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スペインと「レアル」

皆様こんにちは。
本田拓郎(Takuro Honda)と申します。
この記事へお越しくださいまして、ありがとうございます。

 このnoteでは、今現在観光業に就いている私が、私の目線で、「観光・旅行・歴史・文化・教育」について、知識や新たな発見の提供、その他自論を展開し、「勉強になった!」や「こんな考え方もできるなぁ」という、古代ギリシャでいう、「アゴラ」のような場所を目指します。
 私が勉強していることを皆様とも一緒に学ぶというスタイルで、記事を創っていきます。

 さて、海外サッカーもJリーグも再開し、サッカーがある日々が帰ってきて、とってもハッピーです。そんな中で、スペインリーグ、La Ligaのクラブの名前に多くある「レアル」という名前。皆さんはどこのクラブを思い浮かべますか?今日はその「レアル」について紐解いてみましょう。

拙い文章力と乏しい考察力ではありますが、
最後までお付き合い、お願いいたします。

1. 「レアル」が意味するもの

 小学生の頃からサッカー漬けだった私が、一番最初に好きになったチームは、FCバルセロナです。理由はいたってシンプルで、『キャプテン翼』の主人公、大空翼が所属していたから笑 でも、その時のバルサはメッシが出始めで、ロナウジーニョや、エトオプジョルが輝いていて、何よりめちゃくちゃ強かった。まぁ、その数年後には、トッテナム・ホットスパーに惹かれちゃうんですけどね。

 そんなバルサのライバルといえば、レアル・マドリード。昨年、日本代表久保建英が移籍した、「銀河系軍団」は、常に最強でないと許されないバケモノクラブ。バルサとの対戦は「エル・クラシコ(伝統の一戦)」と呼ばれ、選手だけじゃなく、クラブスタッフも、サポーターも熱くなる、世界が注目する試合で有名です。

 バルサとレアルの2強が続くLa Ligaですが、アトレティコ・マドリードセビージャバレンシアなど、強豪クラブがひしめく、大変興味深いリーグです。そんなリーグ所属のクラブの中で、よく耳にするのが「レアル」。そう、「レアル・マドリード」の「レアル」。スペイン語で表記すると、"Real"。この言葉は「王室の」という意味の形容詞です。まぁ、英語の"Royal"と同義です。ラテン語系もゲルマン語系も発音がそっくり。スペインは今も王国として統治されている国家です。「レアル」とは王室が称号を与えたクラブ、つまり、王室公認クラブという意味があるので、勝手に「レアル」をチーム名に入れることは不可能です。

 名前に「レアル」と付くクラブには、ある共通点があります。さて、それは何でしょうか。答えは、エンブレムの頂に王冠が描かれていることです。エンブレムに王冠が描けるのは「レアル」という名前が付くクラブのみ。他のクラブには付いていません。レアル・ベティスも香川真司選手が所属するレアル・サラゴサも、エンブレムには王冠が描かれています。そうすることで、「レアル」の権威を示しているのです。

 では、ここでもう一つの疑問。誰が「レアル」を与えたのか。「王室の」という意味であることは前述の通りだが、王室と何が関わっているのか。スペインサッカーの歴史を少し紐解いてみましょう。

2. "Real"を与えたアルフォンソ13世

 まず、スペインサッカーの歴史について少し。スペインにサッカーをもたらしたのは、母国イングランド。19世紀後半にイギリス人労働者とバスク人たちがアスレティック・ビルバオを設立したのが始まりという説が有力です。この"Athletic"という単語は英語スペイン語にすると"Atletico"。そう、同じ意味でも、アスレティック・ビルバオとアトレティコ・マドリードでは、頭に付く言語が違います。つまり、アスレティック・ビルバオはイギリスからのサッカー流入を示すとても重要な史料なのです。

 ここからが本題。「レアル」という称号をサッカークラブに与えたのは、当時のスペイン国王アルフォンソ13世です。アルフォンソ13世は、生まれた時には父が既に死去していたため、出生と同時に王位就いたという、ものすごい人。もちろん赤ん坊の時は政治なんか出来るわけないから、代わりに母が政治を行っていました。20歳の時に結婚し、スペインをより豊かに繁栄させると思われましたが、この結婚が、スペインにも、スペインサッカーにも大きな影響を及ぼすことになります。

 后として迎えた相手は、イギリス国王ジョージ5世の従妹である、ヴィクトリア・エウヘニアという女性。もちろんイギリス出身、つまり、フットボールの母国の女性を奥さんにしました。諸説ありますが、アルフォンソ13世が大のサッカー好きだったからという説も。

 スペインサッカーの国内カップである、「コパ・デル・レイ(国王杯)」を始めたのは、このアルフォンソ13世です。自身の戴冠を記念して開催したのが起こりと言われています。現在も続く、スペイン最古のサッカー大会を創始したというわけです。

 そんなアルフォンソ3世の統治時代に、世界を揺るがす大事件が発生します。第一次世界大戦です。ボスニア人青年がオーストリア皇太子夫妻を暗殺した、サライェヴォ事件を引き金に、三国協商を結んだイギリス・フランス・ロシア三国同盟を結んだドイツ・イタリア・オーストリアの戦争が始まります。では、スペインはこの時どうしたのでしょうか。アルフォンソ13世の決断は「中立」でした。理由は家族が関係しています。

