《連続投稿485日目》『当たり前』を否定することで生まれるイノベーション
日経電子版の記事【YKKが見せる磁気のマジック、ファスナー片手で楽々】では、ファスナーの開具(ひらきぐ=ファスナーの一番下にある部品で、この組み合わせを外せばファスナーが左右に離せる)にマグネットを取り付ける仕組みで、左右の開具を近付けるだけで片手でも組み合わせられるYKKの「マグネットファスナー」が紹介されています。
確かに、普段私達がお世話になっている便利なファスナー(この場合は、スライダーを一番下まで下せば、ファスナーのテープを左右に離すことができる「開きファスナー」のこと)も、開具を組み合わせる作業には面倒、ストレスがある事は否めません。そして、そのストレスを避けて通れないものとして(無意識に)甘受してしまえば、何も進歩、イノベーションは起きない訳です。
そこで、改めて、「開きファスナー」の『当たり前』を整理してみると――
▶「開きファスナー」の『当たり前』
「開きファスナー」は・・・・・・
① テープ部分があって、
② 主にポリエステルで出来ており、
③ 多少の力では開いたりせず、
④ 開具を組み合わせる作業が必要である。
テープ・ポリエステル・簡単に開かない・開具を組み合わせる作業がある……どこから見ても『当たり前』のデザインで、これ以上ブラッシュアップのしようのない到達点のようにも見えます。
しかし、ここで一歩踏みとどまって、そこに秘められたインサイトを探ってみると――
▶『当たり前』に秘められたインサイト
① テープがあると⇨その分衣服が重くなる。
⇨柔らかい風合が損なわれる。
⇨ファスナーと布地の一体感がない。
⇨デザインがすっきりしない。
② ポリエステルだと⇨地球温暖化の原因となる。
③ 解放機能がないと⇨小さな子供が遊具などに衣服をひっかけた時の
安全性は……
④ 開具を組み合わせる作業⇨面倒!
記事でも紹介されているように、YKKの凄い所は、これらすべてのインサイト、『当たり前』の陰に埋もれていた課題に応える高機能商品をしっかり開発している事です――
▶インサイトに応えるプロダクト
① テープ⇨「エアリーストリング」・・・テープ部分がなく、専用のミシン
で生地に直接縫製できる。
② ポリエステル⇨「グリーンライズ」・・・化石燃料由来のポリエステルを
30%植物由来のものへと置き換え。
③ 簡単に開かない⇨「クイックフリー」・・・一定の荷重がかかると
スライダーが外れることで、スライダーを
下げなくてもファスナーが開く。
④ 開具を組み合わせる作業⇨「マグネットファスナー」
『当たり前』を否定し、疑ってかかり、素直にそこに秘められたインサイトを追求することで、今までにない画期的なプロダクトが生まれる、イノベーションが起きる、この記事の事例はまさにその好例と言えます。
『当たり前』を否定することは、企業にとって、コモディティ化を回避するための第一歩なのかも知れません。
《当ページにご来訪いただき、ありがとうございました!》
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