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「清く正しい取引」が、きっと世界をよくするはずだ

いまうちの会社ではグローバル展開にすごく力を入れています。

世界での市場の盛り上がり、うちの強み、そしてカルチャーがピタリと合致して「いまならいける!」と大きな手応えを感じているところです。

今日は私たちが描くグローバル展開について書いてみようと思います。このnoteをきっかけに海外志向の人がどんどん仲間に加わってくれたら、こんなにうれしいことはありません。

成功の秘訣は「検査」

最初に少しうちのビジネスについて説明させてください。

私たちがやっているのはリユース品のネットオークションです。社名は「オークネット」。BtoBに特化しており、オークションに参加できるのは企業のみです。

商材は中古車から始まり、バイク、ブランド品、スマートフォンなどなど……。商材ごとに別々のオークションを開催しています。

私たちのオークションのいちばんの特徴は、現物をいっさい見ることなくすべてネット上で完結することです。

最初の事業は父が40年以上前に始めた中古車のネットオークションだったのですが、当時は「買う側が自分の目で見て判断しろよ」という世界。出品される車のリストだけがあって、みんな遠く離れた車の置き場まで足を運び、現物を自分の目で見て確認していました。

そんな世界でなぜ現物をいっさい見ずに取引できるのか。

それは「検査」のおかげです。

私たちは創業以来ずっと「検査」をすごく大切にしてきました。これが成功の秘訣であり、グローバルで「勝てる理由」でもあるのです。

私たちはネットオークションを始めたとき、車の状態を点数化してリストに書き込むことにしました。

5点満点で、3.5点がふつう、4点はわりといい、3点だと多少使いこまれている。そんなイメージです。

基準づくりも相当厳密にやっています。たとえば「Aの1、2、3」という基準。Aは「線キズ」のことを指していて、1はこぶし大程度、2は手のひら程度、3は手のひら2つ分程度と決まっている。「そんな細かいことまで決めるの?」というくらいマニアックに基準をつくっています。

リユース業界でそんなことをやったのはうちが初めてでした。

この検査基準は「わかりやすいね」「安心だよね」と瞬く間に支持を集めていきます。

検査はあえて厳しく

当初はよく「オークネットの点数は厳しい」と言われていました。「オークネットの3.5点は他社の4点だよね」などと言われるのです。

我々がうまくいったのを見て、すぐに他のオークション会場も点数をつけ始めました。5点満点というスケーリングもまったく一緒でした。

しかし根拠となる検査基準は各社バラバラ。そして次第に採点が甘くなっていきました。出品者(セラー)が「ちょっと高めに付けてよ」などと要望してくるからです。

根拠がわからないまま3点、4点といった数字だけが出回るようになり、けっきょく買い手(バイヤー)が混乱する事態になってしまいました。

そこを我々は検査基準をあえて厳しくすることにしました。

うちのオークションはすべてネット完結。最後まで現物をいっさい見ないで売り買いします。そこはある意味、他のオークションに劣っている部分でした。

どうしても「バイヤーがモノを見られないこと」が短所になってしまう。だったら「検査はあえて厳しくすること」を選んで、徹底的にバイヤーに寄り添うことにしたのです。

最初にバイヤーから圧倒的な支持を集めたのが功を奏しました。

点数を甘めにつけるよう言ってくるセラーがいたら「じゃあ出品しなくてけっこうですよ」くらい強気に出ることができました。

繰り返しますが、うちのサービスは現物が見られないので「正しい情報」が命。だから「モノがいい」ことも大切なのですが、それ以上に「オークネットのグレーディングっていいよね」という信頼が成功の秘訣だったのです。

自社の儲けだけでなく、業界のために

うちの会社は独自の検査基準によってどんどん成長していきました。

しかし各社の検査基準はあいかわらずバラバラのまま。

「同じ4点でもあそこの会社はひでえんだよ」
「あそこの4点はけっこういいよ」

そんなウワサがけっこう大事な情報として語られるようになっていました。

業界全体のことを考えたときに、ほんとうにこのままでいいのだろうか?

そこで我々は「このままじゃいけないよね」という問題提起をすることになります。

何をやったかというと、中古車の子会社を持っている大手の自動車メーカーさんを巻き込んだのです。

声をかけたのは、トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、スバルなど、日本を代表するメーカーさんたち。

それらの会社に「検査の基準や点数がぐちゃぐちゃしてる状態ってよくないので、一緒に統合しませんか?」と話をしていきました。

実は多くの自動車メーカーさんは自社のオークション会場を持っています。たとえばトヨタのディーラーが車を売ると、下取りが発生します。このときトヨタ車が戻ってくれば自分のところで販売できますが、他社の車だとそうはいきません。そこでオークションに出品して街の中古車屋さんなどに買ってもらうのです。

やはりメーカーさんには「ちゃんとした基準で検査したい」というニーズがあります。そこで「我々のノウハウを提供しますから、メーカーさんとウチの会社で統一した検査基準をつくりましょう」と提案したのです。

