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スタンダップ・コメディのスゝメ|ぜんじろう

スタンダップ・コメディアンとして活動するぜんじろう氏。

彼がなぜスタンダップ・コメディアンになったのか?そして、日本のメディアや日本人の表現に対して感じること、成し遂げたいことについて深ぼっていきたい。

本記事は2部構成の記事のうちの2部目となります。
前回の記事はこちらからご覧いただけます。

スタンダップ・コメディについてはこちらの記事をご参照ください。


スタンダップ・コメディの作法について

記者)
以前、スタンダップ・コメディについての記事を書かせていただいたのですが、改めてスタンダップ・コメディで大切にすべきことについて教えてもらえますか?

ぜんじろう)
はい、noteも読ませていただきました。よくまとまっていて最高でした。僕はスタンダップ・コメディをずっと続けていて、当たり前化してるので若者目線での解説は新鮮で勉強になりました。やはり歳を取ると若い世代の方々の感覚とはズレてしまうので(笑)

その中でスタンダップ・コメディで大切にすべきポイントはただ一つと言っていいかもしれません。それは差別をしないことであり、公平性(イコール)を保つということです。

社会的に弱い立場の方を叩かないのは当たり前。でも、叩いてしまったら、自分も社会的に同じになるように叩いて落とします。

例えば、人種でいうと「インド人って時間を守らないんですよね。会議する時、開始が8時だったら集まるのは8時30分だったり、スタッフが9時にきたり。」この一文だけだとインド人差別になるんですが、その後に「日本は会議をするとなると開始時間は1秒も遅れないけど、終わりの時間は1時間くらい平気で押すこともある。日本人は決断力がないからね。」と言った具合でイコールを保ちます。

これは「人間は人種や国籍にかかわらず、時間という決めた事を何かしらの事情で同じく守らない生き物だ」という視点で笑いあうというイメージです。

だから"社会的にどの立場なのか"を正確に把握してジョークをつくっていくんですが、それが保たれていないと差別になるので注意が必要です。ちなみにですが社会的に立場が強い権力者(政治家や大企業の社長、大金持ちなど)は、叩いた後も自分を下げなくてもいいという公平のルールも存在します。

でも、あくまで笑いを取ることが目的であって、ともかく社会を批判をしたいと言うわけでもないし、決して高貴なものでもないということも理解してくださるとスタンダップ・コメディの楽しさも感じてもらえるのかなと思います。

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社会風刺は誰がため?

記者)ありがとうございます。そもそも、こうした社会風刺と言うものはなぜ生まれてきたんですかね?

ぜんじろう)
ひとつ言えることは社会風刺は民主主義の象徴なのかなと思います。政府が言論統制などを行なっている国では、たとえジョークであってもまず刑罰の対象になるでしょうし、ある種、民主主義が生み出したエンターテインメント、もしくはゲームだと感じています。

ちなみにですが、スタンダップ・コメディ=社会風刺ではなく、人間観察、下ネタ、政治、宗教、人種差別など幅広いジャンルがあります。

その中の社会風刺はあくまでも笑うためにあるもので、それをもって政治的主張を政治家にぶつけて何かを変えたいというわけではないです。ある種、愛を持ってイジっているのであって、愛がなければジョークにもなりません。

だから私のスタンダップ・コメディやSNSでの発言は、「どうイジっているのか」や「どうオチをつけているのか」を楽しんで笑ってもらえればそれで十分ですね。

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日本人の話す・聞く力、習慣について

記者)
以前、お話を聞かせてもらった時にも「日本の教育の読み書きを教えるレベルは世界でもトップレベル。しかし、話す聴くということを教える場面がないので、自分の価値観と違ったり、否定的や強い言葉になった時にウッてなって固まってしまうことがよくある」というぜんじろうさんの分析がありましたが、そこを深堀り願えますか?

ぜんじろう)
これは日本の教育というか、国の施策として「話し言葉」「書き言葉」という単語があるように話す・書くの言論統制ができていないことの影響と、村社会の構造が関係してると思っています。

特に後者は自分の感情を表現することが図々しいとか、わがままといったように悪しきものとして捉えられるようになり、それを恐れて皆が自己表現を控えるようになりました。

今の社会でも自分に正直になって、やってることの方向性を大きく変えたり、辞めたりすると外部の第三者が「なんか良くないことがあったんじゃないか?」と根も葉もない噂が出たりします。

そんな噂から弊害が出たりして、正直な人が損をする社会になっています。

とはいっても、みんなが相手を思いやらずに何でも話すようになると「黒人は嫌い」「女性は頭が悪い」など差別的な発言もしてしまうので、次のレベルとして「差別はしない」という段階になってきます。

そのためにスタンダップ・コメディの考え方が広まればなと考えていて、正直に言ってみんなが得する社会をカタチにしていきたいですね。


あとがき

スタンダップ・コメディに馴染みがなかった人もぜひこの機会にNETFLIXやYoutube等で観て楽しんでもらえると幸いだ。欧米ではコメディクラブという娯楽施設があるくらい一般的なコンテンツであって、その規模感やコメディアンの母数も段違いだ。映画『JOKER』の中でも主人公はコメディアンを目指していたりと実は既にスタンダップ・コメディを目にしていたこともあるかもしれない。

まだまだ馴染みのない日本だからこそ、そこで生まれる新たなスタンダップ・コメディのカタチにぜんじろう氏がワクワクしながら挑戦する姿は年代や業種を問わず、見習いたい姿勢だ。

夢を目指してぜんじろう氏は今日もステージに立つ。

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