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本の話

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#本

『ららほら』震災の真実を語る

『ららほら』震災の真実を語る

自然への恐怖や怒り。
悲しみを表へ出すことへの狼狽、怖さ。
ある母親が書く、ひらがなしかまだ読めなかった娘宛の手紙は、今年はどれくらい漢字を混ぜればいいのだろうという、二重の年月を生きる悲しみ。

『寄り添うという生易しい言葉では回収しきれない言葉がそこには明らかに存在する。』

いつ、どこが被災地になるかわからないようなこの島で、どんな言葉をもって書いていけばいいのだろう。

ムーンプランナーと

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『顔に魅せられた人生 特殊メイクから現代アートへ』

『顔に魅せられた人生 特殊メイクから現代アートへ』

あ、アカデミー賞受賞されたメイクアップアーティストの本だ、と思わず手に取った。

サブタイトルが『特殊メイクから現代アートへ』。
現代アート?
まだ記憶に新しいアカデミー賞受賞を引っさげて、ハリウッドでバリバリにメイクを担当しているのだとわたしは思い込んでいた。

読むと、賞は苦悩と挑戦の繰り返しを重ねた辻さんの人生の中で、偉大で輝ける「通過点」であることがわかる。ゴールでは無いし、辻さん自身が

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『浮浪児1945-戦争が生んだ子供たち』

『浮浪児1945-戦争が生んだ子供たち』

始まりは東京大空襲だった。家族とはぐれ、生き残った孤児たちは、焼け残った上野駅に集まる。
地方都市に疎開していてひとりぼっちになってしまった孤児も同じくだ。

この悲劇は、本の中のたった30ページにも満たないできごとで、戦争が終われば食糧難、子どもたちへの差別、上野の浄化作戦後の施設での暴力や食糧不足とさらなる困難が続く。その中で子どもたちを救おうと必死の大人たちも出てくるのだが、その苦労も相当だ

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わたしの遅すぎた出会い、スタージョン

わたしの遅すぎた出会い、スタージョン

物事を始めるのに遅いなんてない。
とは言うものの、スタージョンの
作品にはもっと早くに出会いたかった。

早川書房
異色短編作家集3 
『一角獣・多角獣』
シオドア・スタージョン
小笠原豊樹/訳

ロックなのかR&Bなのか
パンクなのかジャズなのか
ジャンルなんてレコードショップが
どう陳列したいかを決めるためにあるもの。

スタージョンの作品が推理小説なのか
SFなのかファンタジーなのか
それぞ

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お初に読みます『おばちゃんたちのいるところ』

お初に読みます『おばちゃんたちのいるところ』

図書館で本を借りるときは
読んだことのある作家×和書 & 翻訳物
読んだことのない作家×和書 & 翻訳物
で選ぶようにしている。

今回の出会いは
おばちゃんたちのいるところ - Where the Wild Ladies Are / 松田 青子

読み始めはとても軽い。
ちょっと軽すぎたかな?とためらうくらい。
失恋後の女性が脱毛サロンで
わたしはもっとしあわせになる、と
自己暗示をかける話か

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