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映画『イン・ザ・ハイツ』とコロナ禍の夏休み

先日、映画『イン・ザ・ハイツ』を見に行った。

TBSラジオ「アフター6ジャンクション」で何度も話題に上がり、絶賛の声を聞くたびに「見なければ!」という思いに駆られ、先週の土曜日に映画館に足を運んだ。

ミュージカル映画は『ラ・ラ・ランド』以来だなぁとワクワクしながら待っていると、明るい音楽(しかもラップ調)とともに物語が始まった。

上手くいかない現実に直面しながらも、「忍耐と信仰」を胸に、遠い祖国に思いを馳せながら力強く生きぬく彼らの姿は、夏休みにもかかわらず思うように過ごせないでいる私に、とてつもない元気を与えてくれた。

特に好きなのは、映画の後半、皆が暑さでグッタリしている場面での歌とダンス。
映画の登場人物たちは言う「現実に嘆くのではなく、こんな今だから旗を掲げ、踊るのだ!」と。

そのシーンを見た時に、「私もコロナになんて負けてやらない!」という熱い想いが私の中に灯った。

うだるような暑さに憔悴するように、コロナ禍の夏休みをただ嘆くのではなく、そんな今だからこそ、ラジオを浴びるほど聞いて、好きなだけ映画を見て、私も彼らのようにカルチャーの旗を掲げ、踊ってやる!

そう強く思うと同時に、そう思えている自分にも驚いた。


コロナ禍になる前の私は、「暇」がとにかく苦手だった。

少しでも空いている時間があればバイトを入れ、忙しく生きることに充実感を覚えていた。しかし、コロナ禍になり、できることや行動に制限がかかると嫌でも「暇」は生まれる。私は何もないという日常をどう扱っていいのかがわからずにいた。

それは去年の4月以降、ラジオを聞くようになってからも変わらなかった。

ラジオを聞くことは楽しい。だけどそれは「暇」の延長線上にあるように感じ、ただジッとラジオを聞くことをどこか許せないでいる自分がいた。

8月になり大学生活最後の夏休みが始まった。
しかし旅行には行けず、友だちと飲みに行くことも帰省することもできず、ただ家にいる時間が多い「暇な休み」を過ごすことになり、「ああ、これは困ったな…」と私はひとり焦っていた。

しかし、映画『イン・ザ・ハイツ』を見てから不思議とその焦りは消えていた。

ずっと、コロナ禍の暇で虚しいだけの夏休みだと思っていた。
だけど見方を変えたら、ラジオを聞きまくり、ラジオで知ったカルチャーに触れまくることができる贅沢で充実した夏休みにも見えてきたのだ。

あれほど「暇」を恐れていた私が、そうやって過ごす自分を肯定できるようになれたことが嬉しかった。


うだるような暑さをただ嘆くだけか、そんな時だからこそ踊るのか。

『イン・ザ・ハイツ』が、そう問いかけている。

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