人事評価のイノベーション~成長実感と評価・報酬の乖離を解消~
日経電子版の記事【一風堂、アルバイトが自ら学んで時給アップ】でリポートされる動画による人材育成・評価ツール『イチトレ』は、まさに人事評価のイノベーションと言っていいと思います。
そもそも、人事評価システムの課題を考えた時、その最大のものは、評価される本人の『実感』と『評価』との乖離ではないでしょうか。『実感』と『評価』の乖離が何の説明もされないまま長期間にわたって放置されれば、本人のやりがい、働きがい、向上心がしぼんでしまっても何ら不思議はありません。特に、アルバイトが入社した最初の6か月間、最も成長する期間に具体的な評価のシステムが存在しない事は、致命的であると言っても過言ではないかも知れません。
逆に、短いタイムスパンでこまめに『評価』されることが繰り返されれば、『成長実感』と『評価』との距離が縮まって、向上心が加速すると考えられます。これは、イノベーションのアイデアと言って良く、そのアイデアの解としてデザインされたのが『イチトレ』なのです。
▶『成長実感』と『評価』の乖離を解消するアイデア
入社 できる仕事 『成長実感』 評価システムなし こまめな『評価』
⇩ ⇩ ⇩ ⇩ ⇩
⇩ 少ない ⇩ ⇩ 評価
⇩ ⇩ 増えてくる ⇩ ⇩
⇩ ⇩ ⇩ ⇩ 評価
⇩ ⇩ ⇩ ⇩ ⇩
6ヵ月 多い 大きい 評価変わらず 評価の蓄積
⇩ ⇩
向上心減速 向上心加速
⇩ ⇩
離職 定着率向上
⇩ ⇩
サービスの質が低下 サービスの質
⇩ が担保される
⇩ ⇩
顧客満足の低下 顧客満足の向上
⇩ ⇩
店舗業績悪化 店舗業績向上
記事などから、この『イチトレ』のシステムを整理してみると――
▶『イチトレ』のシステム
【アルバイト】
コンテンツ視聴
⇩
身に付いたと実感・・・・・・・・・・・・アルバイトが自ら学ぶ仕組み
⇩ ⇩
セルフチェック完了ボタン 店長がアルバイト教育に
⇩ 取られる時間が短縮
【店長】 ⇩
確認依頼を受信 『店舗運営が効率化』
⇩
合否判定
⇩
合格
⇩
【アルバイト】
次のステップのコンテンツ視聴
⇩
(この繰り返し)
⇩
【店長】
一定の基準までトレーニングが
進んだことを確認
⇩
時給を上げるボタン
⇩
翌月から自動で給与UP・・・・・・『評価から報酬にまでふみこむ』
⇩
定着率向上
このように、『イチトレ』のシステムによって、①単にきめ細かな『評価』のシステムが確立されただけでなく、②店長が教育に割かれる時間の時短によって店のオペレーションに集中できるようになる点、そして、③『報酬』にまで踏み込むことで、『成長実感』をより強固なものにできる点が指摘できます。非常に練り上げられたシステムではないでしょうか。
このような、『成長実感』と『評価』の乖離を解消するイノベーションのアイデアが実装されたシステムは、差別化のために企業内部に温存するかどうかは別として、外販しても良いレベルだと思われます。しかも、記事にあるように、『イチトレ』のシステムは進化を続けており、『イチトレ』で収集されたデータを次のステップに活用しようとしています。
それは、従業員がコンテンツの修了状況に応じて付与される『チカラポイント』の活用です――
▶『イチトレ』データの活用
①『チカラポイント』の保有数を従業員同士で公開・共有し切磋琢磨。
②『チカラポイント』の店舗ごとの平均ポイントの公開も検討。
1.店舗間の競争を促し、さらなるサービスの質の向上を図る。
2.『チカラポイント』と店舗の業績・クレーム数などとの相関を検証。
3.チカラポイントを店舗レベルの指標として活用。
従業員の成長実感と評価・報酬の乖離を解消する『イチトレ』のシステムは、人事評価のあり方にイノベーションを起こすものであり、しかも、そこで収集されたデータを次のステップに活用して進化し続けようとしている点に感銘を受けました。