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日本とオランダを教育でつなぐ 元公立高等学校教諭三島菜央さんオランダからの挑戦:インタビュー③「外の視点」を現場の先生たちに伝えていきたい

日本の教育への想いを胸にオランダへ移住した三島菜央(みしまなお)さんにお話を伺いました。オランダ移住の背景やオランダでの暮らしの中で感じたこと、これから取り組みたいことを3回に分けてお届けしています。

<話し手>
三島 菜央 / Nao Mishima 元公立高等学校教諭 Eduble代表
7年間の教員生活の中で「日本の教師の働き方」や「教育の在り方」などに疑問を持ち、退職 日本にとってもっと良い教育を広い視野で模索するため、2019年5月、当時3歳の娘とともにオランダへ 2020年3月に社会科教諭をしていた夫も合流し、日本とオランダを教育でつなぐことに取り組んでいる オランダハーグ在住

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<聞き手>
佐藤 草 / Sou Satoh
対話と意識の成長・全体性の発揮に関する実務家・研究者 
オランダハーグ在住

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全3回の記事
①日本の教育への想いを胸にオランダへ
②オランダの社会と教育、子どもが小学校に通って見えてきたもの
<今回>③「外の視点」を現場の先生たちに伝えていきたい



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③「外の視点」を現場の先生たちに伝えていきたい

熱い想いを持った先生たちを日本の外からつなげていきたい

ー今後さらに取り組みたいことはどんなことですか?
私たち自身がそうであったように、自分自身が視点不足であるということを自身で気づくことはなかなかできないのかもしれません。また、現代のように情報の国境がない時代で、一つの国の価値観だけに縛られていると、どんどん視野が狭くなる可能性もあります。

ただ、日本には「日本の教育はこのままで良いのだろうか」「もっと新しい視点が欲しい」「このままではいけない」と思いながら目の前の生徒たちを見つめ、日々の学校業務に埋もれまい、と懸命に働いている先生たちがいて、私はそういった先生たちのことを忘れたくありません。

全国津々浦々に、熱意がある先生がいるし、想いはあるけれどもくすぶっている先生もいる。

だから、教師を辞めた今、日本という国の外からその人たちつなげることをしていきたいと思っています。

日々、忙しい時間の中ではなかなか出会えないけれど、あなたが目の前の生徒を大事にしたいと思っているように、日本にはこれからの教育を良くしていきたいと思っている人たちがいますよということを伝えて、つなげていく。

そして教育者として成長したいという人をオランダへと引っ張って、オランダの教育現場を一緒に視察することでおみやげを持って帰ってもらいたい。

帰国後も熱いハートを持ちながら、ときにオンラインで集まって励まし合いながら学校をいろんなところから変えていく。そういう活動ができたらいいなと思っています。

制度も大事だけれど、やっぱり私は、ひとりひとりの意識も社会を変えるために必要だと思っています。

新しい視点を得たり、日本の教育を見つめ直す先生が増えることで「ほんとやね」「こんな風に変えたら良いのかもね」と対話が広がり、現場の教職員から教育が、日本が変わっていくと心から信じているんです。

政治家が社会を変えるとか教育界で上り詰めてからじゃないと制度が変わらないとかそういうのをよく聞くんですけど、「そうじゃなくて現場からでも変えられるって、みんなで信じて変えていこうよ」って言いたい。

「ひとりひとりの意識で、ものごとをよくすることができる」と教師が体現するその背中を子どもたちも見ている。「背中で語る教師として一緒に頑張りませんか」と先生たちに呼びかけたいです。

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▷休校期間中にオンラインHRを開いてくれる先生たち

一人では難しいこともみんなで実現できる

今の学校現場では、教職員が自分自身の指導力をアップさせたいと思っても、その時間を捻出することが難しいのが現状です。

自治体にもよりますが、外部のセミナーに参加しようとしてもそのための交通費や参加費は実費だったり。つまり、生徒のためを想ってスキルアップしようと思っても、結局自分のお金と時間を削って参加するしかないんです。

責任感と使命感を持って仕事をしている先生ほど、時間と費用の捻出に苦しんでいる。私はそれはおかしいと思っています。

だから、外の視点を得たいという先生たちのためにクラウドファウンディングをして、オランダの教育視察にかかる先生たちの費用負担を出来る限り抑えたいと思っています。「あなたは休みだけを取得してきてください!」と言いたい。

