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新元号発表後の空気感がいろいろと気持ち悪いなって思った話

新元号「令和」の発表から2日が経つ。

私は、平成生まれなので「平成」が発表された瞬間のことは知らない。改元は初めての経験だ。だが「令和」の発表後に起こったことや、様々な記事で明らかになったことを見ている中で、とても気持ち悪さを感じた。
所詮、個人の感想ではあるのだが、今回はさまざまな記事を読み解きながら「気持ち悪い」点をまとめておきたい。

1.「所信表明演説」のような首相談話

 同時に、急速な少子高齢化が進み、世界がものすごいスピードで変化をしていく中で、変わるべきは変わっていかなければなりません。平成の30年間ほど、改革が叫ばれた時代はなかったと思います。政治改革、行政改革、規制改革。抵抗勢力という言葉もありましたが、平成の時代、様々な改革がしばしば大きな議論を沸き起こしました。他方、現在の若い世代、現役世代はそうした平成の時代を経て、変わること、改革することをもっと柔軟に前向きに捉えていると思います。ちょうど本日から働き方改革が本格的にスタートします。70年ぶりの労働基準法の大改革です。かつては何年もかけてやっと実現するレベルの改革が、近年は国民的な理解の下、着実に行われるようになってきたという印象を持っています。
 そうした中で、次の世代、次代を担う若者たちが、それぞれの夢や希望に向かって頑張っていける社会、一億総活躍社会をつくり上げることができれば、日本の未来は明るいと、そう確信しています。
 新しい元号の下、一人一人の日本人が明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる。そういう時代を国民の皆様と共に築き上げていきたいと思います。

中身として気になる点はいくつもあるが、そもそもこれが「改元」の談話であることに違和感を覚える。しかも、選挙と関係のない時期であればまだしも、現在は統一地方選挙の真っ最中である。「改元」談話のはずが、首相の功績アピールになっている。談話をすることに対しても疑問はあるが、その内容が「政策広報」になっているのは、いかがなものだろうか。

2.突然高まる安倍政権の支持率

共同通信社が1、2両日実施した全国緊急電話世論調査によると、政府が「平成」に代わる新元号として公表した「令和(れいわ)」について73.7%が「好感が持てる」と回答した。「好感が持てない」は15.7%だった。普段の生活や仕事で主に使いたいのは新元号か西暦かを尋ねたところ、両方が45.1%で最多。西暦34.0%、新元号18.8%の順だった。内閣支持率は52.8%で3月の前回調査比9.5ポイントの大幅増。不支持は8.5ポイント減の32.4%となった。
新元号公表を巡る高評価が内閣支持率の押し上げに影響した可能性がある

私も、新元号そのものは肯定的に評価しているし、7割の人が好感を持っていることに大きな違和感はない。しかし、政権の支持率が10ポイント近く高まるのはなぜなのか。まったく理解できない。「新元号公表を巡る高評価が内閣支持率の押し上げに影響した可能性がある」というのが本当だったら非常に残念なことである。「日本国民って愚かだし、チョロいね」と言われても仕方がないレベル。だが、3月の国会審議をみていて高まるとは到底思えなかった。私も、新元号に一定の効果があったと推測している。

例えば、認知的不協和理論に基づけば、「令和」に好印象を持ったから、それを公表した安倍政権に対する評価も高まった可能性がある。

ただ、繰り返しになるが、統一地方選挙の真っ最中である。改元が「広報戦略」化してしまっている状況が許されるとは思えない。

3.「号外」をめぐる混乱

語るのもバカバカしい、なんだこれというニュースだった。渋谷でのハロウィンのバカ騒ぎが問題になった時には、好き勝手言っていた人たちが、ほとんど静観しているのもまた不思議である。2020年の東京オリンピックでも、問題とされていたことが無かったことになる、こうした「空気感」が醸成されるんだろうなと思うと非常に恐ろしい。

4.英訳がかっこいい!?

「order」の意味ではなかったはずなのに、「かっこいい」と話題になったという、意味の分からないニュース。エイプリルフールのネタかと思ったレベルである。ちなみに産経新聞の記事によれば、英訳に関する外務省の公式見解は「beautiful harmony」とのことである。美しいハーモニー。音楽かよ。

5.安倍首相が一人で決めたの?

