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『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』と『パッチギ』

高校時代の文化祭。
私のクラスは、数人の文化系女子が中心となって〈いわゆる従軍慰安婦〉をモチーフとした劇を上演することになった。私は華麗なる雑用だったので作劇にはノータッチ。文化祭の準備をキャッキャと深夜まで仲睦まじく・・・などという『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』のようにはいかない。

劇の内容は覚えていないけど、こんな感じだったと思う。

天皇の勅令によって日本兵が朝鮮の地で慰安婦狩りをした。主人公の女の子は親兄弟を殺された挙句、慰安婦として戦地に送り込まれる。戦地では『突撃一番』というコンドームを配布され、一日に何人もの兵隊の相手をさせられる。つらくてつらくて仕方ない。仲間と一緒に『アリラン』を唄う。そして日本が敗北。日本兵は逃亡を図る際に、証拠隠滅をはかるべく慰安婦をミナゴロシにして終了。

私の記憶

勅令を「天皇が直で命じる、直令」と勘違いしている、左翼も困惑するようなトンデモな劇。しかし今、この部分の批判は黙認してい頂く。歴史歪曲だの歴史修正だの、軍による強制があっただのなかっただの、この話のキモはそこじゃないからだ。

戯曲が完成した。さて、劇に使う衣装、すなわちチマチョゴリをどこから借りるのかという話が持ち上がったらしい。そこで、この劇を企画した張本人で実質的なリーダーが借りることになった。この女子は某宗教団体のハードコアな信者で、在日コリアンの知り合いなどごまんといる。
チマチョゴリを貸してくれたのは朝鮮高校の生徒数名。何ともありがたい。これを嚆矢として、噂はたちまち近所にある朝鮮学校に広まり、そこそこの朝校生が観劇しに来てくれた。

文化が祭終了して数週間後。
朝鮮学校から劇を上演してくれないかという打診があった。日本人が朝鮮学校に入る機会なんて滅多にない。せいぜい部活動をしている学生が親善試合か何かで入ることしかない。
帰宅部の私が入るのはこれが最初で最後だと思い、「帰宅部なのに朝鮮学校に入れるぞ!」と胸を躍らせた。

ところが、いつになっても朝鮮学校に行くことはなかった。私はくだんの女子に尋ねた。
「いつ朝鮮学校に行くの?」
「あんなのとっくに断った」
「どうして?」
「だってあの人たち、怖いじゃん」

てめぇ、マジか?
熱心な某宗教団体信者で、社会的弱者、マイノリティ、人権にうるさいはずの彼女が、まさかそんなことを言うなんて。私は開いた口がふさがらなかった。以来、某宗教団体もリベラルも信用していないことにしている。信用できるわけがない。

余談だが、関西の知り合いたちは「パッチギ」ではなく「パチキ」って言っいた。東京生まれ横浜育ちの都会派ベイシティボーイの私の近辺では「チョーパン」と言われていた。
いや、本当に、マジで余談だった。