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街が生きている

シェアハウスからの引っ越しが終わり、新しい生活が始まった。

会社までは歩いて15分。今までとは違う景色を歩いていく。僕の住んでいるのは、商店街に程近い場所だ。

台風が過ぎて、久しぶりに見る清々しい青空の下を歩く。時間は9時過ぎ。出勤は10時からだから、比較的、朝はゆっくりできるからいい。

家を出てすぐ商店街の入口にさしかかる。
同じように朝がゆっくりな人たちが僕の前を歩いている。朝のラッシュも関係ないから、心なしか足取りも軽そうだ。

この商店街は道の両脇に、ありとあらゆるお店が軒を連ねている。
その風景を見るのが好きだ。

花屋さんは開店と配達の準備に大慌て。道端では、井戸端会議の真っ只中のお婆ちゃんたち。今日の夕食をもう考えてるのかと思うくらい、真剣な眼差しで八百屋に並べられた彩り豊かな野菜を吟味しているおばちゃん。

「そうだ!今日は公園を通って行こう」

僕は会社に着くまで、いくつかのルートを持っている。

商店街を脇にそれた路地裏に保育園がある。散歩前の子どもたちが楽しそうに駆け回っている姿を横目に歩みを進める。
そこには、木々に囲まれた公園があって、滑り台もあるから、休日は子どもたちに大人気だ。

公園を抜けてすぐのところには自家焙煎の珈琲屋さんがあって、いつも朝から活気で溢れている。
今日は、一杯テイクアウトしよう。
本日のコーヒー、350円なり。酸味の強い味わいで目が覚める。

コーヒーを片手に静かな路地裏へ。軒先を掃除する人、洗濯物を干す人。
みんな、いつもと変わらない日常を生きている。

ふと見上げると、そこにはたくさんの実をつけた大きな柿の木が。
緑の実がほとんどのなかに、ほんのりと黄色を帯びた実があった。もう少し時間が経つと、橙色のそれが軒先を彩るんだろな……と考えていた。

気がつくと、会社のある大通りへ。けたたましいクラクションとサイレンの音はいつも通りで、道行く人もせかせかしている。

会社の入口に着いた。
「今日は、朝から清々しいな~」とひとつ伸びをし、仕事に向かっていく。

商店街は僕の地元でもそうだが、シャッターが降りているところが多い。
でも、この街の商店街は違う。

朝は、人びとの暮らしが動き出す様子を間近に感じとれる。夜になれば、商店街の両脇に吊るされた電球に明かりが灯り、景色が浮かび上がったかのような趣がある。
お洒落なレストランに地元の人たちが通う憩いの場と化した小料理屋で、自分の時間を思うがままに楽しんでいる。

朝と夜で違った顔を見せてくれるこの商店街が、僕は好きだ。朝も夜も幸せな気持ちになれる。

「そんな場所で暮らす僕の生活は、なかなか充実してると思わないか?」

そんなことを自問自答しながら、僕は新しい暮らしを始めている。

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