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一筋縄では行かない利便性の確立~ファッション通販のサイズ、どうする?~

 日経電子版の記事【ゾゾスーツ、量れなかった女心 失敗の深層明らかに】は、改めて、一つのサービスをデザインするにあたって、その利便性を確立することがいかに難しい事か考えさせてくれます。



 例えば、記事でリポートされるような、ファッション通販におけるサイズ問題などは、サイズが良く分からないが故に購入をためらったり、実際に購入した服のサイズ感が思っていたのと違ったりと、ファッション通販における最大の課題の一つであることは間違いありません。逆に言うと、この課題を解決できるようなサービスがデザイン出来たら、それは、きわめて強力な差別化となり、その通販サイトの優位性へと繋がります。

 サイズ計測に関して利便性を確立することは、ファッション通販に係わる企業にとって非常に重要な課題であり、取り組むべき課題でもある訳ですが、今回の事例から、そこには大きな落とし穴もあることが浮き彫りとなってきます――ユーザーがサイズ計測のサービスに求めるもの、要求のレベルは、想像以上に高いレベルである、という事です――。

 それは、きわめて簡単にストレスレスに計測出来て、しかも、きわめて信頼性が高くなければならない、という事だと考えられます。ユーザーは、サイズに関して高い信頼性を要求しつつ、かといって、少しでも面倒と考えるプロセスは受け入れてくれないのです。つまり、この相反する要求、『簡便性』と『信頼性』の両方を高いレベルで満足させることの出来るサービスでなければ、失敗する可能性が高いという事です。

▶『簡便性』の要求

 ① サッと出来る。
 ② 面倒臭くない。
 ③ 手っ取り早い。
 ④ 手軽である。
 ⑤ 時間がかからない。
 ⑥ 労力がかからない。など

▶『利便性』=『簡便性』+『信頼性』



 このようなサービスにおける『利便性』、『簡便性』と『信頼性』を兼ね備えたものについては、日経電子版の別の記事【メルカリ、AIで出品を極限まで簡単に 技術戦略説明】で、「売ることを空気にする」というとても印象的な表現が使われています。メルカリが、ユーザーの出品手続きの面倒を省いて極限まで簡単にしようという施策について、「売ることを空気にする」と表現したもので、サービスにおける『利便性』というものを極めて的確に言い表しているのではないでしょうか。

  (追記:この件については、下記の拙稿でも考察しています。)



 では、実際にファッション通販におけるサイズ計測問題をどのようにして「測ることを空気に」すればいいのか、もしかしたら、その難易度からして、この件に関しては『後発優位性』があるかも知れません。

 そして、もう一つ確かな事は、ことサイズ問題に関する限り、色合いとか質感の事なども考えると、「実際に着て見る」以上の解決策はない、という事です。となると、「ネットで購入して店舗で受け取る」サービス、『BOPIS(ボピス)』(「Buy Online Pick-up In Store」の頭文字を取ったもの)には大きなポテンシャルがありそうです。

 ファッション通販におけるサイズ問題は、ある程度の精度のサイズ計測システムで満足するユーザーと、『BOPIS(ボピス)』を活用するユーザーへと二極分化していくのかも知れません。



(追記:『BOPIS(ボピス)』については、下記でも考察しています。)


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