 前述の通り、奥さんはイギリス王室出身でしたね。じゃあ三国協商側に付けば良いじゃないか。ここでカギとなるのが、アルフォンソ13世が幼い頃に代わりに国を指揮していた、お母さんのマリア・クリスティーナです。なんと彼女、オーストリアを大国にした、ハプスブルク家の出身。三国同盟側の人間だったのです。ということでどちらにも属さない代わりに、軍需産業を成長させ、スペインに好景気をもたらします。朝鮮戦争の時に日本の景気が良くなったのと同じ仕組みです。

 多額の黒字をたたき出し、国家経済も潤沢になったと思われましたが、この利益が還元されたのは、ブルジョワ層のみ。つまり、一般市民にとってはあまり関係なかったのです。権力階級のみがより豊かになったことで、スペイン国内ではインフレーションが起き、価格が高騰しまくりました。一般市民との経済格差が大きくなり、大部分を占める層の生活がどんどん苦しくなっていきます。その結果、アルフォンソ13世はテロの標的となり、スペインからイタリアへ亡命し、そのまま亡くなってしまうのです。

 スペインサッカーが本格的に動き始めたのは、第一次世界大戦の後のことです。1929年にリーグ戦が始まりますが、その2年後に国王は亡命し、リーグの盛況を目にすることはなかったようです。サッカーを愛した国王の人生と考えるととても残念ですが、彼が現代にもたらした影響はとても大きなものとして発展していることは間違いないです。

3. 「レアル」と言えば、マドリードではない!?

 「レアル」=レアル・マドリードという認識は、実は日本人だけです。スペインで、「レアルが好きなんだ!」って言っても、「君はレアル・マドリードのファンなんだね!」とは思われません。では、スペイン人にとっての「レアル」はどこなのでしょうか。

 スペイン人にとっての「レアル」は、レアル・ソシエダです。今季若い力が台頭し、執筆現在6位に位置するチームです。ソシエダのホームタウンは、バスク州のサン・セバスティアンです。アスレティック・ビルバオと同じ、イギリスからサッカーがもたらされた州のクラブです。

 レアル・ソシエダは1910年にアルフォンソ13世より、「レアル」の称号が与えられた、スペインで最初のクラブです。要は、スペイン最古の「レアル」が付くクラブです。何でも最初のものって「冠詞+モノ」が愛称になりがちですよね。「最初のものあるある」としてネタにしようかな。イギリスのサッカー協会も"The FA"ですし。なので、ソシエダの愛称ももちろん"La Real"です。

 ソシエダに「レアル」が付いた理由は、ホームのサン・セバスティアンが、スペインの夏の首都として機能していたからだそうです。ソシエダにはクラブ公式アンセムなるものが存在し、そのタイトルも"Erreala"と徹底したレアルっぷり。アルフォンソ13世亡命後は「レアル」が名前から消えた時代もありましたが、その後復活し現在に至ります。

 2019-20シーズンに1部リーグのLa Liga サンタンデールに所属したクラブで、「レアル」が与えられたクラブは7つあります。レアル・マドリードレアル・ソシエダレアル・ベティスバリャドリードセルタ・デ・ビーゴエスパニョール、そして久保建英選手所属のマジョルカです。こんなにたくさん「レアル」があるから、最古のソシエダが「レアル」と呼ばれ、権威あるクラブとしてスペイン人に認められてるんですね。

4. サッカーから始まる旅行のきっかけ作り

 最後は私の本業の話。サッカーの競技人口は世界最多。全世界に色んなクラブがあり、それらのクラブには、地域や国の歴史だったり、地理的特徴が関わっています。それを紐解くヒントは、クラブの名前だったり、エンブレムに隠されています。

 例えば、セリエAのインテル・ミラノACミラン。同じイタリアのミラノのクラブなのに、地名表記が「ミラノ」と「ミラン」で異なります。なぜなら、ACミランはイギリス人が創ったクラブなので、ミラノの英語表記がチーム名になっているのです。ビルバオと一緒ですね。エンブレムも見てみると、ミランのものには、イングランド国旗が描かれていますね。それも、イギリス人が創った歴史を示すものです。

 じゃあ、ミラノとイギリスってどんな繋がりがあるのか。それを探りに現地へ足を運ぶ旅行ってとても素敵だと思います。旅行のきっかけって、本当に些細な所にたくさん落っこちているので、いかに色んな所にアンテナを張っているかがポイントになると思います。もちろん、「あの選手が見たい!」とかでも十分旅行のきっかけになりますよ笑 それも、サッカーに対してアンテナを張っている証ですからね。

 早くヨーロッパでサッカーを見に行けるようになれば良いですね。そしたら絶対ロンドンで、スパーズの勝利をこの目で見届けたいと思います!

そして最後に、レアル・マドリード優勝おめでとう!!!

今回も最後まで読んでくださいまして、誠にありがとうございます。
また次回お会いしましょう。
Ciao...

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