記事中には、こんなことが書いてあった。

さらに6つの原案は、一枚の紙に典拠とともに五十音順に並べた形で懇談会の有識者などに示され、多くから「令和」を推す意見に加え、出典を日本の古典にするよう求める意見が出されたということです。
これを受けて、全閣僚会議では、杉田官房副長官が懇談会では「令和」に支持が集まったことを説明したあと、複数の閣僚が意見を述べましたが意見集約は行われず、最終的に安倍総理大臣に一任する形で「令和」が新元号に決まりました。

多くって何人なのだろう? 有識者って何の有識者だったのだろう?

そして、それ以上に、なぜ安倍総理大臣「だけ」に元号の決定権があるのだろうか...? 少なくとも私は知らなかった。会議で決めると思っていたのだが......これでは個人で決めているではないか。

なお、時事通信の記事でも選定プロセスに対して疑義が示されている。ハフィントンポストの記事には、「有識者懇談会や全閣僚会議を経て決定する」と書いてあり、首相に一任されるとは書いていない。そもそも、首相が一人で決めることはいいことなのか。権力が暴走している印象を受ける。

6.公表を差し控えるとは?

「差し控える」とはなんだったのか。たった1日ですべて出てきたが。「近日中に公表する」とでもしておいたほうが良かったのではないだろうか。こんな情報ダダ洩れの国に、機密情報なんて渡してもらえないだろうなぁ。

7.新元号を事前に知っていた人がいる?

リテラは政権に対して批判的なネットメディアであり、この記事もかなり攻撃的な論調だなとは思ったが。中身はなかなか衝撃的である。こういうことはしっかりと検証しておく必要がある。まぁ、安倍政権ならこうしたこともあり得そうに思えてしまうのが、非常にもどかしくなる記事でもあった。

おわりに.もっとも「気持ち悪い」と思ったもの

はっきりと言えば、「新元号発表」をめぐる様々な問題点について批判をする人があまりいない空気感がもっとも「気持ち悪い」と感じている。

あと1か月で「令和時代」は否応なしにやってくる。令和時代の黎明期を作るのは、新元号発表でお祭り騒ぎをして、号外を手に入れるために集まって大混乱を引き起こし、目の前にある異常性に対する批判もほとんど行わない「平成人」なのである。そうした自覚がどこまであるのだろうか。

ジャーナリストの佐々木俊尚さんのご指摘は、まったくその通りだと思う。こうした「改元のリセット感」は大切にしていきたいと思う。しかし、「平成人」が突如として「令和人」に進化するわけではない。平成の時代に「おかしくなった」ものに対しては、批判的かつ徹底的に検証しなければならない。今回の改元をめぐっては、おかしい点が本稿で指摘したようにたくさんある。「令和」がいい元号であるかどうかと、その裏側の検証はまったく別物であり、適切に検証される必要があるのは当然である。

何より、お祭り騒ぎに便乗して異常性やその検証を無視しているメディアや国民が「新たないい時代」を語っているのが、見ていて非常に気持ち悪かった。「令和」さんを探すことよりも報道すべきことがたくさんある。「令和時代」をよい時代に“しなければならない”のは「平成人」であることを改めて指摘しておく。

2019年4月1日は、改元だけでなく、改正入管法や、働き方改革関連法といった重要な法律が施行された日でもあった。労働者の人権をめぐる問題は山積している。元号のすばらしさに歓喜する前に目を向けるべき問題は私たちのすぐ目の前にあるのだ。

改元が「リセット感」をもたらすだけでなく、現実から目を逸らす口実となってしまったことには、残念としか言いようがない。


勢いで書いた雑文を最後までお読みくださった方、本当にありがとうございました。


以下はおまけ。

おまけ.海外からの目

こういった「外からの目」も参考にできると良いなぁと強く思います。

参考にした番組

今回も「荻上チキ・Session-22」でのご意見を参考にさせていただきました。以下にリンクを貼っておきます。


2019/04/05 追記

非常に共感できる記事を見つけたので、リンクを残しておきたい。


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