秋限定『アザミ』のレストラン繁盛記
秋の野草の代表格の一つ『アザミ』、私が自然の撮影によく訪れる白金台の国立科学博物館附属自然教育園でもタイアザミやノハラアザミが咲き誇る。ちなみに、本稿冒頭の写真は、10月8日に撮影したタイアザミで、その名の「タイ」はタイ王国の意ではなく大きいという意味だ。
もちろん地域にもよるだろうが、アザミが秋の野草の代表格であるというのは、自然教育園においては単に質的、情緒的な意味ではなく、圧倒的な量の問題である。同時期に咲く花は意外と多く、ユウガギク・イヌショウマ・シロヨメナ・ホトトギス・シモバシラと数多いが、園内各所で最も多く見かけ、そして、最も多くの昆虫が集っているのがアザミなのである。
人間の社会ではアザミの事を雑草と位置付ける向きもあるが、昆虫たちにとっては、アザミの花、その蜜や花粉は夏の終わったこの時期の大変貴重な栄養源である。そもそも、雑草という草花はない。雑草は生物学的な分類ではなく、人間が勝手につけた社会的な区分けに過ぎない。
先にも触れたように、この時期、アザミはさながら昆虫たちのレストラン、それも大繁盛のレストランの様相を呈しており、様々な昆虫が集まってくる。次にそのほんの一例を紹介しよう(あまりに色々な虫たちが集まってくるので、一部詳しい種の同定は割愛しました)。
きりがないので、最後にオオカマキリの画像を上げて終わりにする。……ただし、オオカマキリの場合は、もちろんアザミの花が目的ではなく、アザミの花に集まってくる昆虫が目当てだ……
アザミのレストランの繁盛ぶり、いかがであったろうか?
夏の終わったこの時期、アザミの花がエサとしていかに貴重であるかは、一つの花に2匹の虫、それも異種同士が蜜や花粉に夢中になって留まっていることからもよく分かる。
……もし何らかの事情でアザミが絶滅してしまったら、昆虫たちはどうすればいいのだろうか?……ふとそんなことを思う。そんな空想が、実感として自然の大切さを思う心へと繋がるのかも知れない。生存競争など自然な理由での絶滅は、悲しいことだが感傷の対象かも知れぬ。だが、地球温暖化など人為的な理由での絶滅は、感傷などと言っていられない。
人間は、目の前のカマキリに気付けなかったチョウであってはならない。
昆虫の世界を見ていると、人間の社会が見えてくる。まさに、昆虫すごいぜ……おっと、これは某人気テレビ番組のパクリだ……「昆虫アッパレ!」とでも言っておこうか。
【以上、『随想自然』第18話】
(インスタグラムhttps://www.instagram.com/angelwingsessay2015/で、主に東京都心で見れる自然の写真を紹介しています。)
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