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BLUE GIANTと地元仙台でJazzに向き合った私、そしてNewYorkに飛びました

私の故郷が舞台で、私が小中学生の頃青春を費やしたJazzの物語。
上原ひろみさんをはじめとする豪華プレイヤーが手がける音楽。とあっては観なければならぬということで公開から少し経ちましたがようやく行けました。

ネタバレ含みますのでまだ観てない方は観てからぜひ読んでくださいね!

ちなみに絶対観た方が良い!これだけは言えます。
そして一人で観るのをおすすめ!あーだこーだ語るより余韻に浸りたい映画です。できたら音響のよい映画館で。(書き終わった時点では上映が終わってしまいました。2023年夏。)

それではレビューへ。


実はマンガはそこまで受け入れられなかった

ちょうど仙台編まで読んでから突撃しました。
そしたら仙台編終わったところから映画始まって、ひとりでガッツポーズ。

何故マンガがあまり受け入れられなかったか。(3巻まで読んだ感想です)
仙台の若者って実はそんなに訛ってないんですよ。Swing Girlsとかもそうなんですが、東北訛りってなんであんなにわざとらしいのかな。エセ関西弁とかもそう聞こえてるのかな(恥)仙台のあの広瀬川付近を拠点とする若者はあんなに訛ってない。わざとらしい方言があるとちょっと冷めちゃうタイプです。

そして、主人公のダイがあまりにも無鉄砲、無神経、無計画、世間知らずに見えるような描き方でした。2013年に書いていてスマホもある時代には少し無茶があったかな…
上達するための思案がなさすぎるというか。同じバンド組むとしたら相当イライラしそうなタイプに見えて、彼に振り回される人たちも沢山いて。仙台編は自分の故郷ながらそこまで田舎じゃないんだよなぁ…と地元ながら思ってしまったりも。
あとリアルなことを言うと仙台は無料で楽器吹けるスペースもあるし、SAXは大部分が金属と言ってもやっぱり傷んでしまうし…と現実的なことを沢山考えてしまいました。

エピソードを挙げればきりがないけど、ただただ世界一になるといって具体的なことを考えないような人間性が苦手でした(笑)漫画版は正直仙台編はそんな印象しかなかったです。なので、映画はダイがどのように描かれるのかを楽しみにしていました。

仙台のリアルなお店が沢山出てくるのもニヤニヤしながら読みながら、地元民的にはなぜここ書かないんだろうみたいなこともめちゃめちゃ多く。

映画のダイはまっすぐな人間だった

そして、映画に現れるダイ。別人かと思うくらいに良いヤツになってました(笑)まだまだ無計画すぎるとは思ったけど、受け入れられた。抽象的すぎるよ、世界一のジャズプレイヤーって、どうなったら世界一と言えるんだよと。

私は高校生のときに「プレイヤー」としての未来を諦めた。というより辞めた。
やっていた楽器が「エレクトーン」じゃなかったら。「コントラバス」じゃなかったら。「生楽器かつメロディを担当する楽器だったら。」「とんでもない実力を持っていて、周りに自分より上手い人がいなかったら。」

タラレバですが、良かったと思っています。
作り手の方が自分に合っていたなと思っているし、どんな形でも仕事にしたかった。プレイヤーとしての人生はあまりにも茨の道。さらにジャンルはJAZZ。本場はどうかわからないけど、日本ではほとんどの人が馴染みがない。需要があまりないから仕事になり難い
そんなことダイは考えないんだなあ。

JAZZに向き合った小中学時代

杜の都仙台には定禅寺JAZZフェスティバルがある。
物心ついた時から少しJAZZが身近だったけど、定禅寺JAZZフェスはジャンル問わないのでとにかくあの欅が立ち並ぶ開放的な雰囲気でみんなが楽しそうに音楽やってるのが子どもながらにいいなぁと思っていた。

なぜ、自分はジャンルを選ぶ時JAZZを選んだのだろうと考えると、自分の意志ではなかったように思う。コンクールのときいくつか曲を薦められて、出会ったのがデュークエリントンやソニーロリンズ、ジョンコルトレーンやデイヴグルーシン。小5くらいに聴き始めて弾き始めた。そのときはカッコイイという感想は持ちながらも地位は芸術音楽より下でしょ、と。クラシック至上主義。
今考えるとまんまと教育に乗せられてたと思う。
出会おうと思わなければ出会わないジャンル。ムーディなお店で、カフェで、BGMとして流れるのを聴く、雰囲気のために使われるジャンル、それが一般的なJAZZの印象。

ヤマハはジュニアオリジナルコンサートがあるので毎年一曲作ることになる。作る曲は現代曲に憧れ続けた結果管弦楽の曲ばかり書いていた。本当はフランス近代が好きでストリングスが好き。スコアを読むのも好き。

JAZZって楽譜がほとんどないので耳コピで楽譜を起こすしかない。アドリブも二度と再現できない。コード進行も複雑で、一定のテンポの中で適した音を選び取っていく作業なので物凄く頭を使う。そして一番難しいなと思うのはアクセント。裏拍アクセントなので頭拍文化の日本人には特に難しい。

