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『天使の翼』第12章~吟遊詩人デイテの冒険~

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サンス大公国の秘密警察機関SSIPのデビルハンター捜査に巻き込まれたデイテ、シャルル、ローラの一行は、指揮官クラレンス少佐の計らいでハイアンコーナまでパトロールエアカーに同乗させ…
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#エアカー

『天使の翼』第12章(81)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

『天使の翼』第12章(81)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 ……すべては、アドリブだ!
 わたしは、右足をサッと上げて、エリザの首をまたぎ、彼女の左側にジャンプするように降り立った――SSIPのコートを翻しながら、長い(?)足を見せつけるように――
 やおら制帽を脱ぎ、住民の輪の中に投げ入れた。
 住人は、嫌なものが飛んできたとばかりサッと避け、誰も受け取ろうとしない。ぽっかり空いた空間に、制帽は虚しく転がった。
 次いで、コートを脱ぐ――カッコよく(?

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『天使の翼』第12章(9)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

『天使の翼』第12章(9)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 最後の瞬間、わたしは、湖面に向かってダイブした。泳いで岩の陰に入る。岩と岩の間から空を窺った。
 その時にはもう、空飛ぶ物体の発する不吉な音は相当大きくなっていた……見られなかったろうか……わたしは、不安と恐怖に小刻みに震えている自分に気付く……
 早くどこかへ行ってくれ、というわたしの願いもむなしく、未だ姿の見えない物体は……恐ろしく巨大な何かは、わたしが息をひそめる岩場のほとんど直上で停止し

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『天使の翼』第12章(6)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

『天使の翼』第12章(6)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 他に人工物、人影は見当たらない。空を見渡す。何も飛んでない……
 わたしは、もうしばらく待ってから、矢も楯もたまらず、エアカーに向かって走り出していた。わたしは、狭まった視界の中で、全身、自分自身の荒い息遣いと地面を蹴る靴音に包まれた。
 わたしは、どうかしていた。死を連想させる不安がパニックを起こしたのか……。わたしがシャルルに助けられたのだとしたら、あの沈みかけたエアカーにシャルルが乗ってる

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『天使の翼』第12章(2)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

『天使の翼』第12章(2)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 わたしが最初に考えたのは、近くに誰かいないかということ――敵であるSSIP,シャルル、ローラ……そしてデビル・ハンター……
 わたしのいる低木の茂み――半径3標準メートル程のごく小さいもの――は、砂地の窪地にあった。窪地のふちは、風化した砂岩で……つまり、わたしは、あそこまで這い出していかなくては、周囲を観察することはできない。少なくとも今見える範囲には誰もいないし、倒れてもいない……エアカーの

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