これがメーカーさんにすごく響きました。

このとき私たちは検査会社を作り、メーカーさんにも数%ずつ出資していただきました。一部のメーカーさんからはこの会社で検査の仕事自体も請け負っています。

こうして我々の基準が自然に広まっていき、いまでは日本の中古車業界全体のスタンダードになっています。

私たちは中古車で得た検査のノウハウを活かし、バイク、ブランド品、スマートフォンなどのさまざまな商材にも事業を広げていきました。

Made in Japan から Used in Japanへ

中古車業界の検査の話が長くなってしまいました。グローバル展開の話に入ります。

実は、グローバルでは中古車ではなく「ブランド品」から攻めていこうとしています。

いま日本のブランド品は海外でかなり人気があります。アメリカの若者の間では、日本のリユース品が「ていねいに扱われているから状態がよく、サステナブルだ」と流行しているなんて話も聞きます。

かつてMade in Japan、つまり日本のモノづくりの力が世界から評価された時代がありました。

いっぽうで最近はUsed in Japanという言葉が注目されています。サステナブルが盛り上がってきたことで、再び日本が評価されているというわけです。

Used in Japanの次は……?

Used in Japanが評価されているのは私たちにとってすごく追い風です。

しかしそれだけでは「グローバルで勝てる理由」にはなりません。

たしかに日本のリユース品を海外から買ってもらう上では有利です。しかし私たちが目指すのは、世界中のどこからでも出品できて、世界中のバイヤーたちが買っていく世界。それを実現するにはUsed in Japanだけでは足りません。

Used in Japanのさらに次の価値をつくるとしたら、なんだろう?

その答えが「Checked in Japan」という考え方です。

海外のバイヤーさんは私たちの検査基準をすごく信頼してくれています。「オークネットなら騙される心配がないよね」「さすが日本企業だよね」 そんなうれしい声もいただきます。

世界中どこから出品されたものであっても「日本クオリティの検査基準だから信頼できる」という価値をつくっていく。これがグローバルで戦う上での私たちならではの強みだと考えています。

もう一度日本の時代を

最近アップルの製品を買うと、パッケージにMade inではなくDesigned in Californiaと書いてあるそうです。

そんなイメージで、オークネットを経由したリユース品には「Checked in Japan」と書いてある世界を想像したりするんです。

まずブランド品から始めて、家電、アパレルなんかも流通させていきます。そして世界中の人にとってリユース品を使うことをもっともっとあたりまえにしていきたいです。

そのパッケージには「Checked in Japan」、その後ろに「by AUCNET」と書いてある。そんな世界観を作れたらと思うのです。

トヨタ、ソニー、パナソニックなどのメーカーがMade in Japanの力で時代を作ってきたとしたら、今度はオークネットがChecked in Japanの力でもう一度ジャパンアズナンバーワンの時代を作っていく。

大げさなことを言っているかもしれません。

だけどサステナビリティという時代の流れに乗って「信頼」を強みにしていけば、決して不可能なことではないと思っています。

「正直者がバカを見ない」世界を作る

それにしても、なぜ我々のような会社がトヨタさんなどの大手自動車メーカーと組むことができたのか?

それは以前から「オークネットさんって信頼できるよね」とメーカーさんの間で評判にもなっていたからです。

自動車のよくある詐欺の一つに「走行距離の詐欺」というのがあります。

いまはもうデジタル化していますが、昔はダッシュボードにクルクルとゆっくり回る走行計がありました。あれに棒を突っ込んで、クイクイクイっとやって1万の位をいじるのです。

たとえば10万キロ走っても3万キロとかにして、高く売りつけようとする。そういう詐欺が横行していた時代がありました。

「人をだまして儲けるなんて、絶対おかしいよね」

そう考えた先代の社長は、あらゆる業界の関係者に声をかけていきます。その中には大手のメーカーさんも含まれていました。

オークション会場が正しい走行距離を記録すれば、べつの会場に出されたときに詐欺があったら気づくことができます。

そこで「オークション会場を通ったときに走行距離をきちんと記録してデータベース化しよう」と話をしていきました。今でいうブロックチェーンの考え方をアナログで実現させていったのです。

うちの会社を創業した父は、亡くなる直前にこんな言葉を残しています。

ー近道の結果ー
目先の利益を追い求める人は没落が早い。公明正大、人の道に適った正統派の経営をする人が結局は残っている。

2代目として会社を継いだのは父の弟で、日本オートオークション協議会という業界団体の初代理事長をつとめました。

彼の名前は「清孝」というのですが、ほんとうに清く正しい性格なのです。協議会のトップとして「業界を清く正しくしていきましょうよ」とやっていった。グレーな部分も多かった中古車業界を率先してクリーンにしていきました。

「正直者がバカを見ない」世界を作る。けっきょくこれが創業時からのうちのカルチャーです。

泥臭くて遠回りかもしれません。だけど日本の中古車業界はちゃんと変わってきましたし、うちの会社も着実に成長してきました。

このカルチャーで、今度は世界を変えていく。それが私たちの目指すグローバル展開なのです。

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