奮戦するローカル線に見る『続ける価値』と『儲かる価値』
日経電子版の記事【ぬれ煎餅がローカル線救う? 笑いと涙の社長奮戦記
銚子電鉄社長・竹本勝紀さん(人間発見)】は、税理士事務所の代表で、食品製造販売業を手がける銚電社長がいる、というユニークなローカル線に関する物語、タイトルにもある通り文字通りの「笑いと涙の社長奮戦記」です。
この記事を読んで改めて強く感じるのは、世の中には『続ける価値』と『儲かる価値』がある、という事です。そして、この2つの価値は、それぞれ独立した価値観でもって、相関関係とも因果関係とも違う微妙なバランスの上に振り子のように揺れ動いています。
――『続ける価値』があって『儲かる価値』がある場合もあれば、
――『続ける価値』がないのに『儲かる価値』がある場合も、
――『続ける価値』があるのに『儲かる価値』がない場合、
――『続ける価値』がなくて『儲かる価値』もない場合もあるのです。
▶2つの価値の関係の例
(1)『儲かる価値』であはあるが、ユーザーの減少・持続可能性・CSR
など様々な観点から『続ける価値』が失われつつあるケース。
(2)『儲かる価値』ではないが、大切なユーザー・持続可能性・CSRなど
様々な観点から『続ける価値』が生き続けているケース。
(付記:『続ける価値』と『儲かる価値』については、下記の拙稿でも考察しています。)
記事の事例では、利用者減に歯止めがかからず『儲かる価値』が低減しつつあるローカル線に、お年寄りや学生の足として、また、観光資源としてなどの『続ける価値』を認めて、様々にローカル線の再定義、ビジネスモデルの転換を模索する姿が浮かび上がってきます。『続ける価値』を担保にして、すり減ってしまった『儲かる価値』を作り直そう、もう一度取り戻そうとしている訳です――
▶ローカル線を救うための施策
① 運輸業以外のセグメント、食品製造販売業で利益を出す。
⇨駅などで売っていた「ぬれ煎餅」の販路を全国に広げるべくネット販売
に進出。
② ホームページの活用
⇨「(記事より)ぬれ煎餅を買ってください。電車の修理代を稼がなく
ちゃいけないんです」という悲痛な書き込みが話題となり、全国から
注文殺到。
③ クラウドファンディング
⇨「(記事より)地元の高校生たちがクラウドファンディングで500万円
を集め寄付してくれました」
④ イベント
⇨「日本一のエンタメ鉄道」を目指し、「お化け屋敷電車」・「電車で
ギョ」などを実施。
⑤ 地域とのコラボ・ネーミング作戦
⇨居酒屋とコラボし銚子産サバを使った「鯖(サバ)威張る弁当」
(サバイバルとかける)・「駅名愛称のネーミングライツ」など
⑥ そして、映画製作!
⇨低予算で莫大な配収を上げた映画「カメラを止めるな!」をヒントに、
「電車を止めるな!」を来年3月公開予定。
率直にここまでやるのは、純粋な銚子電鉄愛であり、根性が素晴らしい、と思いました。そして、記事の中ほどに紹介されている言葉「(記事より)販売促進の基本はまずお客様に知ってもらい、興味を持ってもらうこと」に体現されているプロモーションの考え方がカギだと思います。
今、広く世間を見渡せば、CSR・サスティナビリティ・SDGs(エスディージーズ)・地球環境問題、等々、『続ける価値』を続けるコトの重要性が問い直されています。『続ける価値』を再定義して、『儲かる価値』へと変えていくビジネスモデルの転換から目が離せません。
(追記:販売促進の基本である、まずはお客様に知ってもらう、については、下記の拙稿でも考察しています。)
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