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社会課題の解決には『ナッジ』も必要か

 日経電子版の記事【レジ袋辞退、行動経済学で促す 経産省などのコンビニで】は、ごく短い記事ですが、スーパーなどのレジ袋削減問題を、『ナッジ(=人の判断・選択を望ましい方向に後押しする心理的な仕掛け)』によって改善しようという試みがリポートされています。

  


 記事で紹介されている『ナッジ』は、顧客がレジ袋の要・不要を提示するカードで、レジ袋が必要な顧客が提示する方のカードに海岸に漂着したごみの写真を大きく載せた、というものです。――確かに、そのようなカードを提示する事には心理的なブレーキがかかりそうです。



 そもそも、レジ袋削減問題を解決するにはどのような手法があるのでしょうか?

▶レジ袋削減問題を解決するには?

(強制力)
  強 ・・・・・・レジ袋の全廃
  ⇩
  ⇩ ・・・・・・レジ袋の有料化
  ⇩
  ⇩ ・・・・・・ナッジを活用した要・不要カードの導入
  ⇩
  ⇩ ・・・・・・通常の(絵柄等で差を付けない)要・不要カードの導入
  ⇩
  弱 ・・・・・・POP等での案内、など

 


 こうしてみると、強制力の強弱には一長一短がありそうです――

▶強制力と一長一短

(1)強制力が強いケース
  ①長所・・・レジ袋削減の確実性が増す。
     ・・・ESGへの取り組みをアピールできる。
     ・・・環境意識の強い顧客の共感。
  ②短所・・・意に反した反発を招いてしまう。
     ・・・マイバッグを忘れてきたなど、本当にレジ袋が必要な時
       困ってしまう。
     ・・・導入する手法の足並みを揃えないと、店舗によって、会社
       によって差別化の要因になる。
     ・・・顧客の本心からの環境活動ではなく、強制になってしまう。

(2)強制力が弱いケース
  ①長所・・・いたずらに反発を招くことはない。
     ・・・本当にレジ袋が必要な時に助かる。
     ・・・自分で選べる納得感がある。
     ・・・環境活動への取り組みを自分で考えて実行できる。
  ②短所・・・レジ袋削減の確実性が低減する。
     ・・・ESGへの取り組みが弱いと思われる。
     ・・・環境意識の強い顧客に敬遠されてしまう。



 ナッジを活用した手法には、あまりに露骨だと反発を招く可能性もありそうですが、顧客本人の意思を尊重しながら確実性を増すことが出来る強制力の強いケースと弱いケースの良いとこ取りをしたような卓越したものを感じます。

 そして、何よりも大きいのは、海岸に漂着したごみなどのイメージによって、環境問題を考える、日々の暮らしの中で自分にできる事を考えるきっかけを与えてくれることではないでしょうか。



 環境問題への取り組みをうわべだけのお題目で終わらせずに、その本気度・確実性を継続的に向上させることの重要性は、例えば日経電子版の記事【世界の省エネ息切れ 効率改善率、3年連続で低下】にあるように「(記事より)国際エネルギー機関(IEA)によると、2018年のエネルギー効率の改善率は前年比1.2%にとどまった。改善率は3年連続で低下し、10年以降で最も小さい」という事からも明らかです。社会課題の解決には『ナッジ』のような手法も必要だと考えられます。

(付記:この記事については、下記の拙稿でも考察しています。)



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