そうすれば、海外視察に対するハードルもぐっと下がって、もっと色んな先生にオランダからのお土産を持って帰ってもらえると思っています。募集したいのは「そういった機会があれば是非参加したい!」と熱意を持って言える先生たち。新しい人と出会い、タッグを組んで日本の教育を真剣に考える人たちです。

今後はクラウドファウンディングに向けて、先生たちが集まれる場所をどんどんオンラインで作っていきたいと思っています。そして実際にオランダで会うことで、その熱意や想いを体感して欲しいです。

No.9 胸にあるのは教え子たちの未来のこと

▷いつも胸にあるのは教え子たちと日本の未来のこと

「自分には社会を変える力がある」と子どもたちが信じられる社会に

ーさらにその先で実現したい未来はどんな未来なのでしょうか?
「18歳の意識調査」というのが去年の9月頃にあったのですが、「自分が社会を変えることができるか」という問いに対して「はい」と答える17〜19歳の割合が、日本は20%を切っている。OECDに加盟している先進国の中でぶっちぎりで低いんです。

他の国では「自分は社会の一員である」「自分には社会を変えることができる」と、未来に希望を持っているというか、「自分には力がある」と信じているんですね。日本の青年たちはどうもそうは信じていなくて、そういうのは大人がやることで自分には関係がないと18歳の時点で思っている。

それを私はすごく深刻な問題だと思っています。

もっと子どもたちに自分に力があるって思えるように経験させてあげないと、18歳で得た気持ちで「社会なんか変えられない」と思い続ける人生になってしまうと思うんです。

自分の一票に力があるということや、自分たちが集まって声をあげれば本当に社会は変わるということをオランダ人は心から信じていて、実際に制度や社会が変わり続けてきました。

でも、日本は変えようと思ってもその手順が複雑だったり、数が集まっているのに大人の都合でひっくりかえされることも多く、子どもたちは「お前たちは力がない」って思わされる機会が多いように思います。

そんな子たちに「夢を抱け」とか「理想を持て」と言っても「でもそうさせてくれなかったのは大人じゃないか」って子どもたちはどこかで分かっているんじゃないかな。子どもたちに自分たちには社会を変えることのできる力があるんだと実感できる経験をさせてあげたいし、そういう経験の一つが、学校の先生が生徒の未来のために戦う姿を見ることなのかな、と思います。

そんな大人の背中を見て「大人って捨てたもんじゃないな」って思ったり、希望に溢れる子どもたちが社会に出て行ったりしてほしいし、社会に出てからも「これじゃない」と思ったとき、いくらでもやりなおしができる社会であってほしい。

子どもたちが自分の境遇に関係なくイキイキと生きている。

そんな子どもたちが大人になって、さらにその子どもたちに生き生きとした姿を見せることでまたそれが良い連鎖につながっていく。

教育が変わればそういう社会が実現するんじゃないかなって思っています。

No.10 1年の終わりにクラスでパーティーをした時の様子

▷1年の終わりにクラスでパーティーをした時の様子。普段は送り迎えで慌ただしくしている保護者とたっぷり話をすることができた。

*写真は全て三島菜央さんが撮影

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3回に渡ってお届けしてきた三島菜央さんのインタビューを最後までお読みいただきありがとうございました。

「遠い、違う国の話」ではなく、あなた自身の中にある想いや言葉に気づくきっかけになっていれば嬉しいです。

三島菜央さんや日本にいる熱い想いを持った仲間とともに海外の教育と接点を持ちながら「日本の教育への課題」に取り組んでいきたいという方はぜひ...

【教育について一緒に考えませんか?】
<三島菜央さんの今後の取り組み>

日本の学校現場で働く教職員や、これからの日本の教育について考えていきたい。という方々とどんどん繋がりたいと考えています。

その先駆けとして、
2020年9月18日(金)20:00〜(日本時間) インスタライブを行います!

テーマは「日本の生活/教育文化とオランダの生活/教育文化について」
コメント欄を通して、どんどん質問も受け付けさせてください!

今後はYoutube配信やZOOMでの対話セッションも企画しています。
ラジオ代わりやちょっとした作業のBGMとして聞いていただけたらと思います。

ご関心がある方はまずはインスタグラム(eduble_nld)やnoteをフォローしていただけると嬉しいです!


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