全然違う魅力で、どちらが上で下でってことはなく。ただ文化的にクラシックへの対抗や自由を求めたジャンルなので対立する関係にあるともいえるけれど、比較的歴史が浅く大衆音楽に寄り添ったJAZZはクラシックより軽視されやすい。音楽教育のなかでもクラシックに触れることは多くてもJAZZに触れることは少なかったように思う。

私はあまのじゃくなので、特に中学くらいになるとJAZZをやっている自分が気に入ってきた。何よりクラシックを専攻している友達より即興演奏が得意になり、楽譜がなくとも弾けるということが強みとなった。

JAZZは生演奏がすべて

映画でダイも話していたが、JAZZはそのときの感情が音に現れるので毎日違う。楽譜があるものと異なり、本当に旋律まで違う。再現性がないことが嫌になった時期もあったが(録音録画しているときは除く)、その即興性が一番生演奏でのライブに適していると今では思う。これだけYouTubeで音楽が溢れる時代だ。簡単に音楽が聴けるようになりすぎてその時その場で再現できないことの尊さが現代において余計に輝く。

映画を通して初めてJAZZの演奏を聴いた人がそのすばらしさに気づいてくれたら嬉しいなと思う。

俳優が声優を演じることの自然さ

今回メインの主人公3人は今をときめく俳優3人が声を担当。これがめちゃくちゃよかった。
洋画吹き替えをなんでもない下手な俳優がやってガッカリ、なんてことはよくあるんだけど
ジブリとか今回みたいに目的を持って俳優さんが声担当をするのはしっくりくる。
等身大の彼らのキャラがすっと入ってきて、無鉄砲なダイの山田さんは少しマンガのイメージより抑えられて受け入れられたし、雪折はイメージどおり。間宮さんがすごくうまい。岡山さんの玉田も本当に役どころもピッタリで、だからと言って声に特徴もありすぎないので俳優の顔が浮かばずに声だけがキャラにハマって発声されてる感じ。もし実写化してもこの3人はばっちりハマりそう!!!(実演という特性上なかなか難しそうだけど)

演奏者陣の「音で演じる姿」

あまりレビュー観てても書いていないのが「音の吹き替え」をした演奏者たちの演じ方。
音がすごいことだけは普段JAZZ聴かない人でもわかると思うけど、上原さん、馬場さん、石若さんという日本JAZZ界の若手トップを抜擢して本人らしさではなくあくまで役らしさに徹した演奏で演じていたこと。
これが本当にすごかった〜〜〜!!!!
ピアノの上原さんは物心ついたときから聴いてきた存在なので、彼女のオリジナルもかなり聴いているけど、今回書き下ろした楽曲はしっかり雪折だったらどんな曲書くかを考えながら作ってあるなと思った。普段だったら弾き方もさらにパワーがあるもの(雪折が覚醒した時の弾き方)で、物語前半は本当に流れるようにただ上手い人としての弾き方をしていた。サントラも単体で聴いたときはしっくり来てなかったんだけどね。

そしてNYで「本場」の音を聴いてきました

と、ここまで書いて私は諸事情でニューヨークへ飛びました。5月の4週目から10日ほど滞在したのですが、中盤あたりの日程で月曜日にビッグバンドオーケストラを毎週上演している「Village Vanguard」へ。かの有名なジャズの大御所がここで演奏した名盤がたくさんあります。

Vlllage Vanguard
極上の時間でした。

上演開始の15分前くらいにワラワラとおじさん達が楽器を持って集まってきて(一人だけ30代くらいの女性の方もいました。トロンボーン!)、音出しもそこそこに一発目に出した音!
ハ〜〜〜なるほど、これが本場の音かと。
入りは揃ってないし、音色を各楽器で合わせるわけでもない。
わざと整っていないのではなく各々が思いのままに熟年の技巧で出している音、だからまとまりはないんだけど最終的に客席に届く音はしっかりと「Village Vanguard Jazz Orchestra」の音圧を感じさせる群としての音になっている。だけど、日本でこれが再現できるわけはないなと思った。もう生まれ持っての環境の違い、学んできた音楽性の違いに圧倒されて、これはここで生まれ育った者の音楽であるとも思った。おっちゃん達のアドリブ、アホみたいにかっこよかったです。ほんでBassのお兄さんは信じられないほど正確でした。

色々比べてしまうところもあったけど、私は日本人のPlayするJAZZも整っていて大好きだ。
本場があって、日本のJAZZもある、それでいいかなと初めて本場の音を感じて思った。

ダイのその後のことはマンガでも結局読んでいないし、この映画を観た当時もっともっと爆発的に大ヒットして欲しかったと思ったけどまだまだJazzを含むインストへの日本人の造形は深くない。

上原ひろみバンドが続投してくれることを願いつつ(おそらく今日本が出来る最高のバンドが実演してくれた)
続編を待ちたいな。

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