなアーティストになれる機会っていうのがないから、どんな感じなのか気になったし、新しくていいなと思ったから

ラボメンバーからも下記の観点で講評を行い、議論を進めていきます。

<企画評価の観点>
- ビジネス性・・・宿泊者が実際に集まるか?
- 未知性・・・ここにしかない新規性、AXらしさがあるか?
- 実現性・・・限られた制約の中で、実現できるのか?

■議論は並行線を辿り、一旦ラボメンバーが持ち帰ることに

それぞれの良さを活かし、より研ぎ澄まされたアイデアにするため、食チームと記憶チームのアイデアを組み合わせたらいいのでは?など、多様な意見が挙がりました。

しかし、実際にビジネス化するための絞り込みに今後のイメージが湧きづらいのか、学生の皆さんはなかなか納得のいかない様子。

議論は白熱するものの時間はどんどんと過ぎていき、今回の時間内にアイデアの絞り込みを完了することはできませんでした。

そこで、次回に向けて一旦チームごとの現時点でのアイデアを元に、ラボメンバーが持ち帰り、議論を実施。

プロの視点で企画を再度ブラッシュアップし、絞り込みを行った上で、次回はリリースに向けてより実現的な準備をしていきます。


引き続き、本noteにて上記「藝泊」の取り組みに関して発信していきます。

“[未知]のつくり方」を研究し、社会実装する”というとてつもなく難易度の高いテーマですが、試行錯誤しながらもアジャイル的アプローチで、「未知をつくる」を実現していきます。
今後の取り組みに、ぜひご期待ください。

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